第14話 【Sideリリナ】不満、時おり懸念
『戦鬼の大剣』の僧侶であるリリナ視点のお話です。
「ふぅ……。何だか疲れちゃったな」
私の名前はリリナ・エスタル。
ジョブは回復魔法や補助魔法によるサポートを得意としている僧侶であり、Aランクパーティ『戦鬼の大剣』の一員だ。
スティリアにあるパーティハウスでシャワーを浴び終えた私はワンピースタイプの寝間着に着替えた後、自室のベッドに一人座り込んでいる。
「今日のガルドス。かなり飲んでいたな。シェリーの加入がよっぽど嬉しかったのかな?」
数時間前まで、パーティリーダーのガルドス、同メンバーのビーゴルとアキリラ、そして、新たに加入したシェリーと言う女性レンジャーと食事をしていた。
ガルドスはシェリーを随分と気に入ったようであり、その時の会話も彼が中心になっていた。
だけど、私は一つのモヤモヤとした気持ちを抱えている。
「……。リュウト」
私は机の上に飾っているメンバーたちが全員揃っている写真を見やりながら、リュウトの名前を呟く。
「今頃どうしているのかな?」
リュウトこと、リュウト・ドルキオスはシェリーが加入する前に『戦鬼の大剣』に所属していたレンジャーであり、私と同じタイミングで冒険者になってパーティに加入した、いわゆる同期だ。
だけど、リュウトは数週間前、方向性の違いが原因で脱退してしまった。
その時は私もいたんだけど、最終的にリュウトの脱退を容認した。
いや、してしまったんだ。ある理由のために……。
「リュウトのことだから、どこか新しいパーティに入ってると思うんだよね。そこで気持ちを新たに頑張っているんだったら、それでいいんだけどな」
そんなことを呟いていた時、扉からコンコンとノック音がした。
「はい?」
「アキリラよ。ちょっといいかしら?」
「どうぞ」
私が入室の許可をした後に部屋へ入ってきたのは紺色を基調にした薄手の上着とネグリジェに身を包んだアキリラだった。
「どうしたの?」
「……ガルドスとシェリーについて話がある」
そう言うアキリラの表情は険しかった。
私はアキリラと一緒に自分が寝るベッドの上に座った。
「リリナ。最近のガルドスってどう思う?」
「どうって?ここのところの彼の振る舞いとか?」
「それもあるわね。何より、リュウトが抜けてから入ってきたシェリーが加入して以降のガルドスの彼女への扱いね」
「あ~。なるほど」
アキリラの意見に対し、私は同感の気持ちを抱いた。
リュウトが脱退してからは後任として迎え入れたレンジャーやシーフが加入したものの、数日でパーティを抜けている。
そのサイクルが三回は続いた。
度重なる失敗でBランクに降格してしまう危機に瀕する中でシェリーがパーティに加入し、彼女の有能さもあって、そこからはAランクパーティとしての体裁をどうにか保てるようになった。
「だけど、シェリーのレンジャーとしての技量は確かだし、斥候役としても優秀だって思うんだよね。戦闘以外の仕事も丁寧だし」
「それだけならあたしは何も言う気はないのよ。問題はシェリーが加入した後のあたしたちへの扱いの差よ!あんたも覚えはあるでしょ!」
アキリラの言う通り、シェリーが加入してからはパーティ内の雰囲気は少しずつ、確実に変わっていった。
依頼成功の報酬の分け前も、ガルドスから「お前は今回大した働きをしてないからこのくらいな」とそれっぽい理由を付けては私の分だけ少なくした上にシェリーの取り分を増やす、アキリラやビーゴルがシェリーを注意している時にガルドスが割って入っては彼女を擁護するばかりか、私たちに責任を押し付けるような場面が何度かあった。
当のガルドスも「シェリーはちゃんとやってるんだ。このくらい大目に見てやれ」と言うセリフもここ最近ではよく口にしていたな。
戦闘以外の雑務もガルドスとシェリーは最小限に済ませといて、ビーゴルやアキリラ、特に私へその負担がのしかかった。
要するに、ガルドスがシェリーを様々な場面で肩を持ったり、甘やかし始めたことによるパーティ内のカーストのような形式が作られつつあるのだ。
「ガルドスったら、すっかりあの美貌にやられちゃって!情けないわね!」
アキリラのフラストレーションは中々に溜まっているようだった。
