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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第一章

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第17話 訓練と手合わせと申し出

訓練もちゃんとしています!

「お手合わせ、願います」

「いざ!参らん!」


 俺は今、エレミーテ王国騎士団が持っている訓練場に来ている。

 屋外と屋内には目的に即した訓練場があり、広さで言えば屋外の方が、設備の充実度で言えば屋内の方が勝っている感じだ。

 ちなみに今いるのは屋外の訓練場であり、岩壁に覆われた広大な場所には多くの騎士たちが剣を撃ち合い、槍を振るい、身体を鍛えながら研鑽し合っており、精が出ているのが目に見えて分かる。

 王国を守る騎士団に所属する騎士であれば、日頃から修練を積んでいくのは当然と言うことだ。

 今のこの時間は俺が所属する遊軍調査部隊が屋外の訓練場を使用している。

 ちなみに屋内の訓練場は予約制だが、屋外の訓練場は必要以上に場所を取らなければ、大人数でも少人数でも、なんなら単独でも自由に行える。


「そこ!集中して撃ててないのが丸わかりよ!しっかりしなさい!」

「すいません!」

「あなたは腕の引きがなってないわ!それじゃ遠くまで飛ばないわよ!」

「はい!」


 訓練場にはソフィア副隊長を中心に、各班の班長や副班長が主導しながら隊員たちの訓練を監督している。

 ソフィア副隊長は自身と同じレンジャーのジョブを持つ隊員に弓術の稽古を付けており、その指導ぶりは意外とスパルタであるものの、教え方は的確だ。

 補佐には俺がいる第六班の班長にして、同じくレンジャーであるゾルダーさんが付いており、こちらはソフィア副隊長と比べれば、懇切丁寧な指導法だ。


「アンリ!もっとリラックスして撃つようにしなさい!姿勢を崩しすぎると照準が定まらないわよ!」

「ハイ!」


 俺と同じ班に所属していて、ソフィア副隊長の妹であるアンリも厳しめのアドバイスをもらっている。

 姉妹と言えど、甘やかす気は無いというのがよく分かる。


「脚捌きがなってないわよ、トロン!動きもまだまだ大振りよ!」

「はい、すいません」

「さあ、次!」


 ジョブはシーフであり、第六班の副班長であるシーナさんが後輩隊員たちの指導をしている。

 木製のロングナイフを手に取り、自らが手本となる形で手取り足取りまで動き方や立ち回り方を教えており、これまた分かりやすい。

 加えて、俺と同じく元冒険者の経験を活かして、魔物との戦いについてのコツも教えており、教わっている側もメモを取るのに必死だ。

 俺も後輩ができたら、シーナさんのような指導方法をやってみようかな?

 かく言う俺は……。


「よし!」


 筋力トレーニングを終えた俺は自分の弓矢を手に取って弓術の稽古を始めた。

 手始めに俺は矢を引き、溜め、そして撃つ。

 その矢は吸い込まれるように的のド真ん中を捉えた。

 そこで俺は……。


「もう…一本!」


 もう一本の矢を放った。当てた先はまたもド真ん中だった。

 但しそれは……最初に刺した矢の一番後ろの部分である、矢筈と呼ばれる箇所だった。

 俺が的に刺さっている矢を回収しに行こうとした時……。


「「「「「スゲーーーーー!!」」」」」

「へ?」


 静寂に包まれていた稽古場に割れんばかりの歓声が轟き、俺は驚いた。


「リュウト!お前、それ継ぎ矢だぞ!それも一発目からやってのけてるじゃないか!」

「ゾルダー班長?」

「初めて会った時から思ったんですけど、リュウトさんって本当に素晴らしい弓術の持ち主です!」

「アンリ?」

「俺、継ぎ矢をした人初めて見たぞ!」

「話には聞いていたけど、とんでもない弓術だぜ!」


 訓練場に散らばっていた隊員たちが一目散に俺の下に駆け寄り、中にはゾルダーさんやアンリも含まれており、よく見たら大半がレンジャーだった。

 俺はその場で謙遜したが、賞賛の嵐が止むことはしばらく無かった。


「初めて一緒に王都の森林を調査へ行った時にリュウトの弓術は見たけど、あんなことができちゃうなんて……」

「まぐれとかじゃないですよね?」

「……」


 遠目から見ているシーナさんとトロンの表情はポカンとなっていた。

 一方、ソフィア副隊長だけは冷静に俺の方に視線を送っている。


(皆のリアクションは最もだ。リュウトがしたのは継ぎ矢と言う、弓を武器とする者にとっては最高峰の技術と言っても過言ではない。どれほど才能に恵まれても、長年に渡って弓術の経験を積んだ者であろうと、継ぎ矢は成功させようと思っても易々とできる類のモノではない。それを一回目からやってのけるとは……。他の隊員たちからの話や実績が記された書類で確認はしているけど……。やはり、リュウトは只者ではないか)


