第29話 【Sideガルドス】膨れ上がる憎悪
怒りや嫉妬に狂うガルドス、一線を越えてしまいます!
「クソッ!何だってんだよ?俺の何が悪いってんだよ?」
エレミーテ王国騎士団と複数の冒険者パーティによる合同調査プロジェクトを終えた夜、俺は一人で城下町の酒場で飲んだくれていたところ、迷惑がった店主に追い返されてしまった。
今回のプロジェクトで失態をしでかした俺たち『戦鬼の大剣』の評判は大きく落としてしまうこととなった。
参加していたSランクパーティ『夜天の宝剣』のリーダーであり、俺も憧れていたアルベルトさんからも「君は利己的過ぎる。一介の冒険者パーティのリーダーの器ではない」と断じられただけでなく、他のAランクパーティや遊軍調査部隊のメンバーからも白い目を向けられた。
それだけじゃない。
「俺はただ、結果を残したかっただけなんだぜ。それなのに……」
今回のプロジェクトに参加した冒険者パーティの成果や働きぶりについては騎士団から冒険者ギルドの本部にも知れ渡っており、当然、詳しい過程も同様だ。
まだ正式に決まってこそいないものの、『戦鬼の大剣』の犯したミスの内容を受け取ったギルドの本部は今回の結果を厳しく受け止めているようであり、審議によっては降格の可能性もあると警告された。
「アイツらも寄ってたかって俺のせいにしやがって!」
『戦鬼の大剣』のメンバーであるアキリラやビーゴルからは責任を追及されてしまい、リリナからは酷く呆れられた。
いつも味方でいてくれたはずのシェリーは静観と、俺を取り巻く状況はとにかく最悪だ。
「クソッ!クソッ!クソッ!」
俺は人目が付きにくい裏路地に入って奥に行くと、苛立ちに任せて地団駄を踏んだ後にすぐ側にある木箱を蹴り壊した。
Sランク冒険者になることを夢に見ながら頑張ってきて、Aランクまで登り詰めたのに、今となってはBランクへ降格の危機に晒されている。
何で、いつから、どうしてこうなってるんだよ?
考えて思い浮かぶのは遊軍調査部隊に鞍替えしたリュウトと新たに『戦鬼の大剣』に加入したシェリーの存在だ。
シェリーは頑張っているから悪くないはずだ。
だったら……こんな現状になったのって……。
俺は一つの結論に辿り着いた。
「全部。リ———」
「『リュウトのせいでこうなった。俺は悪くない』ですよね?ガルドスさん」
「ッ!?」
結論付けた言葉を吐きだそうとした瞬間に現れたのはシェリーだった。
だが、いつもと違う点がある。
「シェリー?何だよ、そんなローブなんか持ってたっけ?」
「うふふふ。事前に用意しておいたんですよ」
全身を覆いそうなサイズの黒色のフード付きのローブ姿と、いつもの彼女の格好とはほど遠い。
まるで隠密行動をしていることを暗に示すようにも見える。
「まずは私から一言ございます。ガルドスさん」
「あん?」
「ここではあれなので、こちらへ」
シェリーは人目を避けるために万全を期したいのか、他に通れる裏道を進んで行き、俺もそれに続く。
そして、今は使われていない廃墟同然の建物に入った。
それから少しの間を置き、意を決するようにシェリーが口を開いた。
「あの時は助けることができなくて、申し訳ございませんでした」
「え?」
「ビーゴルさんとアキリラさんに責められていた時、擁護の一つもできないままでいてしまったことをお詫びしたいのです。本当に申し訳ございません!」
「……」
誠心誠意に謝るシェリーだった。
それを見た俺の酔いも少し醒めた気がした。
「も、もういいって。あんな状況だったから、いろいろと思うところがあったんだろ?俺の方こそ、ダンジョン内でも迷惑を掛けちまって、ごめんな」
「いえ、そんな……」
シェリーまで心が離れていたらって少なくない恐怖を抱いていた俺だったけど、こうして謝ってくれただけでもホッとできた。
「シェリー。さっきのリュウトのどうとか言ってたけど、それって?」
「言葉の通りです。ガルドスさんがこんな状況になってしまったのはリュウトさんがいるからですよ」