自分で思うのも妙な話だけど、シェリーは女性の私から見てもかなりの美人だ。
顔立ちはよく整っているだけでなく、上品さも感じさせる印象をしており、手足はすらりと伸びていながらも出るところは出ていて、引っ込んでいるところは引っ込んでいる黄金比のようなスタイルをしている。
私も冒険者を始めてから今日に至るまで、シェリーのような非常に容姿が整った女性冒険者と出会う機会なんて滅多に無かっただけに……。
アキリラだって端から見ても十分美人だと思うけどね。
「シェリーがいる限り、私たち……ずっとこのままなのかな?」
「ガルドスが襟を正してくれるなら、あたしは文句なしよ。ただ……あの体たらくじゃあね。あいつ女好きな面も強いし!」
「……」
ガルドスとアキリラはビーゴルと3人で『戦鬼の大剣』を起ち上げた時からの仲だ。
私よりもガルドスのことを知っているだろうアキリラがどこか諦めたような表情で言っているならば、改善はあまり期待できないかもしれない。
アキリラ曰く、『戦鬼の大剣』ができてすぐの頃に「もう二人くらい可愛い子が入ったらなぁ」なんて冗談を言っていたり、Cランク時代には美人な売り子に高額な粗悪品を掴まれそうになった時は彼女が必死になって止めたりと世話を焼いていたらしい。
だから、アキリラの不安も分かるし、自分も同じような気持ちを抱いているのも確かである。
それから話し込んで数十分が経過した。
「もうこんな時間か。ごめんねリリナ。押し掛けといて愚痴に付き合わせちゃって」
「いいのよ。おやすみなさい」
「おやすみ、リリナ」
溜まっていた鬱憤を吐き出すことができたのか、アキリラは少しスッキリしたような表情で私の部屋を出て行った。
気がついたら日を跨ぎそうになったので、私も寝ることにした。
「シェリー・ベルローズ……か……」
そう言えば私……シェリーのことをよく知らないな。
◇—————
翌々日、私たちはAランク向けの依頼に出向いている。
「シュッ!」
「ギャアアア!」
「リリナ!アキリラ!」
「フィジカルアップ!」
「サンダーバースト!」
「うぉおおおお!裂空斬!」
「ギシャァアアアア!」
スティリアから馬車で一日の距離にあるダンジョン『ウェスレンダル遺跡跡地』第五階層のフロアボスであるリスクレベルAのアクアコブラと交戦しており、激戦の末に討伐を果たした。
「よっしゃー!」
「ガルドスさん、やりましたね!」
「あぁ!お前のお陰だな!」
「そんな、恐れ多いですよ」
「お前らもよくやったな!」
(((何かおまけみたいな言われ方されてる!)))
シェリーを中心にガルドスからお褒めの言葉をもらったものの、素直に喜べない。
ただ、ダンジョンのトラップ探知や魔物の気配感知もお手の物だし、弓や剣の腕前も高いから、客観的に見てもシェリーのレンジャーとしての技量は本物だった。
冒険者としてだったら一目置いてるんだけどね……。
そんなことを思いながら、素材を解体・回収を終えてギルドへと戻っていくのだった。
その道中……。
「……」
「あら?リリナさん、どうかしました?私の顔に何か?」
「あ、いや、何でも。シェリーってお肌が綺麗だな~って思っただけ!」
「あらま、嬉しいことを言って下さるのですね」
「言われてみるとそうね。どんなケアしてるの?」
「う~ん、そうですね。特別なことは何もしていないのですが、できるだけ水分や栄養を取るように心がけてはいますけどね」
「それだけ?あたしよりも張り艶があると思うんだけど!?」
「恐縮です」
私がシェリーを凝視しているところに彼女に話しかけられるも、咄嗟に他愛のない話に切り替える形で誤魔化した。
そこからアキリラが話に割って入ってきたものの、注意が私から離れたお陰で少しホッとした。
だけど、私はシェリーが仲間になってからたまに思う。いや、時々感じるんだ。シェリーって本当に何者なんだろう?って疑念を消し切れないような、要所で見せる得も知れない怪しい気配を……。
この時に私が抱いていた感覚の正体。少なくともそれは……歓迎できるモノではなかったんだ。
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