 沈着な態度で分析するソフィア副隊長だった。

 そこへ……。


「おうおう、何の騒ぎだ!」

「モーゼル隊長!」


 現れたのは遊軍調査部隊のトップであるモーゼル隊長だった。

 意気揚々な声を聞いたその場にいる隊員の皆が一斉にその方角に目をやっている。


「隊長!実は、凄いことが起きまして……」

「ん?凄いことって?」

「それは……」


 隊員の一人が若干興奮気味で、俺がさっき見せた継ぎ矢について話した。

 それを聞いたモーゼル隊長は……。


「そうかい!そうかい!ソフィアや皆から聞いた話でもリュウトの実力については俺も興味があるんだけどな!どうだい、リュウト?俺と一戦交えてみないか?」

「え?」


 これは思わぬ申し出だ。

 ゾルダーさんによると、ジョブが武術家であるモーゼル隊長は王族の護衛任務において、不意に鉢合わせたリスクレベルAのゴブリンキングを単騎で討ち取った経験があると小耳に挟んだことはある。

 ちょっと前まで冒険者をやっていた俺にとっては驚きでしかなかったけど、それが真実だとすれば、モーゼル隊長はSランク冒険者にも届くだろう戦闘能力を持っているって想像ができる。

 実際、鷹揚な振る舞いに見えるけど、何だろう?

一挙手一投足の立ち振る舞いに易々と隙を見せないような、静かながらも強い闘志や覇気が見え隠れしているように思える。


「俺の目や肌でリュウトの強さを知っておきたくてな。アフターケアは保証してやるから、俺の道楽に付き合うつもりで頼むぜ」

「は、はぁ……」


 まあ、騎士団には王族お抱えの宮廷治癒団とのコネクションもあるから、最悪の事態だけは避けられるかもしれないな。

 かく言う俺も、遊軍調査部隊のトップを張る人物の実力に興味の有無で言ってしまえば、あるのが本音だ。

 十秒もしないで俺が下した決断は……。


「分かりました。お手柔らかにお願いしますよ」

「おう!可能な限り、お手柔らかに済ませるように努めよう!」


 こうして、俺はモーゼル隊長と模擬戦のような形とは言え、一戦交えることになった。

 それからは外部の訓練所の中央辺りで俺とモーゼル隊長が向き合い、周りには隊員たちが囲うように観客席と化していった。


「いいんですか?剣だけでなく、弓まで使ってしまって?」

「構わねえよ。俺としても、こっちの方が張り合いだってあるしよ!」


 モーゼル隊長は両手脚に訓練用の耐久性と弾力を兼ね備えたようなグローブやレッグウォーマーを付けているのに対し、俺は同じく訓練用の柔らかな素材でできた弓矢とレイピアを模した木剣を用意している。

 普通に見れば、中遠距離攻撃の手段を持っている俺が有利に見えるけど、モーゼル隊長は「レンジャーならではの戦いで構わん!思いっ切り来い!」と言われており、結局はそれでやる流れとなった。

 それから……。


「試合……開始!」

「「ッ!!」」


 ソフィア副隊長が審判の下、俺とモーゼル隊長との一戦が交えられた。


「フッ!」

「オッ!」


 試合開始の合図が響くや否や、俺は背中の弓を素早く構えて矢を番える。

間髪入れずに放たれた訓練用の弓矢だが、風を切るような音を響かせながら、モーゼル隊長は僅かな身体捌きでそれを躱す。


「いきなり急所とは手厳しいな!リュウト!だが、それでは甘い!」


 そこからモーゼル隊長は笑みを浮かべたまま、地面を蹴り、驚異的な速さで一気に詰める。

 俺も二射目を放つが、モーゼル隊長は少しのサイドステップによって紙一重で躱し、至近距離までに間合いが詰まる。

 中遠距離で張りつけるのは難しいと判断した俺は素早く弓を背中に回し、腰の木製の片手剣を引き抜いた。


「ここからどうやって対抗する気だ?リュウト!」

「シュッ!」


 モーゼル隊長が繰り出したのは鋭くも無駄の無い左ジャブであり、俺は咄嗟に顔を横にずらして躱すも、掠ったような感触を覚えた。

 俺も木剣による突きや薙ぎで応戦するも、モーゼル隊長は余裕で捌き、そこから淀みや無駄を削ぎ落したような流れる拳打と蹴りを見せ始め、受け流すことに必死ながらも、俺は悟っていった。

 冒険者時代と比べて、対人戦の経験そのものが少ない俺から見ても、今の撃ち合いで分かる。

 モーゼル隊長は強い。

 普段は気さくで快活な人物でいながらも、戦闘においては洗練された武術と動きで翻弄して来る。

 俺はそう感じざるを得なかった。


「オラァアアア!」

「ハァアアア!」

「おっと!良い動きするじゃないか!」


モーゼル隊長のラッシュは凄まじかったが、俺は木剣とフットワークで捌いていく。

 俺はちょっと前まで冒険者だったため、魔物との戦いは多かったけれど、武器を持った人物とやり合う機会はそれほど多くはなかった。

 だけど、ならず者の盗賊を相手にする機会もそれなりにあったので、対人戦の経験が皆無ではない。


「ここだ!」

「よっと!」

(結構えげつないタイミングで間隙を縫ってくるか?!)

