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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第三章

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第109話 人間と魔族の間に生まれた女

シェリーの半生について描いております。

 シェリー・ベルローズ。

 この女は物心ついた時から、いや、彼女が産声を上げたその瞬間に運命という名のレールに敷かれていたのかもしれない。

 なぜなら、シェリーに流れる血筋があまりにも特殊であったからだ


 魔族領と人間領の境目に辺りに位置するその寒村、魔族の父と人間の母の間に彼女は生まれた。

 父は魔族としてはあまりに異端な男だった。

 魔族でありながら、力を振るうよりも自然や平和を好み、世界を支配することよりも、愛する妻と娘のことを誰よりも愛する男だった。


———人間と魔族は、きっと手を取り合える。言葉が通じるのだから、心だって通じ合うはずだ

 

 それが父の口癖であり、願いだった。


 しかし、魔族である父親は世界を滅ぼそうとする意志や人類を傷つけるつもりは毛頭無くとも、存在を恐れた者たちから爪弾きにされては住まいを転々としていく生活を送らざるを得なくなった。

 人類と魔族は敵同士という抗えぬ宿命に縛られながら、シェリーは親子三人で生きていることに幸せを感じていた。

 それでも、両親は魔族が人類と手を取り合える道を模索し続けていた。


 シェリーが十歳を迎えた頃、現実は祈りよりも早く、残酷な現実となって彼らを襲った。

 冷たい雨の降る日、住まう家を囲んだのは、慈悲の心など微塵も持ち合わせない強欲な領主の私兵だった。


「魔族の種を宿した売女め!」

「人類の敵を匿う大罪、万死をもって償え!」

「見せしめにするのだ!」


 罵声が雨音をかき消す。

 シェリーの目の前で父は抵抗しなかった。

 自分が反撃すれば、妻と娘がより過酷な目に遭うと悟っていたからだ。

 父は石を投げられ、肉が爆ぜるまで鞭で打たれ、最後には地獄に誘うような業火で炙られた。

 母もまた、父の傍を離れようとはしなかった。

 泥を啜り、髪を引きずり回されながらも、いついかなる時でも父の手を握りしめ、人類と魔族の融和を訴え続けた。

 苛烈な拷問の末、両親の死に際に残ったのは深い哀れみだった。

 運よく、辛うじて逃げ延びたシェリーは走り続けた。

 もう追手が来ないことは分かりつつ、肺が焼け付くような痛みを感じ、足の爪が剥がれて血が滲んでいた。

 気が付けば、シェリーは死の匂いが漂う魔族領へと足を踏み入れていた。

 身寄りもなく、まだ幼い彼女がその地へ入り込むのは自殺行為同然だった。

 だが、同時に運命を変える出来事に遭遇する瞬間でもあった。 そこで彼女を待っていたのは、玉座に君臨する魔王軍の頂点、リザエラだった。


———人類は全て敵だ。我と共に世界を支配してみないか?


 手を差し伸べたのは魔族の頂点にして魔王リザエラ。

 天涯孤独となり、生きるのに必死だった当時のシェリーに迷いはなかった。

 彼女はその手を救いの神の御手であるかのように、あるいは破滅への招待状であると知りながら、強く握りしめた。

 魔王の庇護下でシェリーの生活が始まった。

 元より備わっていた魔族の魔力と人間の狡知の下、彼女が習得したのは直接的な破壊の魔法ではなく、人の心を惑わし、姿を変え、真実を霧の中に隠蔽する擬態と異性を惑わす誘惑。

 彼女は美しく成長した。


 そんな中で彼女はこんな考えを抱くようになった。


 両親が命を懸けて信じた融和という幻想は本当にただの夢物語だったのか?


「確かめてくるといい。答えはその時に出るだろう」


 リザエラは冷笑を浮かべて彼女を放逐した。 シェリーはスキルや魔道具で己の魔族の血を封印し、徹底的にその身分をごまかし、一人の若き女冒険者として人間が住まう舞台へと舞い戻った。

 数年間にわたる放浪の末、彼女が行き着いた結論。


 人類にだって、魔族と変わらない者が星の数ほどいることを……。


 ある者は窮地に陥るや否や、昨日まで背中を預け合っていた仲間を魔物の餌食にして逃げ出した。

 またある者はシェリーの美貌を目当てに守るふりをしてその身体を弄ぼうと薄汚い欲望を剥き出しにした。

 そのまたある者は己の私利私欲のために無実の人間を殺めた。


 人類と魔族が敵対し続ける宿命はどんなに努力しても変えられないとシェリーが決定付けるには充分だった。


 種族を超えた愛や友情なんてない……と。


「……ああ、そうか」


 種族を超えた愛?絆?

 そんなものは弱者が縋るための、あるいは強者が弱者を騙すための質の悪い冗談に過ぎない。

 何に生まれても、持ってしまった血がそうさせるならば、結局は同じだ。

 身勝手?人間も魔族も本質は何一つ変わらない。

 結局同じならば、魔族が世界を支配したっていいじゃないか。


 その過程でシェリーは内に秘めていった負の感情や人類への諦観をひた隠しにしながら、関わった人間たちを次々と始末していった。

 不慮の事故を装い、魔物の仕業に見せかけ、時には仲間同士の疑心暗鬼を煽って殺し合わせた。

 全ては己の心のままに……。

 魔王軍に本格的に身を置く決意をしたシェリーは力を求め続け、幹部の一人にまで駆け上がるのだった。

 そして、決意を固め、呪詛を吐き出す。


 こんな世界……。滅茶苦茶にしてやる……。

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