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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第一章

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第3話 王都に向かう道中

主人公の実力の一部が垣間見えます。

「お兄さん、もう少しで王都に着くよ」

「ありがとうございます」


 スティリアから馬車による移動でも丸二日はかかる距離であったものの、俺は目的地である王都エメラフィールに着こうとしていた。

 数日前まで俺はAランクパーティ『戦鬼の大剣』の一員だったが、メンバーからは戦闘以外の冒険におけるほとんどの雑務を押しつけられ続けて、魔物の討伐や事件の解決への貢献度で報酬を分配する方針の下による薄給や扱いの悪さに堪えかねて自ら脱退した。

 どうやって生活していくかについて悩んでいた時、冒険者ギルドスティリア支部の受付嬢をしているリサさんの進言でエレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊の仕事をやってみようと思い至った。

 しかし、ここに来て唯一にして最大の懸念点を見つけてしまう。


「王都が近くなっているのはいいんだけど……。弓以外の装備が心許ない気がする」


 そう、今の俺が使用している装備品だ。

 『戦鬼の大剣』時代に使っていた上質な片手剣や強化革鎧は抜ける時、ガルドスに譲渡する形であげちゃったため、防具は冒険者になって駆け出しが使うだろう申し訳程度の防御力しかない革鎧、腰に差している小剣も同じく初心者向けの品質でしかない。

 まともな装備品としては『戦鬼の大剣』がBランクに昇格した時、その記念に自腹を切って購入した上等な長弓くらいだ。

 これは軽くも耐久性に優れ、引けばよく飛んでくれるくらいに性能が高く、魔物との激しい戦闘を何度も乗り越えてきたため、愛着がとてもある。

 幸いにも弓矢のストックはそれなりに残っているけど、パッと見るだけだと、かつてはAランクパーティに所属していたと言っても信じてもらえる保証がないくらいに不安な風体だ。

 王都に着いたら買い揃えておこうかな?

そう思案を巡らせ、森林を抜けた瞬間だった。


「ッ!?」


 俺は人や魔物の気配を明後日の方角から感じ取った。


「御者さん!ここで降ります!」

「え?ちょっと?もうすぐ着くけど…—————」

「後は自分で行きますんで!これ代金です!」

「おう、確かに。何なんだ?忙しい客だねぇ」


 俺はビックリしている御者さんを尻目に、馬車から勢いよく飛び降りた。

 そこからは神経を研ぎ澄まし、周囲に気を配りながら森林の中を走っていく中、俺は前方を注視する。


「グルルルル」

「ああ……」

「おい!逃げろ!」

「置いていけないわよ!」

「男性と女性一人ずつか。あの魔物は?」


 目の前に映っているのは軽装に身を包んだ男性と女性であり、襲っている魔物はリスクレベルBのマッドオーガだ。

 マッドオーガは四メートルくらいあろう筋骨隆々の体躯に鋭い牙と強靭な腕力を持ち、かなり凶暴な魔物だ。

 ベテランの冒険者でも苦戦を強いられることも珍しくない魔物だ。

 何にしても、危険な状況であるのは間違いない。


「ガアアアアアア!」

「危ない!」


 マッドオーガの右腕が男性に振り下ろされようとしたその時だった。


「ギィァアアア!」

「え?」

(弓矢が二本?)