「フンッ!」

「おぉお!やるじゃねぇか!」


 俺は防戦一方となりつつある状況ながらも、要所で木剣を撃ち込むように反撃していった。

 <五感操作(センス・コントロール)>で視力を鋭敏にしているのもあって、回避や防御に徹しつつも、俺はモーゼル隊長の動きを観察していた。

 『戦鬼の大剣』に在籍、いや、それよりずっと前から、向き合う相手や事象に対し、その時にどんな動きや仕草を見せるかを、無意識に観察する癖を持つようになっていった。


「セイッ!」

「ハァアア!」


 俺は掠りながらも、モーゼル隊長の攻めや立ち回り方を見ながら、どうやって動き、対応するべきかを少しずつ掴んでいった。

 振るわれる武器の先端だけでなく、相手の目線や肩の動き、腰や足の動かし方などの起こりを捉えながら、どうにか反応できた。

 そんなやり取りを続けて三分は経った頃だった。


「それまで!」

「「ふぅ……」」


 ソフィア副隊長の一声によって、俺とモーゼル隊長が動きを止めた。

 すると……。


「スゲェエ!」

「あのモーゼル隊長を相手に三分経って持ち堪えた奴なんて、遊軍調査部隊の中ではソフィア副隊長以外で久々に見たぜ!」

「弓の腕前もだけど、近接戦のレベルも滅茶苦茶高いじゃねえか!」

「前々から思ってたけど、リュウトってとんでもない逸材じゃないか?」

「これは……。まぁあ……」


 賛美を交えた歓喜の嵐だった。

 褒めてくれるのは嬉しいけど、ヒートアップのし過ぎで二次被害のような問題を起こすのは避けたいのもあってか、各班の班長や副班長を含めて鎮圧するのだった。


「では、今日はこれで解散する!」

「「「「「ハッ!」」」」」


 こうして、遊軍調査部隊の鍛錬の一日は終わりを迎えるのだった。

 俺もシャワーを浴びた後にゆっくり休もうと思っていた時……。


「リュウト。ちょっとだけ時間いいか?」

「え?はい?」


 俺はモーゼル隊長から呼び止められ、言われるがままに付いていった。

 それからはモーゼル隊長の執務室に入り、真っ正面に立たされる。


「まずは訓練、お疲れさんだな」

「お疲れ様です」

「お前をここに呼んだのにはある話があってな」

「話とは一体?」


 緊張感に包まれる部屋の中で言われたのは……。


「単刀直入に言う。近日に行われるエレミーテ王国騎士団と冒険者ギルドとの合同調査プロジェクトのメンバーの一員として、リュウトにも参加して欲しい!」

「え?」


 後ろめたさの一つも無いようなお願いをするモーゼル隊長を見て、俺は若干の戸惑いを覚えた。


「近日に王都の近くで発見されたダンジョンの調査についてなんだが、その面々の中に、リュウトも加わって欲しいんだ。遊軍調査部隊からは俺やソフィア、各班から選抜された隊員が選んでいる。その中にリュウトもって是非に……」

「は。はぁ……」

「前から聞いていたお前の活躍と先ほどの手合わせを見て、リュウトには加わる資格があると見ている!」


 俺はモーゼル隊長の気迫が込められたような申し出を見つつ、その理由を聞いた俺は少なからぬ迷いを見せてしまった。

 遊軍調査部隊に入って日の浅い俺がこんな話を受けていいのか。

 何より、役に立てるかどうか分からない不安をその場で抱きそうだった。


「どうかその一員として加わって欲しい!リュウトなら力になってくれると信じている!責任は俺がしっかりと持つから、どうか頼む!」


 モーゼル隊長の純粋性しかないような頼みを見て、俺は……。


「分かりました!謹んでお受けいたします!皆様のお役に立てるよう、ベストを尽くします!」

「そうか!お前なら受けると思っていたよ!じゃあ、選抜メンバーは明日にでも公表するから、楽しみにしておいてくれよな!」

「はい!」


 こうして、俺は騎士団に入って初めての大仕事に参加する運びとなった。

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