第21話 久々に二人っきり
リュウトとリリナが腹を割ってお話です。
日が落ちようとする夕方、俺はかつての仲間であった『戦鬼の大剣』の僧侶であるリリナと向き合っている。
二人きりで会うのは久しぶりだ。
「リュウト……」
「ん?」
俺とリリナの間に数秒の無言の時間が過ぎた後……。
「今までごめんなさい!」
「え?」
リリナは綺麗ながらも勢い良くお辞儀をしながら謝罪をした。
周りに人目がほとんど無いからまだいいけど、俺は若干戸惑った。
「私、リュウトが抜ける時に冷たいことを言ってしまったことを凄く反省しているの。『戦鬼の大剣』でいろんな意味で支えになっていたのはリュウトだって分かり切っていたはずなのに、ちゃんと守ってやれなかった。表には出さなかったと思うけど、リュウトだって傷ついていたはず。せめて、私だけでも、最後まで味方でいるべきだった。本当にごめんなさい!私に償えることがあれば、何でもするから!」
「……」
リリナの姿を見て、俺は分かった。
本気で謝っていることを。
間を置くこと十秒ほど。
「もう……いいって」
「え?」
「俺は……リリナを許すよ。その精一杯の謝罪をしてくれるだけで十分だから。もう、過ぎた話なんだから、気にしなくていい」
「リュウ……ト。うっ、うっう。ありがとう」
俺から許しの言葉をもらったリリナは顔を泣き腫らしながら礼を言ってくれた。
ちなみに、シーナさんやアンリ、トロンがこっそり見ていたのはここだけの話である。
◇—————
俺はリリナを騎士団の隊舎の外にあるベンチに座らせた。
ここなら角度的にも外側から見える心配はない。
「ビックリしたよ。まさかリュウトがエレミーテ王国騎士団の遊軍調査部隊の一員になっていたなんてね」
「実を言うと、この仕事を紹介してくれたのは冒険者ギルドスティリア支部の受付嬢をしているリサさんなんだ」
「てっきり、リュウトが他のAランク以上のパーティに加入していて、今回の合同プロジェクトに参加しているならば、そこで再会できるかもしれないなんて考えたこともあったけど、騎士団の隊員としてあなたと再会するとは思いもしなかったよ」
「それついては俺もビックリだけどな」
俺とリリナはリラックスした様子で会話に華を咲かせていた。
いつぶりだろうな?リリナとこうして和やかに話ができるのは。
俺はエレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊に入って今日に至るまでのことを話した。
「やっぱり。遊軍調査部隊って冒険者から転職してきた人はそれなりにいるって前に聞いたことがあるんだけど、本当だったんだ」
「そうだよ。さっきの赤い髪のポニーテールの女性もシーナさんって言って、元冒険者だったし、俺が所属している班の副班長を務めているんだ。今回のプロジェクトにも参加するぞ」
「そうなんだ。リュウト、新天地でも頑張っている上に今回の選抜メンバーにも選ばれるなんて、やっぱり凄いよ」
「運が良かっただけさ」
リリナが笑顔で褒めてくれた。
確かに入隊して一カ月で選抜メンバーに選ばれたのは運の要素も大きかったけどね。
「それで、ずっと気になっていたんだけど、リリナ」
「何?」
次は俺から話を切り出した。
「決まったんだな。俺の後任」
「え?あぁ、シェリーのこと?」
俺が脱退した後の『戦鬼の大剣』について、俺は自分が抜けた体制についてのことをリリナは話してくれた。
パーティに迎え入れてもすぐに辞めるパターンが三回は続いていたこと。
四人体制の時には依頼に失敗し続けたせいで一時はBランクへ降格する危機に瀕していたこと。
シェリーが加入してからは彼女の優秀さもあってAランク冒険者としての体裁をどうにか保ったこと。
少なくとも、Aランクから転げ落ちる事態は避けられたのが分かっただけでも、俺はホッとできたかもしれなかった。
「ガルドスがシェリーをやたらに贔屓していて、そのせいでパーティ内での扱いが変わってきている?」
「うん」
この話を聞かなければな。
リリナによると、シェリーが『戦鬼の大剣』に加入してからガルドスの態度やメンバーへの振る舞いが大きく変わってしまったとのことだ。
「受付の時でも見たけど、確かにあのシェリーって女性レンジャーは結構な美人だなって俺も思ったんだよな。それに———」
「リュウト!」
「うっ!すまん!」
リリナのドスの効いた声に思わず会話を止めて謝った。
