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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第一章

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第20話 再会

リュウトと『戦鬼の大剣』、再会の時です。

「お前……。リュウトか?」

「「「ッ!?」」」

「……」


 俺は約一カ月前まで所属していたAランクパーティ『戦鬼の大剣』のリーダー格であるガルドスと再会した。

 元メンバーだったビーゴルやアキリラ、同時期に加入したリリナ、俺の後釜のように加入したシェリーもいる。

 シェリー以外は俺の顔を見て驚いている。


「お前、その服装。エレミーテ王国騎士団のだろ?何で?」

「何でって。一カ月くらい前に『戦鬼の大剣』を脱退した後、俺はエレミーテ王国騎士団の遊軍調査部隊に転職したんだ。ちなみに、今回の合同調査プロジェクトの実行部隊にも参加することが決まっているんだよ」

「嘘でしょ?」


 俺が着ている隊服を見たビーゴルが確認すると、素直に理由を伝え、聞いていたアキリラもギョッとしたような表情を見せる。

 まぁ、元とは言え、かつての仲間が冒険者から騎士団に転職したって知ったら、大なり小なり驚かれると思っていたけど、予想以上だな。


「俺も選抜メンバーの一人だからな。『戦鬼の大剣』も参加するって言うのは前もって知っていたから、大して驚いていないんだけどね」

「クッ!」


 全く驚いていないのはハッタリなんだけど、また変な因縁や厄介な種を産まないために敢えて動じていないような振舞いをすることにした。


「あぁ、そうだ。お前にも紹介しておくよ。お前が抜けた後、後釜として入ってくれたシェリーだ。ジョブはお前と同じレンジャーだぜ」


 するとガルドスが何かを思い出したような仕草を見せながら、シェリーと言う薄紫色の髪をしている女性を紹介する。

 参加者名簿で確認はしているものの、実物をこうして見ると、思わず振り返ってしまいそうな美貌をしており、スタイルも抜群に良い。


「初めまして。リュウトさん。あなたが抜けた直後に『戦鬼の大剣』へ加入させていただきました、シェリー・ベルローズと申します。あなたに代わりまして、パーティに貢献していけるように尽力をいたす所存ですので、以後お見知りおきを……」

「はぁ、どうも」


 見目麗しいだけならともかく、冒険者とは思えないくらいに礼節がしっかりしていると見て取れる。

貴族令嬢と大差無いような気品を感じさせる振る舞いも様になっている。


「おいおいシェリー。何もリュウトなんかにそんな礼儀正しくしなくてもいいんだぜ」

「いえ、『戦鬼の大剣』に少なからぬ貢献をしてくれていたとガルドスさんが言っていた私の前任のレンジャーの方にも、これからの抱負を伝えておきたく思いまして……」

「流石はシェリー。やっぱり良い女だぜ」

「「「……」」」


 ガルドスはシェリーのことを随分と可愛がっているようだ。

 見た目やスタイルはかなり良く、それでいて穏やかで優しく、相手を立てる気配りや振る舞いも自然とできるとなったら、コロッといかない男を探す方が難しそうだ。

 心なしか、ビーゴルやアキリラ、リリナのガルドスを見る目が冷たいと思う。


「では、手続きを済ませたく思います。他の参加者も既にいらしておりま———」

「それにしてもリュウト。お前、冒険者としての限界を感じて自ら抜けたにしても、騎士団と言うお堅い仕事に就いちゃって何も思わないのか?」

「はい?」


 手続きを進めようとする俺に対し、ガルドスが馬鹿にしているような表情を見せながら煽るようなセリフを言ってきた。

 俺も「はい?」の言葉の中に少なくない怒気を滲ませている。


「聞いた話なんだけど、遊軍調査部隊ってエレミーテ王国騎士団の中でもいろいろと他の部隊とかに振り回される機会が多いんだってな?」

「何が言いたい?」

「悪い悪い。遠回しに言うのも面倒だよな」


 突っかかるような振る舞いを見せ始めるガルドスを鋭い眼で見つめる俺。

 するとガルドスが口を開く。


「グッジョブだぜ。そんな仕事を紹介した奴もよ。ちょこちょこと雑魚の魔物を倒したり、戦闘以外の簡単な仕事ばっかりしてたお前には本当におあつらえ向きだよな。弱そうな新米と一緒になってちまちま小遣い稼ぎをする。やっぱりリュウトには雑用係がお似合いだぜ。雑用係なりに弁えろよ!」

