第12話 リュウトの過去
リュウトの過去が明かされます。
———父さん!母さん!嫌だぁああああ!
「ハッ!」
朝日が差し込む直前の早朝、俺はベッドから飛び起きるように目を覚ました。
「はぁあ……はぁあ……。何だ。夢か」
だが、寝覚めはお世辞にも良くなかった。
俺はベッドの脇にある小さなテーブルの上の常温の飲料水が入ったボトルを手に取り、グイッと飲み干した。
エレミーテ王国騎士団の一員になって初めて夢を見た。
俺にとっては一生……それこそ、自分が死ぬまで忘れられないだろう、あの悪夢を……。
◇—————
俺はエレミーテ王国から北東辺りの方角にある小さな町で生を受けた。
王都のエメラフィールと比べれば、規模は半分すらないような程度であったけど、緑が栄え、野菜の栽培や畜産農家も充実している場所だった。
家族は父さんと母さんの二人だけで俺は兄弟のいない一人っ子だったけど、町の大人たちと近所の子供たちとはとても仲が良く、遊ぶ時は夕暮れになっているのを忘れるくらいに夢中になったことも珍しくなかった。
田舎町だったけど、食べ物に困ることはなかった。
父さんと母さんは共にジョブはレンジャーであり、町の農業を取り仕切る存在なのもあって、町内では一目置かれ、頼りになる人たちだった。
そんな両親を見て、俺もジョブはレンジャーが良いって思うのは必然だったかもしれない。
俺が十二歳になった頃、近くの町の教会で適正ジョブを見極める儀式を受けることになった。
適正のジョブはレンジャーだった。
それを知った時、俺は心の底から喜び、父さんも母さんも大変喜んでくれた。
その日から俺は父さんと母さんに師事することを決め、二人は快く引き受けてくれた。
レンジャーとしての知識と知恵、弓術と剣術、ノウハウから心構えまでを叩き込まれた。
厳しくも優しかった。
自主練習だって欠かさずに行ってきた。
ある日、父さんと母さんは俺にこう言ってくれた。
———お前には才能がある。過去の自分を超え続ける努力を怠らなければ、私たちだって超えていけるレンジャーになれる。私はそう信じている。
———リュウト。人との繋がりや絆はお金で買うことはできない、掛け替えのない財産よ。だから、あなたのために泣いてくれる人、叱咤してくれる人、命を懸けてまで共に戦ってくれる人を大切にしなさい。そうすれば、本当の意味で信頼を預けられる仲間ができるから。
父さんが激励の言葉と共に俺の頭を撫でてくれた感覚も、母さんが暖かな笑顔で伝えてくれた人との繋がりを何より大切にすることの意味を教えてくれた言葉は今でも覚えている。
大好きで尊敬する両親に報いたい一心で、俺は鍛錬と勉学に励んでいった。
俺が十三歳になった頃だった。
いつものように山に籠って、弓や剣の腕を磨き、身体を鍛え、日が暮れるまでトレーニングに励んでいた。
母さんがご飯を作って待っているだろうと思い、急ぎ足で帰路に着いている中、暗い夜空の下に異様な赤さを帯びている光景が見えた。
方角は俺の町であり、嫌な予感と落ち着きたくても落ち着けない焦燥感、そして、杞憂であって欲しいと言う願いと共に一目散へ走って行った。
だけど、現実は残酷だった。
俺の目に飛び込んだのは町が容赦なく燃え盛る光景であり、傷つき、倒れている町の人たちだった。
炎の勢いは焦熱地獄のように轟々と広がり、生き残っている人たちの悲鳴が次々と消えていく様相に俺はその場で膝から崩れ落ち、発狂した末、ショックからなのか、その場で意識を落としてしまった。
目が覚めると、俺は隣の町にある治療院のベッドの上にいた。
俺は騒ぎを聞きつけた冒険者や巡回に来ていた騎士によって保護されたことを後で伝えられ、その町に住んでいたことや当時の状況も打ち明けた。
藁にも縋る思いで俺は「生き残っている人はいませんか?私の両親は生きていますか?」とその時に居合わせた冒険者の方に聞いた。
だが、帰って来たのは……。
———残念ながら、命があったのは君だけだった。他の人は全員、死亡していることが確認されている。
一番受け入れたくない答えだった。
「父さん!母さん!嫌だぁああああ!」
それを聞いた俺はその場で人目を憚らずに号泣した。
一夜にして、生まれ育った町も……。仲の良かった町の人たちも……。そして、大好きな両親を喪ってしまったのだから。
その後は助けてくれた冒険者の伝手で住み込みの仕事を紹介してもらい、夫婦が経営する食堂で働く機会をいただけた。
仕事の傍ら、時折、山に赴いては自分の弓術や狩りの技術を活かしては新鮮な動物の肉や山菜を卸してはそれを提供することもあった。
家賃無料で衣食住を提供してくれた恩に報いるためでもあったけどな。
十五歳になった頃、俺はお世話になった夫婦の下を離れ、冒険者登録のため、冒険者ギルドの支部があるスティリアへと向かった。
最初は駆け出しのEランクから始まり、それから少しした後、同じ時期に冒険者登録をした僧侶のリリナと出会った。
冒険者になって半年した頃、当時は結成して日の浅かった冒険者パーティ『戦鬼の大剣』を率いるガルドスたちと出会った。
俺とリリナのジョブがレンジャーや僧侶であることを伝えると……。
———丁度、回復魔法が使えるジョブや感知が得意なジョブを持っている奴を探してたんだよ。どうだ?一緒に冒険しようぜ!俺たちとSランクを目指そうぜ!
ガルドスが差し出した手を俺は取り、リリナもそれに続いた。
そこから俺は『戦鬼の大剣』のレンジャー。リュウト・ドルキオスとして、冒険者人生をスタートさせるのだった。
◇—————
「あれから六年か……」
六年の冒険者生活が長いか短いかで言えば、その道十年以上のベテランから見ればまだまだ青いと思われそうで、駆け出しから見れば大先輩と思われるだろう。
少なくとも、駆け出しの頃は一緒に冒険して、難しい依頼を達成して高い報酬を得た時には朝まで夢やロマンを語りながら飲み明かして、少しの失敗も反省しては成長に繋げていけた時は楽しかった。
だけど、ランクが上がっていくにつれてガルドスを筆頭にビーゴルとアキリラも増長していっては俺への当たりも強くなってしまった。
Sランクが視野に入りそうになった時は人助けよりも実績に繋がる依頼ばかりを引き受けるようになり、困っている人の力になりたい想いがある俺と目立つことを優先したがるガルドスとの関係が悪くなっていった。
隔絶した溝が広がっていたことを悟り、ガルドスとの関係を断つ決意を固めてしまった。
初めて、母さんの教えに自ら背いてしまったみたいで、申し訳ないな。
それでも、今の俺はエレミーテ王国騎士団の遊軍調査部隊の一員だ。
国や民衆の安全、騎士団の仲間を守るために行動していくことが今の俺の仕事なんだ。
誰かの力になれるようにと願いながら、俺は隊服に身を包んで出勤するのだった。
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