 俺は一呼吸の間にマッドオーガの左眼と首筋に目掛けて矢を射貫いており、どちらも正確に命中している。

 激痛のせいでマッドオーガは唸り声を挙げながらその場で動けない状態となった。


「もう一発!」

「ガァアアアア!」

「二人とも。大丈夫か?」

「え?あぁ……」


 俺は女性の間に割って入り、追い打ちの一矢を喉仏に当てた。

 マッドオーガって言うか、オーガやゴブリンなどの人型の魔物は急所の位置が人間と大差ないため、寸分の狂いもなく命中させるならそこを狙うのが定石だ。


「グガァアアアアア!」

「結構タフだな」


 そう呟いた俺は小剣を抜いてマッドオーガに突っ込んでいく。

 マッドオーガは悪あがきと言わんばかりに右腕でパンチを放った。


「遅くて大振りだ」

「ギャァアアアアアア!」


 俺は丸太のように太い腕から放たれたパンチを紙一重で躱し、マッドオーガの懐に飛び込み、矢で刺された事によって傷ができている喉仏へ小剣を突き出す。

 突いた剣はマッドオーガの皮膚を容易く貫き、一瞬で横に薙ぎ払うと、その首は地面に落ち、身体は大の字で倒れるのだった。


「ふう……」

「「……」」

「おい、大丈夫か?」

「あ、ありがとうございます」

「助かりました」

「怪我してるじゃないか。回復アイテムを分けてやるよ」

「そ、そんな。恐れ多いですよ」

「いいからいいから」


 男性の右腕にはマッドオーガから受けたであろう裂傷が刻まれており、俺は手持ちの外傷用ポーションをその箇所にかけ流し、その上で包帯を巻いた。

 これで一安心だなとホッとした時、男性の服が目に飛び込んだ。


「ん?なあ、その服。エレミーテ王国の紋章が書かれているんだけど……」


 二人が着ているのは焦げ茶色を基調にした上品さと身軽さを兼ね備えたような服装であり、左胸部分にはエレミーテ王国を象徴する国章が記されている。

 エレミーテ王国の国章は立派な盾の後ろに二本の槍をベースにした形であるから間違いない。


「は、はい。私たちはエレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊の一員です。あ、自己紹介がまだでしたね。俺はトロンです。彼女はアンリで同期の同僚です」

「初めまして。アンリです。先ほどはありがとうございました」

「いや、礼には及ばないよ」


 緑色の短髪にどこか幼い印象を与える青年がトロンで亜麻色のショートヘアに真面目な印象の女性であるアンリは自己紹介と感謝の言葉を述べた。

 アンリのジョブはレンジャー、トロンのジョブはシーフであり、見た感じ俺よりも少し年下に見えたが、なんと十八歳で今年入った新人さんとの事だ。


「本当に助かりました。それにしても、マッドオーガを一人で倒してしまうなんて強いですね」

「それほどでもないさ。ここで立ち話するのもあれだから、まずはここを離れた方が良い。何があったのかは歩きながら聞いてみようと思う」

「そうですね」


 俺はトロンとアンリを連れて一緒に森林を出ることになり、その流れで王都へと歩を進めていった。

二人は遊軍調査部隊の仕事として王都の外を見回っていたのだが、運悪くマッドオーガと出くわしてしまい、追い詰められたところを俺が見つけて討伐することで助けてもらったという形になったわけだ。

 マッドオーガはダンジョンや人が寄って来ない洞窟に棲みつくケースはあっても、森林の中まで這い出てくるケースはかなり珍しく、先ほど遭遇したのは本当にイレギュラーであり、トロンとアンリにとっては思わぬ災難だったということになる。

 理由はどうであれ、助け出せて何よりだ。

 俺もここまで来た経緯を二人に話した。


「なるほど。リュウトさんは冒険者だったんですね!」

「まあ、いろいろあってパーティを抜けちゃったんだけどな。懇意にしていた知人からエレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊の仕事を紹介されてここまで来たんだ」

「リュウトさんってレンジャーなんですよね?だとすれば、騎士団の数ある部隊の中でも遊軍調査部隊だったらそれが活かせるかもしれませんね」

「やっぱりか?」

「遊軍調査部隊に所属している人たちはレンジャーやシーフの方が多く在籍していますから。私の上司もレンジャーですよ」

「そうか。同じレンジャーとしては興味深いな」

「実力も高くて優秀ですよ」


 なるほど。リサさんが遊軍調査部隊の仕事を勧めた理由が何となくだけど、分かってきた気がする。

 世間話を交えた話をしながら歩いていると、王都まで辿り着いた。


「おお~。やっぱり王都は栄えているな」

「来るのは久しぶりですか?」

「うん。半年ぶりくらいにはなるな」

「いつでも栄えていますよ」


 目の前に飛び込んで来たのは広大な石畳の大通りであり、メインストリートとなっているその両脇には様々な種類の商店や露店が軒を連ねて賑わいを見せ、商人たちの呼び声や買い物を楽しむ人々の笑い声が活気に満ち溢れていることを物語らせる。