「そうだよな。分かってくれるのか?」
「はい。私が仲間になってからガルドスさん、そのリュウトさんと私を比べてはいろいろと言ってたじゃないですか」
「あっ。あ~あ~。そうだったな」
あぁ、シェリーと話していると心が落ち着く。
高揚感が湧きそうになった時、シェリーは意外な言葉を口にする。
「ガルドスさんって……本当はリュウトさんのことが目障りで仕方がないんですよね?」
「え?」
それは俺のリュウトに対する見方についてだった。
「そ、そりゃ、アイツのせいでAランク依頼を安定的にこなせていたのにそれに陰りが出たんだよ。だけど———」
「スティリア支部の冒険者ギルドやこの王都で聞いたお話なんですけど、リュウトさんってかなり評価されているらしいですよ」
「あん?」
俺はシェリーからリュウトが『戦鬼の大剣』を抜ける前からその後、エレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊に入ってからの活躍を聞かされた。
ギルド内ではリュウトを評価している声が多かったこと、その中には俺たちよりも高いランクや知名度を持つ冒険者パーティがリュウトをいかに賞賛しているか、遊軍調査部隊に入った後のリュウトの活躍ぶりまで。
「クソが!やっぱりかよ!何であいつがそんなに?」
「はい。心中お察しします……」
思い返してみれば、リュウトが『戦鬼の大剣』にいた頃からだ。
俺が尊敬していたSランクパーティ『夜天の宝剣』を率いるアルベルトさんたちや他の有名なパーティの連中はある時から俺以上にリュウトを褒め称えるようになった。
リーダーは俺なのに、俺じゃなくて、何であんな奴が認められるのか、理解に苦しんだ時が何度もあった。
気付けば、俺は適当な理由を見つけてはリュウトの分け前を少なくしたり、戦闘以外の雑用や面倒事を押し付けるようになったり、役立つことをしてくれても感謝すらしなくなった。
どうやって追い出してやるかを考えていた時、突然あの野郎が自ら『戦鬼の大剣』を脱退するって言い出した時には胸が空いたような思いを抱いた。
清々するかと思ったけど、今となってはどうだ?
何でこんな目に遭わなければならないんだよ?
リュウトはパーティを抜けても尚、この俺を苛立たせるのかよ?
「そうだ……俺は悪くない。リュウトをパーティに入れたのが……あの野郎がいるから悪いんだ」
「そうです。だから、どのようになさりたいですか?」
シェリーの問いかけに対し、俺は答える。
心の底から恨めしさや憎しみがとめどなく湧き出る黒い感情と共に……。
「許さねえ!俺よりもいい気になって、調子に乗ってるあの野郎に復讐してやりてえ!俺よりも惨めでいてくれねえと、この屈辱が消えることはねえ!」
「……」
リュウトへの怨嗟を吐き出す俺だった。
(そろそろ頃合いね)
「ガルドスさん。そこまで言うのであれば、リュウトさん……いえ。リュウト・ドルキオスに辛酸を舐めさせたいのであれば、私が手を貸しますよ」
「何?そんなことができるのか?」
「はい。できますよ。私ならば……」
「うお?」
シェリーは不意に至近距離まで詰めたかと思えば、俺の唇にそっと口付けした。
瞬間、抗い難い多幸感と同時に氷のように冷たくてどす黒い怖気のような何かが俺を包み込んでいき、次第に意識も朦朧としていく。
「シェ、リー?」
「力を貸すわよ。ガルドス・ハリブザー。あなたのために。そして、私のためにね」
「うぅ……あぁ……」
そう言うシェリーは懐から掌に収まりそうなサイズの赤黒い物体を取り出し、それを俺に近づける。
そして俺は———。
「ま……さ……?」
今まで見せたことのなかったような妖しい微笑みを浮かべるシェリーの姿を見つめながら、その意識を手放してしまうのだった。
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