「ッ!」


 それを聞いた時、俺の中の怒りの感情が呼び起こされた。

 俺だけなら我慢できたかもしれなかったけど、今の遊軍調査部隊で一緒に仕事をしているアンリとトロンへの侮蔑も含まれているのだから。

 次の瞬間だった。


「いい加減にして下さい!」

「あんっ!?」

「アンリ?トロン?」


 大声でガルドスに食って掛かったのはアンリであり、隣にいるトロンも怒りを込めた表情をしている。


「仮にもかつてはリュウトさんと同じパーティメンバーであり、仲間のはずだったのに、リュウトさんの献身を無碍にするような態度を取ってきた上に悪口を言って恥ずかしいと思わないのですか?リュウトさんはただの雑用係なんかじゃありません!私を助けてくれた恩人です!馬鹿にしないで下さい!」

「アンリ……」


 これは驚いた。

 アンリは真面目で大人しいタイプだと思っていただけに、不意打ちで気迫の込められた大声を隣で聞いて俺もビックリした。


「そうですよ!リュウトさんは俺たちのピンチを救ってくれただけじゃなくて、今回のプロジェクトを発足するのに一躍買うだけの活躍を既にしているんです!それに、リュウトさんを弱い人扱いしているように見えますけど、それどころか凄く強いんです!ウチの上司も、部隊の皆がリュウトさんを認めています!撤回して下さい!」

「トロン……」


 トロンも怒りをぶつけている。

 二人共、俺を擁護するためにガルドスへ立ち向かおうとしているのが分かる。


「何だよコイツら?リュウトの同僚の癖に生意気言ってんじゃ———」

「何の騒ぎだ?」

「「「「ッ!?」」」」


 あわや喧嘩になりかけたところで俺の上司であるモーゼル隊長が現れた。

 どうやら騒がしさに気づいて自ら対応に乗り出しにきたらしく、必然的に皆の視線がモーゼル隊長に集まる。


「どうも。エレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊の隊長を務めているモーゼル・フィデライドと申す。状況はともかく、今回のプロジェクトに参加される予定のAランクパーティ『戦鬼の大剣』とお見受けするが……」


 モーゼル隊長が状況とガルドスたちの身分を確認しようとすると……。


「アンタが隊長さんでコイツらの上司っすか?この俺に嚙みついてきたんすよ。見る限り新人そうなんですけ———」

「モーゼル隊長!この人、リュウトさんのことを悪く言ってきたんですよ!」

「そうなんですよ!さっきからリュウトさんのことを『雑用係』とか、『弁えろ』とか、酷いことばかり言ってきて、それで私とトロンが!」

「だから、コイツらが———」

「いい加減にしやがれ!」

「「「「ひっ!」」」」


 余計に口論が熱くなりかけそうになった時、モーゼル隊長がロビーどころか建物の奥まで届きそうな一喝が響く。

 こんなモーゼル隊長を見るのは入隊以来初めてだぞ。


「まずは、騒ぎを起こしてしまったことを謝罪する。申し訳ない。私から言って聞かせるように努めますので、ここは穏便に済ませていただきたい」

「ッ!」


 モーゼル隊長はガルドスに向き直るや否や、深々とした謝罪をした。

 さっきまでが鳴っていたガルドスも少なからずその場にいる職員数名の目もあってか、モーゼル隊長の迫力に恐れをなしたのか、すぐに大人しくなった。


「私が案内する。こちらへ」

「はいはい……」


 まるで尻拭いを引き受けるかのようにモーゼル隊長はガルドスたち『戦鬼の大剣』の面々を客間の一室に案内するのだった。

 それからは状況の悪さを流石に理解したのか、ガルドスたちはそれ以上の発言はしてこなかった。

 だけど、捉えられる限りまでだったけど、ガルドスがギリギリまでに俺を睨みつけていた。

 ビーゴルとアキリラは黙っており、リリナは俺に目で「ごめんなさい」とアピールする目線と少しの会釈を見せていた。

 一方、シェリーは擦れ違い様に俺に対して「失礼しました」って言いたそうな微笑みながら会釈していた。

 こんな状況でも普段の振る舞いを崩さない辺り、胆力があると感じたものの、独特な匂いも覚えた。


「はぁあ……。アンリ。トロン」

「ごめんなさい。みっともないところをお見せしてしまいました。でも、リュウトさんのことをあんな風に悪く言われているのを聞いていたら、黙っているなんてできませんでした」

