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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第三章 魔王軍との戦い、本当の意味での死地へ

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第116話 一つの区切り

一応の区切りが着きます!

 魔王軍の幹部であるシェリーとメルミネ、魔族と魔物の連合との戦いから数時間後。


「重傷者を治療院へ運べ!急げ!」

「こっちも手が足りない、誰か手伝ってくれ!」

「物資の集積場を確保しろ!修繕用の資材が最優先だ!」


 魔王軍の脅威が去った直後、王都バアゼルホは勝利の余韻に浸る暇もなく、焦燥と活気が入り混じった喧騒に包まれていた。

 建物、とくにバアゼルホにある大聖堂には激戦の爪痕が深く刻まれ、崩れた外壁の隙間からは、消え残った煙が今も細く立ち昇っている。

 だが、立ち込める空気は決して絶望一色ではなかった。

 崩壊しかけた体制を立て直し、街を再生させようとする人々のがむしゃらな熱気がそこにはあった。


「思った以上に復興の動き出しが早いな」

「爆破テロのような類じゃなかったのと、直前で軍勢を食い止めることができたのもあるけどね」


 街の状況を見渡しながら、復興作業を手伝っている俺とシャーロットは呟いた。

 騎士や従者を操っていた張本人であるシェリーを討ったことで、正気を取り戻した。

 機能不全と化していた指揮系統が正常を取り戻すと、驚くべき速度で元に戻ろうとしている。

 俺たちも手伝っているのもあるんだけどね。


「そう言えば、メリスはどうした?さっきから姿が見えないんだけど?」

「彼女ならレイニース様たちの方を手伝いに行ってる。動けない聖女様たちの穴埋めに駆り出されてる」

「容体は?」

「命に別状はないらしいが、安静とのことだ」


 壊れた資材を積んだ荷車を引っ張っているジャードが質問すると、俺が答えた。

 四聖女の内のアイラ様、カトレア様、フローラ様は敵の卑劣な策謀に嵌まり、利用され、心身ともに深い傷を負った彼女たちは騎士団の厳重な護衛のもと、しっかりと休息を取ることになった。

 俺と行動を共にしていたメリスはレイニース様と一緒に弱まった結界を補強するためのフォローに回っている。

 普段ならばフォーペウロの四聖女がその役割を担っているものの、彼女達は療養中につき動くことができないため、いわば緊急の措置のようなモノだ。


「メリスもよくやるわね。まぁ、彼女らしいと言えば、彼女らしいんだけど……」

「それは確かにな」


 ロリエの言う通り、メリスはパーティの中でも本当に人が良い。

 彼女はこのパーティにおける良心そのものだ。

 聖女としての才能はもちろん、その気になれば、もっと高い場所から人々を導くことだってできるはずなのに、決して己の立場に胡坐をかかない。

 どれほどの実績を積み上げようとも、傲慢さとは無縁な場所でただひたすらに謙虚にして誠実であり続けている。


「働き過ぎて倒れないかが心配になりそうだよ」

「同感ね」


 その献身的な優しさと芯の通った強さを俺たちは嫌というほど知っている。

 出会う人々が皆、一瞬で彼女を好ましく思うのも、その笑顔の裏に見える偽りのない慈しみを感じ取るからだろう。


「悪いことしちまったかもな……」

「リュウト?」

「いや、何でもない。さぁて、俺たちも作業を手伝おう」

「……っ?」


 俺は取り繕うように振舞いながら、復興作業に勤しむ人たちを手伝いにいった。

 シェリーとやり合った俺は完全な不意打ちとは言え、メリスを傷つけてしまった。

 だからこそ、今回の戦いにおいては反省すべき点も多いと受け止め、改善していく必要がある。

 そして俺自身、今よりも更に強くなろうって再び決心するのだった。


◇———


 バアゼルホの街に漂っていた硝煙と喧騒がようやく落ち着きを見せたる夜


「ふぅ……。まさか、王宮の客間にまた泊めてもらえるなんてな」


 俺たちはフォーペウロの女王陛下であるエリザナ様から直々の招きに預かっていた。

 今回の魔王軍幹部による襲撃を食い止めた功績として、そのお礼を兼ねて王宮内にある客間で泊まることを許されたのだ。


「まぁ、突然の出来事だったからな。それに、俺たちの方もいろんなモノを損耗しちまったから、体制を整えるチャンスができたと思えばいいか」


 ふかふかのベッドに身を沈めると、これまで張り詰めていた緊張が指先からじわりと解けていくのが分かった。  

 エリザナ様からは「準備が整うまで、客として遠慮なく使ってほしい」という言葉をいただいている。

 実際、今の俺たちには少しの休息はもちろんだが、それ以上に立て直しの時間が必要だった。


「シェリーとの戦いで俺も弓矢とかを消費したからな。……特にジャード、あの盾を失ったのは痛いだろうな」


 パーティのタンクを担うジャードは長年愛用してきたという盾は今回の激戦に耐えかねて修復不能なほどにボロボロとなってしまった。

 前衛の要である彼にとって、盾を失うことは命を預ける相棒を失うに等しい。

 新しい武具の選定と慣らしにはそれなりの時間がかかるはずだ。


「……しかし、あの女王陛下の沈痛な顔。国の重鎮が知らず知らずのうちに殺されていたなんてな」


 エリザナ様から驚くべき事実を聞かされた。

 フォーペウロの政治における重鎮であるゲータス宰相の暗殺だ。

 第一発見者の証言によれば、バアゼルホが襲撃された時とほぼ同じタイミングで殺されたとのことだ。

 状況から見て、バアゼルホにシェリーが現れたのとほぼ同時刻であり、その脳天と心臓を正確に貫いていたのは聞かされた状況から考えて、彼女の仕業に間違いないだろう。


「シェリー・ベルローズ……か……」


 国を支える宰相や結界を覆う要の聖女たちを混乱に乗じて亡き者にする。

 それが彼女に与えられた本当の任務だったのかもしれない。

 宰相の葬儀は後日、事態が完全に沈静化した後に女王陛下主導でしめやかに執り行われるらしい。

 それでもって、俺にとっては怨敵であり、かつての仲間の人生を狂わせた因縁の相手であるシェリーとの決着をつけたことで、心の中の何かにようやく区切りがついたような虚脱感があった。

 いつかエレミーテ王国に戻る日が来たら、リリナたちにこのことを報告しよう。

 そう決めた時だった。


「リュウトさん……」

「ん……?この声」


 控えめな、けれど確かな意志を持ったノックの音と声が静まり返った部屋に響いた。

 扉を開けると、寝間着姿のメリスが立っていた。


「メリス?」

「申し訳ございません、お疲れのところを押し掛けてしまいまして」

「それはいいんだけど、どうした?何かあったのか?」


 聖女としての凛とした佇まいはそのままに、けれど、どこか言葉を迷うような気恥ずかしそうな仕草だ。


「リュウトさん。あの……少しお話ししておきたいことがあります。よろしいでしょうか?」

「構わないよ。立ち話もあれだから中に入ってくれ」

「失礼します」


 俺は彼女を部屋に招き入れた。

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