第15話 遊軍調査部隊の隊長
リュウトが所属する部隊のトップが初登場します!
休養日を終えた出勤日———
「おはようございます!」
「「「「「おはようございます!」」」」」
俺が出勤すると、同じ班の面々が挨拶をしてくれた。
「リュウト、先日の城下町以来だね」
「はい。あの時は鉢合わせるなんて思いませんでしたから」
先日、非番だった俺は王都の城下町を散策していた時にソフィア副隊長とアンリ、シーナさんとたまたま出くわした。
まあ、その時に過ごせたのは有意義な一時であったのに間違いはない。
そう思っている時だった。
「おはよう。皆、戻って来たぞ!」
「「「「「おはようございます!」」」」」
少しの世間話をしている時、一人の男性の声が響いた。
そのすぐ斜め後ろにはソフィア副隊長もおり、その姿を見るや否や、隊員全員が最敬礼のような角度でお辞儀をしている。
俺も釣られてしまった。
「シーナさん、あの方は?」
「ああ、リュウトは実際に見るのは初めてかもね。あの人は……」
その男性は黒に近いような茶色の短髪でいながらも、精悍さの中に爽やかさを両立させたような、歳は取っていながらもまだまだ若さを含めたフレキシブルな印象を感じさせる逞しい男性と思わせるには充分だった。
「先日まで、騎士団の本隊と一緒に遠征でしばらくの間だけ空けていたのよ。あの人がエレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊の隊長である、モーゼル・フィザライド隊長よ」
「あの方が……遊軍調査部隊のトップ?」
シーナさんの説明を聞いて、俺は驚いた。
俺が遊軍調査部隊に入った時に隊で特に偉い人物なのはソフィア副隊長だったため、部隊のトップとはまだ面識がなかった。
その人物が不意打ちのように職場に現れただけあって、俺は驚くしかなかった。
「「「「「隊長!おはようございます!」」」」」
「おう!元気にやっているな!変わらずに元気な姿を見せてくれて、俺も嬉しいぞ!ハァハッハッハッハ!」
何だろう?ソフィア副隊長がクールでしっかり者なイメージが強いだけに、言い方は我ながら難儀であるものの、モーゼル隊長はアバウトではと思った。
「モーゼル隊長が遠征から帰ってきて以来の朝礼を始める!」
「よし!始めよう!」
それからは今日のやるべきことの確認に焦点を置いた朝礼が行われた。
朝礼そのものは滞りなく、つつがなく行われたものの……。
「よし!いつものように基本のルーティンを抑えながらも、メリハリをつけて業務に取り組むように!」
「「「「「ハイ!」」」」」
こうして、いつもの朝礼は終わったものの、心なしか、隊員たちの顔色がいつも以上に活き活きとしているようにも見えた。
ソフィア副隊長が仕切っている時は仕事人として当然のようなスタンスで終わらせているような隊員も多かっただけにだ。
その後、ソフィア副隊長が俺たちの下に歩いてきた。
「失礼するぞ」
「は、はい……」
「ソフィア副隊長?」
「何か?」
「ゾルダー、シーナ。リュウトを借りてもいいか?」
「問題ありませんよ」
「大丈夫ですけど、ソフィア副隊長。何を?」
「リュウト、隊長がお呼びだ。すぐに来てもらえないか?」
「は、はい」
俺はソフィア副隊長に流されるまま付いていくのだった。
なるほど、この後どうなるのかが分かったぞ。
◇—————
「ソフィアです。先ほど申し上げた隊員を連れて参りました」
「通せ」
「失礼します」
「し、失礼します」
俺はモーゼル隊長から入室の許可を得ると、ソフィア副隊長に続く形で部屋に入っていく。
遊軍調査部隊の隊長が使う部屋なだけあって、執務机や椅子、応接セットは一流の職人が作ったのが一目で分かるくらいに立派であり、清潔感も抜群だった。
モーゼル隊長が不在の時も、部下が定期的に清掃していたのだろう。
「おぉお!よく来てくれたな!リュウト!」
「いえ、こちらこそ……」
「こうして会うのは初めてだな。俺がエレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊の隊長を務めるモーゼル・フィザライドだ。ジョブは武術家。よろしくな!」