 各地にある冒険者ギルドの支部を束ねる本部も王都にあるため、冒険者らしき人物もちらほらと見かける。

 スティリアも十分活気のある街だったが、ハッキリ言って、これまで訪れた街々が小さく思えてきそうなくらいに土地の広さはもちろん、お店や住居の数と大きさが半端ではないのだ。

 当然、エレミーテ王国騎士団だけでなく、行政や司法を含めた政治機関や商会を束ねる経済機関に加え、爵位を授かっている貴族が生活の拠点としている貴族街もあると言う、正に国の中心地だ。

 俺は久々に王都へ来れたことに少なからず高揚しながら城下町を歩いていった。


「リュウトさん。ここがエレミーテ王国騎士団です」


 トロンとアンリに案内される形で俺はエレミーテ王国騎士団の本部として機能している建物へやって来た。

 王城がすぐ近くにあるためか、高位貴族が住まうであろう大きな屋敷にも劣らないほど立派な外観であり、屋根にはエレミーテ王国の国旗を記した旗がバサバサとはためいている。

 中に入ると清潔で広大なロビーがあり、沢山の騎士や職員が忙しなく行き来している。

 『戦鬼の大剣』にいた頃には王国騎士団の騎士の方と合同で依頼をこなした経験はあるものの、中に入ったのは初めてなだけに、どことなく新鮮な気分だ。

 俺はアンリに「紹介状を受付に出せば対応してくれる」と伝えられ、そのまま受付を担当している女性の近くに歩いていった。


「ようこそお越しくださいました」

「どうも。私は遊軍調査部隊の仕事に応募するために参りました。紹介状も用意しております」

「拝見します……。はい、確かに。あちらのソファへお掛けになってお待ちください」

「はい」


 すぐに手続きを済ませてくれるようで、俺は少しの間ソファに座って待つ事になった。

 それから一分後。


「リュウトさん。準備ができたそうですよ。私が案内します」

「え?アンリが?」

「私がやるのには理由がありまして。応接室に着けば分かりますよ」

「……」


 職員ではなくアンリが案内すると言い始めるから何だろうと思いながら付いていった。

 ちなみにトロンは見回りの報告をするために一足先に戻っている。

 

「あの~。これからどうなるのかな?」

「遊軍調査部隊の副隊長とまずは面談してもらいます。それに、是非とも紹介したい気持ちもありますので」

「は、はあ……」


 そう言うアンリの表情はどこか嬉しそうだった。

 少し歩いていると、目的の部屋の前へと案内された。


「副隊長。例の人物をお連れしました」

「通しなさい」

「どうぞ」

「ありがとうございます」


 アンリが扉の向こうから聞こえた遊軍調査部隊の副隊長らしき人物がいる部屋へと入れるために扉を開けてくれた。


「失礼します」


 俺は礼儀正しく挨拶をして入っていった。


「あなたがリュウトさんですね」

「は、はい……」

「よく来てくれましたね。私はエレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊の副隊長を務めているソフィア・ルーテスと申します。この度は遠路はるばるご足労いただき、ありがとうございます」

「初めまして。リュウト・ドルキオスと申します」


 そこにいたのはアンリと同じような亜麻色の髪をしつつも、長髪を編み込みのシニヨンヘアに纏めている凛とした雰囲気を感じさせる女性であり、顔立ちもスタイルもよく整っている。

 カッコイイ女性と思いつつも、気品も感じさせる美しさだ。


「まずは、ウチの隊員を……。妹を救っていただき、誠にありがとうございます」

「いえいえ、そんなことは……。って!え?」


 俺がまさかって感じたようなリアクションを取ると、アンリはソフィアさんの隣に並んだ。


「私も改めて自己紹介しますね。私はエレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊に所属しているアンリ・ルーテスと申します。ソフィア副隊長は私の姉なんですよ」

「え?」


 何とアンリは遊軍調査部隊の副隊長を務めるソフィアさんの実妹であり、それを知った俺はこう思うしかなかった。


 マジかよ?

いかがでしたでしょうか?


少しでも「気になる!」「面白い!」「続きが待ち遠しい」と思われましたら下の☆☆☆☆☆を★★★★★にしていただけると幸いです!


面白いエピソードをご提供できるように努める所存ですので、どうぞよろしくお願いいたします!

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