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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第一章

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第19話 複雑に感情は交錯する

「いよいよ三日後ですね」

「何だか僕も緊張してきちゃいましたよ」

「トロンは参加しないだろ?」

「何だかウチの部隊が中心になって大きなプロジェクトがあるって思うとつい……」


 勤務終わりが近づきつつある夕方、俺はアンリとトロンと一緒に騎士団隊舎の廊下を歩いている。

 先日、遊軍調査部隊のトップであるモーゼル隊長によって、エレミーテ王国騎士団と冒険者ギルドとの合同調査プロジェクトの選抜メンバーが正式に発表され、俺もその一員に選ばれた。

 モーゼル隊長やソフィア副隊長はもちろん、主に選抜されたのは各班の班長や副班長であり、その中には俺がいる第六班の班長であるゾルダーさんや副班長のシーナさんも含まれており、各班の若手の有望株も数人いる。

 発表されてすぐに選抜されたメンバーで打ち合わせを行い、進行プランや連携などを確認し、必要な物資や各々の役割に関しても具体的に詰めていった。


「でも、私はリュウトさんが選ばれて、自分のことのように嬉しく思いますよ」

「そうか。ありがとうな」


 アンリは無邪気な笑顔を見せてくれた。

 それから俺は隊舎に戻って業務日報を作製した後、退勤した。


◇—————


「ふぅ~。明日は仕事無しだけど、一緒に突入する冒険者パーティとの顔合わせか」


 俺は騎士団が保有している寮の自室に戻って一息ついた。

 アンリやトロンの前では平静を装っていたけど、内心では緊張……と言うよりも少なからぬ憂慮を抱いている。

 今日も選抜メンバーのみで行われた事前打ち合わせにおいて、俺にとってはただならぬ情報を二つも知ってしまったからだ。

 一つ目は合同で潜る冒険者パーティの面子だ。

 エレミーテ王国だけでなく、隣国にも名を轟かすだろうSランクパーティを筆頭に、同じく参加するAランクパーティ数組の中に一つのパーティがあった。


「まさか。ガルドスたちも参加するとはな……」


 そう、その冒険者勢の中にはかつて俺が身を置いていたガルドスの率いるAランクパーティ『戦鬼の大剣』も入っているのだ。

 参加者名簿でその名前を見た時、その場で動揺こそしないように振舞っていたけど、内心驚いた。

 俺が脱退してから一カ月以上経っているけど、自分がいなくなったせいでAランクから転げ落ちていなかった事実を知った時、安堵の念を覚えたのに嘘はない。

 シェリー・ベルローズと言う俺の後任であろうレンジャーが見つかり、皆が元気そうで何よりだ。

 でも、それだけなんだよな。

 いや、もう抜けた身だから切り替えよう。

 二つ目……これが俺にとっての。いや、参加する者のほとんどが懸念していることだろう。


「まさか……魔族が絡んでいるとはな……」


 魔族。

 それは世界を滅ぼさんとする魔王の眷属と言われる種族だ。

 魔族の力はその辺にいる魔物とは比べ物にならないほどの強大な力や人と大差ない知能を持っており、そのほとんどが残虐非道と言われている。

 邪悪なる存在の頂点である魔王はエレミーテ王国から遠く離れた北の領土より少しずつ、確実に広がっている魔王領を拠点としており、そこには多くの魔族が住まうとされている。

 故に、魔王領へ不用意に近づくことは自殺行為とも言われているくらいだ。


「それであの時から時間が経っているにもかかわらず、行動に踏み切れなかったのか」


 調査に乗り出す場所は俺が遊軍調査部隊に入隊してすぐに見つけた森林の奥にある隠しダンジョンであり、それからプロジェクトの開始に至るまで約三週間の間隔が開いていた。

 そんなに調査が難航しているのかって思いもしたけど、魔族が関係しているとなったら、安易に動けないのも、様々な意味で及び腰になるのも納得がいった。

 変に疑ってすいません。


「それだけに、対策の意味で聖女様を同行させるって聞いた時には驚いたんだけどな」


 今回の調査で魔族に対抗する術として、侯爵家の貴族令嬢にして、エレミーテ王国が誇る聖女の一人であるセアラ・フォルティーネ様も同行することが決まっている。

 セアラ様は今回の大型プロジェクトに協力的なようであり、そのための準備を前々から進めてくれており、打ち合わせに参加していたほとんどの皆が心強さを感じていたことを覚えており、かく言う俺もその一人だ。