自分で思うのもあれだけど、リリナって怒らすと恐いタイプなんだよな。
「それで、どんな風に変わってしまったんだ?」
「うん。それがね……」
俺はリリナから具体的な話を聞いた。
ガルドスがシェリーの魅力にやられているせいでミスをしても甘やかされていること。
ビーゴルやアキリラがシェリーのミスを追及するとガルドスがその場で庇いに入ること。
戦闘以外の雑務もガルドスとシェリーは簡単で手間がかからないことだけしかやらず、ビーゴルやアキリラにもその負担がのしかかり、リリナに一番しわ寄せが来ていること。
適当な理由を付けてはガルドスがシェリー以外のメンバーの取り分を減らして彼女に還元していること。
「おいおい、パーティ内で随分格差ができているんじゃないか?」
「そうなのよ~」
話を聞いた俺と話したリリナは思わず溜め息をついた。
確かにガルドスは黙ってさえいれば美青年だって思うのと同時に、中々の女好きな面もあったりするんだよな。
不機嫌になっていても、見た目の良い女性には無理するように愛想を振る舞う場面も何度か見たっけ。
「あれだけの美人で所作にも品があるからな。ガルドスが入れ込んでしまうのも分かる気がするな」
「リュウトの言う通りよ。実際、アキリラも以前よりもピリピリしているし、ビーゴルも少し距離を置き始めているからさ」
「ふ~ん。あれ?シェリーってビーゴルには懐いていない感じか?」
「懐いていないと言うよりも、まぁ、ほど良い距離感で接している感じかな?もしくは好みの問題とか」
リリナの話やガルドスの性格を考えれば、今の『戦鬼の大剣』が内部分裂寸前なのでは?って考えてしまう自分がいる。
そこへリリナが俺にもう一つの質問をする。
「リュウト。私、シェリーが『戦鬼の大剣』に加入してから今日に至るまでずっと気になることがあるのよ」
「何だ?」
「シェリーって。シェリー・ベルローズって本当に何者なのかな?って」
「むっ!?」
「シェリーが仲間になってから時々感じるんだ。何て言うか、Aランク冒険者としての実力者としての覇気って言うか、得体の知れない怪しい気配をさ。上手く言えないけど、少なくとも、危うい部類だと思ってる」
リリナのシェリーから感じる何かについて相談してきた。
シェリーと一緒にいる時間のみで言えば、少なくとも、俺よりもリリナの方が長い。
そこで俺が口を開く。
「リリナ。俺はシェリーと言う女性についてはまだまだ把握し切れていないところがある。だけど、断言こそできないもの、俺も実際に少しの時間だけ向き合って分かったことがあるんだよ」
「え?」
「あの女からは危険な香りがしてならない。リリナも十分に警戒した方がいい」
「う、うん?」
俺がそう告げると、リリナはとりあえずその場で頷いた。
気付けば、夜も更けそうになっていた。
「送ってくれなくてもいいのに」
「このくらいはさせてくれ」
積もる話を終えた後、俺はリリナ……と言うよりも『戦鬼の大剣』のメンバーが宿泊している城下町の宿屋の近くまで送った。
「冒険者とは言え、正面戦闘に向かないジョブの女性を一人で夜道を歩かせるなんてできねぇよ。ましてや、見知った相手なら尚更だしよ」
「もう。リュウトったら」
言葉とは裏腹に、リリナの表情は穏やかであり、 俺と再会できたことや久しぶりに腹を割って話すことができたのが嬉しかったのか、どこか晴れやかに見える。
「じゃあ、俺は行くぞ」
「うん。ありがとうね」
リリナが宿屋に入ったのを確認すると、俺はその場を後にした。
思えば、俺が『戦鬼の大剣』にいた頃、リリナと必要な道具の買い足しのために一緒に城下町を歩いたことが何回かあったな。
それを振り返ってみると、少しだけ懐かしい気持ちになる。
「しかし、リリナはこれからどうするんだろうな?」
騎士団の寮の自室に戻った俺はベッドに寝転びながらそう呟く。
俺が抜ける直前までの『戦鬼の大剣』はいろんな意味でガルドスのワンマンチームな側面がそれなりにあった。
そこにガルドスが贔屓しているシェリーがパーティに加わり、リリナの話からするに、下手をすれば瓦解するのではないかと懸念する俺もいる。
それでリリナがその状況に嫌気が差した挙句に俺と同じように脱退する可能性だって否定できない。
「その時が来てしまったら、機会を伺って相談した上で、どうするか決めるのもいいか」
そう考えて俺は寝ることにした。
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