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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第三章 魔王軍との戦い、本当の意味での死地へ

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第121話 懐かしき面々

遊軍調査部隊の面々が久しぶりに登場します!

「いやぁ……この間の遠征は中々に大変だったよな~。魔物もそうだが、あの盗賊団の往生際の悪さは骨が折れるぜ」

「本当だよ。いろいろと雑事を請け負う部隊にしても、戦闘以外の仕事までこっちに降ってくるもんだから、面倒ったらありゃしねぇよ」


 エレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊の隊舎の廊下で二人の若い男性隊員が仕事の愚痴を零していた。


「ちょっと話題が変わるけど、最近のアンリ見たか?あの子、入隊したての頃より大分変わったと思わないか?」

「ああ、ソフィア副隊長の妹さんのアンリだろ?第六班の」

「そうそう。最初はどことなく自信なさげで、おどおどした小動物って感じだったのに……最近はなんていうか、快活っていうかさ。若手の中でも、あの子の弓の腕前はちょっと無視できないレベルだ。実力もそうだが、立ち居振る舞いが輝いて見えるんだよな。彼女に注目してる奴、結構多いぜ?」

「ああ、わかる。……そういえば不思議だよな。あの子がメキメキと頭角を現し始めたのって、確か――」


 記憶を掘り起こすように、一人が顎に手を当てる。


「勇者パーティの一員として、リュウトがここを発った前後の時期じゃなかったか?」

「ああ、確かにその時期だ。背中を追う目標でもできたのか、それとも———」

「アンリがどうしたって?」


 耳元で囁かれた、軽やかだが心臓を掴むような低い声。


「いや、最近のアンリは成長著しい気がして、何だか最近――って、えぇえええええええええっ!?」

「リ、リ、リュウトォ!?」


 弾けたように驚く二人の前にいたのは気配を完全に消して接近する俺だった。

 その後ろには、呆れたように肩をすくめるモーゼル隊長と微笑んだ視線を向けるソフィア副隊長の姿もある。


「そんなに驚かなくても、幽霊じゃないですよ。元気そうで何よりです」

「何でリュウトがここに……!?確か、勇者パーティと一緒に北の魔族領へ向かったはずじゃなかったのか!?」

「諸々の理由で一時帰還だ。三日後にはまたエレミーテを離れることになると思うけどな。それから久しぶりに皆の顔が見たくなったんだとよ。勇者パーティとして名を馳せても、中身は相変わらずだぜ」