「俺もです」

「……」


 二人は俺に頭を下げてくれた。

 そう言えば、俺が入隊してから初めて開いてくれた宴席でも酒の勢いそのままにガルドスたちに怒っていたっけな。


「ありがとうな。俺のために怒ってくれて」

「いえいえ、そんなことは!」

「今は大声を出してしまったことを反省していますから」

「俺から言うことは何も無いよ。全員集合したみたいだし、俺たちも会場へ向かおう」

「「はい!」」


 定刻が近くなり、俺はアンリとトロンを連れて顔合わせの会場であるホールへ赴いた。


「これより、エレミーテ王国騎士団と冒険者ギルドとの合同調査プロジェクトの最終ミーティングを行います!」


 司会を務める職員の進行の下、顔合わせを兼ねたミーティングが行われた。

 念入りに下調べされたダンジョンの規模や構造、トラップの数や種類、遭遇し得る魔物のバリエーションまで、確定的ではないものの、概ね把握できている情報を参加者全員に共有した。

 魔族特有の瘴気を確認した旨を伝えられた時には参加者全員が驚いていた。

 だけど、それはすぐに消えることになった。


「ご紹介します!今回のプロジェクトにおけるキーパーソンとして、侯爵家の貴族令嬢にして、エレミーテ王国が誇る聖女の一人、セアラ・フォルティーネ様も参加することが決まりました!どうぞ!お越し下さい!」


 紹介されて現れたセアラ様は壇上に立つと、参加者のほとんどが歓喜に沸いた。

 聖女は聖職者の頂点的存在であり、勇者と同じく、魔族に対抗できる明確な術を持った人物と称され、禍々しい力に対抗できる、今回の作戦の切り札だ。

 加えて、セアラ様は聖女を始めとする聖職者しか作れない“聖水”や聖属性を備えた“聖光の破魔矢”など、対抗するための魔道具やスクロールを可能な限りではあるものの、製作・提供をしてくれた。

 実際、参加者全員が希望の眼に満ちている。

 それからは冒険者同士の歓談で会は幕を閉じることになった。


「ふぅう……」

「お疲れ様」

「シーナさん。ありがとうございます」


 俺はホールにあった備品の片付けも終わって廊下の椅子に座っていたところにシーナさんが水の入ったボトルを差し出し、それを受け取った。


「聞いたよ。開始直前、アンリとトロンがあんたの元パーティと揉めたって」

「はい。ただ、モーゼル隊長が間に入って止めてくれました」

「そう。やり辛くない?」

「仕事ですから。それに、俺も選抜メンバーに選ばれた以上、個人的な人間関係を理由に降りるなんて真似はしたくないですから」

「なるほど。割り切っているわけね」


 どうやらシーナさんも開始前の揉め事について知っているようだった。

 それからはお互い、本番に備えて準備するため、騎士団の隊舎へ帰路に着いた。

 途中でアンリとトロンも合流し、後は軽く済む用事を終えて自室に戻ろうとするだけだった。


「リュウトさん。あの人って?」

「ん?……あっ」

「……」


 アンリに促される形で示した方角に視線を向いてみると、一人の女性が立っている。


「リュウト……」

「リリナ」


 『戦鬼の大剣』に所属する僧侶であり、同期のリリナだ。


「リュウト、あたしたちは先に寮に戻ってる」

「はい。すいません」

「行こう。アンリ、トロン」

「「はい」」


 シーナさんは状況を察したのか、アンリとトロンを連れてその場を離れた。

 正直に言って、助かる。

 それから俺は一歩ずつリリナの側に歩み寄り、口を開く。


「あの場では言えなかったけど……。久しぶりだな。リリナ」

「久しぶり。リュウト」


 俺はリリナと約一カ月ぶりの会話を交わすのだった。

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