「初めまして!リュウト・ドルキオスと申します!入隊して日も浅い身であることを承知しておりますが、どうぞよろしくお願い申し上げます!」
初対面なのもあって、俺の背筋も自然と伸びる。
モーゼル隊長のジョブである武術家はその名の通り、体術や格闘能力を中心にして戦うジョブであり、剣士や戦士と比べると軽装備になりがちなものの、その分フットワークに優れており、達人クラスともなれば、武器や防具無しでも強力な魔物すら討伐できてしまうほどだ。
遊軍調査部隊に所属している隊員の半分くらいのジョブはレンジャーやシーフであるが、中にはモーゼル隊長と同じようにジョブが武術家の隊員もいるし、戦士もいる。
まあ、仕事の幅が広い部隊だからね。
「そんなに固くならなくてもいいさ!」
「は、はい……」
こうして見ると、モーゼル隊長は部隊のトップでいながらも、明朗快活な人柄をしているのが分かる。
凛とした雰囲気を感じさせるソフィア副隊長とは対極と言ってもいいな。
「ソフィアからいろいろ聞いたんだが、俺が騎士団本隊と遠征に行っている間に入ったんだってな?確か、前職は冒険者だったっけか?」
「はい。間違いありません」
「そうかい」
「それで駆け出しの頃から……」
俺はモーゼル隊長と腹を割って話すことにした。
十五歳から冒険者稼業を始めたこと、最近まで所属していた『戦鬼の大剣』に在籍してから脱退するまでの経緯、脱退してからエレミーテ王国騎士団の遊軍調査部隊に入隊して現在に至るまでのことを……。
「と言うわけなんですよ」
「なるほどな……。確かにジョブがレンジャーのリュウトだったらウチの部隊に入ったのは正解かもな。冒険者時代の知識や経験をそのまま活かしやすいのは間違いないぜ。実際に仕事面においても早速活躍したんだろ?」
「はい。報告書にもありました通り、例の王都近くで発見された新ダンジョンを発見したのはリュウトであり、戦闘能力も申し分なかったとゾルダーやシーナからも伺っております」
一通り話すと、モーゼル隊長は俺の決断を正解のように褒めてくれた。
ソフィア副隊長から先のダンジョン発見に貢献した件についても伝えた。
「いえいえ、私なんてまだまだですよ。冒険者としてはそれなりのキャリアを積んできましたけど、騎士団の一員としては駆け出しですからね」
「ははっ!結成して五年目でAランクまで登り詰めた男がまだまだですとは、謙虚なもんだぜ!会ってビックリ!かつては冒険者だったと思えねえくらいにしっかりした奴だぜ!」
(まあ、その姿勢は大事だけどな)
謙遜する俺を見たモーゼル隊長はまたも称え、ソフィア副隊長も「本当にそれ」みたいな仕草で頷く。
基本的に冒険者は自由とロマンを求める者が非常に多く、それだけに無粋な人物も多いのは事実だ。
最近まで所属していた『戦鬼の大剣』のリーダー格であったガルドスとかもその一人だ。
それだけにモーゼル隊長やソフィア副隊長から見れば、入隊当初から礼儀正しい振る舞いができているだろう俺は立派に映るのだろう。
「まあ、何にしても同じ遊軍調査部隊の仲間なんだ。これからよろしく頼むぜ!リュウト!」
「はい!よろしくお願い申し上げます!」
モーゼル隊長の差し出した手を取り、しっかりと握手を交わす俺なのであった。
「時間を取らせてすまなかったな。仕事に戻りなさい」
「はい!失礼します!」
ソフィア副隊長の指示で俺は仕事に戻り、部屋から出て行くのだった。
「リュウト・ドルキオスか……。面白い奴を入隊させたな、ソフィア」
「はい。少なくとも私は来てくれて……採用して良かったと思っておりますよ」
「違いねえ。それに、入隊してすぐにそれなりの活躍や実力を見せてくれてんなら、あのプロジェクトのメンバーにも選ばれるだろうな」
「まだ入隊して日は浅いですけど、可能性はあるかと……」
「だな。あいつのポテンシャルなら、不可能とは思わねぇがな」
モーゼル隊長は机の引き出しにしまわれている十枚程度の束ねられた書類を取り出しながら呟き、それに目をやっていた。
その書類のタイトルにはこう記されていた。
『エレミーテ王国騎士団と冒険者ギルドとの合同調査プロジェクト(仮)』……と。
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