 モーゼル隊長が説明した。

 二人の隊員はようやく状況を飲み込んだのか、呆然としながらもどこか誇らしげに俺を眺めている。


 久しぶりに嗅ぐ、この泥臭い隊舎の匂い。

 数ヶ月ぶりに帰って来たけど、何年ぶりって感覚になりそうだ。


◇———


 エレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊の隊舎。

 かつて過ごしていた空間を感じると、俺の肩からふっと力が抜けそうになった。

 勇者パーティの一員として魔王軍の幹部たちと死闘を繰り広げてきたあの日々が、まるで遠い昔だったかのように錯覚する。

 だが、その静寂は一瞬で打ち破られた。


「「「「「リュ、リュウトぉおおおおお!?!??」」」」」

「皆様、ご無沙汰しております」


 次の瞬間、視界を埋め尽くしたのは懐かしい顔ぶれたちの驚愕と歓喜が混ざり合った表情を見せる同僚たちだった。

 彼らは椅子を蹴り飛ばさんばかりの勢いで、一斉に俺の元へと駆け寄ってくる。


「お帰り、リュウト。久しぶりだな」

「ご無沙汰しております、リュウトさん!」

「ゾルダー班長、トロン!」


 声を掛けてきたのは俺が配属されている第六班の班長であるゾルダーさんと同僚のトロンだった。

 ゾルダーさんの手が俺の肩を叩き、その重みに「ああ、戻ってきたんだな」という実感がようやく心に落ちてきた。


「驚いたぜ。予告もなしにか。……いや、まずは無事を祝わせてくれ」

「いろいろありまして、一時帰還の許可が出たんです。といっても、三日後にはまたフォーペウロに戻らなきゃいけないんですけどね」

「三日か。……いや、それでもいい。またお前の顔が見られただけでも嬉しく思うよ」

「はい。嬉しいです!」


 ゾルダーさんは穏やかに笑い、トロンが泣きそうになりながら笑う。

 周囲の隊員たちからも冷やかし混じりの歓迎の声が次々と飛んで来る中、俺はこの場にいない二人の顔を思い浮かべる。


「あれ?シーナ副班長とアンリは?」

「ああ、あの二人は王都の巡回だ。そろそろ戻ってくる頃合いなんだが……」


 ゾルダーさんが入り口を振り返った、まさにその時だった。


「ただいま戻りました!」

「……あら?何、この騒ぎ。何かあったの?」


 聞き慣れた、けれどどこか久しぶりに感じる二つの声。

 入り口に立つ彼女たちの視線が俺を捉えた瞬間……。


「……リュウト?」

「リュウト……さん……っ!!」


 同じ第六班の副班長であるシーナさんと同僚のアンリだった。

 俺を見るなり、二人は弾かれたようにこちらへ駆け寄ってきた。


「シーナ副班長!アンリ!」

「リュウト!何よ何よ、いつ戻ったのよ!」

「お帰りなさい、リュウトさん!」


 シーナさんの言葉の裏にある安堵の色とアンリの弾けるような笑顔。

 その二人に挟まれながら、俺はアンリのある変化に目が留まった。


「アンリ、その髪型……」

「あ、気づいてくれましたか?えへへ、イメチェンしてみたんです」


 以前のアンリは肩にかかりそうなくらいの髪の長さたったけど、それが今は鎖骨あたりまで伸びていて、耳から上の髪を後ろでふんわりとお団子状にまとめている。

 そのスタイルは彼女の持つ元気な印象に、どこか大人びた女性らしい柔らかさを加えていた。


「どうですか……?その、変じゃないでしょうか」

「いや、凄く似合ってる。これまでの活発な感じに、大人っぽさが加わったというか。……うん、可愛いよ」

「あ、あ、ありがとうございます……っ!」


 素直な感想を伝えると、アンリの顔が少しだけ赤に染まった。

 俯く彼女をシーナさんがニヤニヤとした目で見守っている。

 そんな賑やかな再会に、モーゼル隊長やソフィア副隊長も加わり、話は盛り上がった。

 俺がこれまでどんな戦いをしてきたのか、そしてどうして一時帰還することになったのか、皆は断片的な報告を聞くたびに感嘆したり、時には肝を冷やしたような表情を見せたりした。


「そうか。最速で三日後には発つのか」

「ええ。いろんな事情はあるんですけど、束の間の休息です」

「でも、あんたがいなくなってから、この隊舎もどこか静かになっちゃってさ……。特に……誰かさんは毎日のようにリュウトの机を眺めては溜息ついてたからね」

「ちょっと、シーナ副班長!変なこと言わないでください!」


 シーナさんの視線が必死に首を振るアンリに向けられる。

 どうやら俺がいない間も皆は仲良く仕事していたらしい。

 その事実に胸の奥が温かくなるのを感じた。


「いいじゃないか、リュウト。明日の夕方から夜、予定はどうだ?」

「え?……特にありませんけど」

「よし、決まりだ!お前の壮行会を兼ねて、派手にやるぞ。断らせねえからな!」


 モーゼル隊長の豪快な仕切りに、隊員たちが一斉に歓声を上げた。

 俺に拒否権は無いのかって思いつつ、本心は嬉しかった。

 この賑やかながら、暖かい空気を感じて思う。


 一時的とは言え、戻って来て良かったなって……。

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