 魔族と言っても、普通の攻撃や魔法がまるで通じない個体もいれば、駆け出しの冒険者よりもマシな程度の強さしか備えていない個体までピンキリだとか話していたな。

 その中で最も有効な術とされているのが聖属性の魔法であり、勇者が持つ聖剣を始めとする聖武具や聖女の魔法がその力を備えていると伝えられている。

 何にしても、今回の調査においては頼もしい限りだ。


「とにかく、明々後日の本番や明日の顔合わせに集中しよう!」


 俺も寝る直前まで、武具の手入れや自分が用意しているポーションや消耗品の確認に勤しむのだった。


◇—————


「いよいよ明後日ね」

「そうですね」


 翌日、俺たちは参加する冒険者パーティを出迎え、本番に向けての打ち合わせを行うため、王都にある冒険者ギルド連盟本部に赴いている。

 参加する冒険者パーティを出迎えるため、俺はシーナさんや他の選抜メンバー数人と一緒に受付役として応対している。

 選ばれてこそいないが、アンリやトロンも手伝ってくれている。

 そんな時だった。


「エレミーテ王国騎士団の方々ですかね?」

「ッ!?あなたは?」


 最初にやって来た冒険者パーティの面々を見て、俺は驚いた。


「今回のエレミーテ王国騎士団と冒険者ギルドとの合同調査プロジェクトに参加する冒険者パーティ『夜天の宝剣』のリーダーを務めているアルベルト・ウィルソンだ」

「冒険者パーティ『夜天の宝剣』の皆様ですね。お待ちしておりました」


 目の前にいる黒味を帯びた灰色の髪をした偉丈夫はSランクの称号を冠する冒険者パーティ『夜天の宝剣』のリーダーを務めているアルベルトさんとその仲間たちだ。

 『夜天の宝剣』はエレミーテ王国だけでなく、他国にもその名前が知れ渡っている超有名な冒険者パーティであり、ジョブが剣士のアルベルトさんを筆頭にメンバー一人一人が一騎当千の実力や才能を備える猛者揃いだ。

 当然、俺が冒険者時代の駆け出しの頃から名前を聞いており、今も尚、その名声や活躍ぶりは嫌でも耳に入って来るくらいだ。

 だが、自由が効いていた冒険者の時と違い、今の俺は規律と秩序を守るエレミーテ王国騎士団の一員だ。

 逸る気持ちを抑えて対応しなければな。

 実際、冒険者上がりのシーナさんも興奮してしまわないように毅然と対応しているくらいなのだから。

 俺はシーナさんと一緒にアルベルトさんら『夜天の宝剣』御一行様を別室にご案内するのだった。

 待機してもらう部屋の扉に手を掛けそうになったその時……。


「そこの男性」

「は、はい!な、何か?」

「な、何か、リュウトが粗相を?」


 アルベルトさんに声を掛けられて、思わず硬直してしまった。

 シーナさんも釣られるように反応している。


「君……。記憶違いであれば、謝るのだが……。Aランクパーティ『戦鬼の大剣』に所属していた。リュウト・ドルキオスではないか?」

「え?は……。はい。私がリュウトでございます。様々な事情が重なって、一カ月ほど前からエレミーテ王国騎士団の遊軍調査部隊で働いておりまして……」


 俺はアルベルトさんに声を掛けられるや否や、思わず立ち止まり、その場で硬直してしまった。

 かつては憧れていた冒険者パーティのトップに名指しで詰められたら、嫌でもプレッシャーを感じてしまうだろ。


「アルベルトさんたち『夜天の宝剣』の活躍は前より存じ上げております。今回のプロジェクトに参加していただけたこと。そして、こうしてお会いできたことを心より嬉しく思います」

「……」

「そうか」


 紡げるだけの言葉を紡ぎながら、俺は頭を下げる。


「君がどのような経緯で冒険者からエレミーテ王国騎士団に転職したにせよ、『戦鬼の大剣』に所属していた時の実力や有能さは知っている。だから、こうして同じ場所で参加できることを嬉しく思う。今回はよろしくお願い申し上げる」

「「……」」


 返って来たのは忖度の欠片もない、まっすぐな言葉だった。

 アルベルトさんの後ろに控えるパーティメンバーも気持ちは同じようだ。


「はい!ありがとうございます!よろしくお願いします」


 俺は感謝の言葉と同時に力強いお辞儀を返した。

 シーナさんも思わず俺に続く形で礼をしていた。

 それからアルベルトさんたちを客室に招き入れた後、俺とシーナさんはその場を去るのだった。


「良かったじゃん!かの有名な『夜天の宝剣』のリーダー格のアルベルトさんにお褒めの言葉をもらってさ!」

「はい」


 受付に戻る途中で歩いている廊下でシーナさんに褒められた。

 Sランクの称号を手にした冒険者パーティに俺の努力が認められていたことが分かって、嬉しくて堪らなかった。

 冒険者時代の努力や頑張りが無駄ではなかったのだから……。

 それからは気持ちを取り直して他に参加されるAランクパーティの受付や対応を淀みなくこなしていく俺たちなのであった。


◇—————


 そして、最後の一組を迎え入れる。

 その相手は……。


「リュウトさん。あれって……」

「ん?あっ……」


 アンリがある一団を目にすると、心配そうな表情と共に俺に声を掛けてきたが、心配は無用だ。

 落ち着いているし、割り切ったように対応すればいいと思っているから。


「すいません。今回のエレミー……。あん?」

「……」


 一番先に声を掛け、俺の存在に気づいたのは『戦鬼の大剣』のリーダーであり、かつての仲間であったガルドスだった。

 その後ろにはビーゴルとアキリラとリリナ。

 俺の後任で入っただろう、レンジャーのシェリー。

 シェリー以外の面々が俺の顔が目に飛び込んだ瞬間、数秒の硬直の後、ガルドスが口を開く。


「お前……。リュウトか?」


 俺はガルドス率いる『戦鬼の大剣』の面々と約一カ月越しの再会を果たすのだった。

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