第28話 大仕事を終えて
合同調査プロジェクトが終わりました!
「暗躍している魔族を討伐し、悪事や研究内容の証拠を集めることができた。今回のプロジェクトは成功とする。皆の者、本当にありがとう!」
遺跡のダンジョンから出た後、モーゼル隊長は参加してくれた冒険者パーティ数組にお礼と労いの言葉を掛けている。
エレミーテ王国騎士団と冒険者パーティによる合同調査は結論から言えば、成功に終わったと思っている。
ダンジョンを隠れ蓑にしていた魔族のゲルデズを討ち取り、キメラの研究や量産をしようとしていた計画を食い止めることができた。
参加した遊軍調査部隊の隊員や冒険者パーティからは怪我人は複数いたものの、幸いなことに死者は出なかった。
とは言っても、同じく参加して下さった聖女のセアラ様が診てくれたお陰で誰も後に引くようなダメージを残さずに済んだ。
「成果を挙げられて良かったですね」
「そうね。魔族を相手に全員が生きて戻って来ることも叶ったんだもの。成功よ」
「得た情報を基に今後の魔族を相手にする際の対抗策を考案するのにも役立つプランも練っていけそうだな」
王都までの帰路に着いている俺たちはシーナさんとゾルダーさんたちとそんな話をしていた。
「ん?」
「どうしたの?」
「いえ、何でも」
俺はある方角を向いているところにシーナさんに声を掛けられたものの、何でもないように取り繕った。
「……」
さっきまで向いていた視線の先にあったのは今回のプロジェクトに参加してくれた冒険者パーティ勢の一組にして、俺がかつて在籍していた『戦鬼の大剣』の面々だった。
そして、そのリーダー格であるガルドスを筆頭にメンバーの顔色はお世辞にも良くなく、尚且つムードも暗かった。
一体何があったんだろう?
◇———
冒険者勢と別れ、隊舎へ帰って来た俺たち。
俺はモーゼル隊長に呼ばれ、ソフィア副隊長と一緒に執務室に来ている。
そこで俺はある事実を伝えられる。
「え?ガルドスたちが?」
「あぁ。今度問題となる行動を起こせば、降格は確実だろうな」
そう、ガルドスを含む『戦鬼の大剣』がプロジェクト中に戦力外通告されてしまったことに加え、Aランク冒険者の立場が危うくなっていると言う状況が俺に伝えられたのだった。
ソフィア副隊長曰く、別ルートを辿って行ったソフィア副隊長とSランクパーティ『夜天の宝剣』を筆頭に進んだものの、功名心や焦りからなのか、ガルドスは貴重な魔道具を無駄使いする、考えなしに突っ込んでは迷惑をかける、他の隊員や冒険者を雑に利用してはチームワークを乱すなど、問題行動が目立ったとのことだ。
加えて、突入前の最終ミーティングの受付でもガルドスが俺に失礼な発言や振る舞いをしていたことをアンリやトロンからも聞いているのも要因だと聞かされた。
俺は聞いていて複雑な気分になり、話したソフィア副隊長も不快な表情だった。
「それで、『戦鬼の大剣』はAランクではなくなると……」
「さっきも言ったが、あくまでも可能性の話だ。今回の結果を受けて、王都にある冒険者ギルド本部がその判断を下すのに数日はかかるため、その間ガルドスたち『戦鬼の大剣』の面々には王都に残ってもらうこととなる。処分が決まれば、ギルド本部に呼ばれてその内容を決定する流れだが、降格する確率はそれなりに高いだろう」
「そうですか」
「どうした?やはり、元メンバーの行く末が気になってしまうか?」
「まあ、多少は」
モーゼル隊長の言葉に対し、俺は取り繕いを交えた返事をした。
もしも降格となれば、Sランク冒険者への道が大きく遠ざかることになってしまう。
俺は既に抜けた身ではあるものの、どこか気の毒に思った。
「確か、ダンジョンの奥で調査の後に回収した魔族が開発した魔道具の数々は研究するための材料として扱われるんですよね?」
「そうだ。魔族が改造キメラを量産しようとしている事実を証明できるようになったからな。研究していく中で魔族に対抗するための要素が解明できたとなれば、国にとっても有益だからな」
モーゼル隊長の言う通り、今回のように王都の遠くない場所に魔族が潜めるダンジョンを見つけては同じことをしてくる可能性も否定できない。
だから調査で得た物を研究や解明によって、そこから新たに発見した情報を下に、魔族が相手でも国を守るために役立てていくのは有意義なことだ。
「何にせよ、今回のプロジェクトは良い結果で終わることができた。お疲れさんだな。ソフィア、リュウト」
「「お疲れ様です」」
「リュウト、下がっていいぞ」
「はい。失礼します」
俺は執務室を出るのだった。
「あいつら、大丈夫かな?」
俺は『戦鬼の大剣』の今後の行く末について心配しながら廊下を歩いている。
誰かが自暴自棄になった末、取り返しのつかない事態を引き起こさないようにと願いながら……。
◇———
「「「「「お嬢様、お疲れ様でした」」」」」
合同調査を終えた夜、セアラ様はズラッと並んでいるメイドや執事たちに出迎えられながら、自分が住まう屋敷に戻って来た。
貴族街にある屋敷に住んでおり、侯爵家なだけあって、玄関前には噴水があり、庭も走り回れるほどに広く、自然の豊かさを覚えさせそうな植物園みたいになっている。
門から屋敷までの道には石畳がびっしりと敷かれていた。
肝心の建物も三階建てで横幅も広く、規模は並みの一軒家の数倍はある。
「お父様とお母様は?」
「友好関係にある貴族の皆様が集うパーティーに出向いております。明後日頃には帰って来るかと……」
「そうですか」
「セアラ様。まずはお食事になさいますか?」
「お願いします。できたら呼んで下さる?」
「かしこまりました」
セアラ様は食事の用意を一人のメイドに指示した後、自分の部屋に戻っていった。
「ふぅう……」
一人で過ごすにはかなり広い部屋に置いてある大きなベッドに寝たり込み、天井を仰ぐセアラ様は一息着いた。
それなりに力を使ったのか、少しの疲労が見える。
「魔族の脅威がすぐ側まで来ようとしているとは……。すぐにでも結界を張り直し、聖属性を持った魔道具を作らなければなりませんね。それにしても……」
やることを口にしながら、起き上がったセアラ様は窓に映る月を眺める。
今回の合同調査で起きた出来事や聞いた話を思い返しながら、セアラ様は柔らかさと好奇心が混じったような微笑みを浮かべていた。
「遊軍調査部隊のリュウトか……。不思議な人だったな。何かのきっかけでご一緒できないかしら?」
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