第108話 【Sideシャーロット】戦慄のメルミネ
久々のシャーロット視点のお話です!
要塞都市フォーペウロの北方に広がる荒野。
そこは今、鉄と魔法が火花を散らす戦場へと変貌していた。
「ハァアア!」
「フゥウン!」
「「ギャァアアアアア!」」
「ガァアアア!」
「「うわぁあああ!」」
「トライデントサンダー!」
「「ゲバァアアア!」」
魔族や魔物の軍勢を相手取る私やロリエ、ジャードに騎士団を混ぜた連合。
押し寄せる魔王軍をどうにか押し返していた。
一見すれば、戦況は私たちに傾いているように見えるけど、その期待はすぐに良くない方へ反転する。
「……あーあ。ちょっと、もう少し頑張りなさいよ。使えない連中ね」
戦場に似つかわしくない、退屈そうな、それでいて心臓を撫でるような湿った声を響かせたのは魔王軍幹部の一角であるメルミネ。
彼女が手にした赤黒くも、血管が浮き出たような太い鞭に禍々しい魔力を宿らせたその鞭を味方であるはずの魔族や魔物たちの背に無慈悲に振り下ろした。
その時だった。
「「「「「ガァ、アアアアア……ッ!?」」」」」
死に体だったはずの魔族や魔物たちが内側からみるみるうちに筋肉が隆起していった。
瞳は濁った赤に染まり、口端からはどろりとした涎が溢れ出す。
ドーピングってモノだ。
「なっ……!?」
立ち上がった彼らから放たれる気配は、先ほどまでとは別物だった。
第一陣として戦っていた連中とは比較にならない、生物としての限界を無理やり抉り出したような凶悪な底力。
「アハハ!それくらい頑張ってもらわないと、わざわざあたしが出向いた甲斐がないじゃない!ほらほら、行きなさいって!」
「「「「「ゴォアアアアオォッ!!」」」」」
メルミネの嘲笑に近い罵声が響く。
鞭が振るわれる度、突き動かされるように、魔物の軍勢が再び突進を開始した。
それはまるで、理性をかなぐり捨てたような死を恐れぬ特攻だ。
「「「「「うわぁあああッ!?」」」」」
最前線の騎士たちが、文字通り紙屑のように吹き飛ばされる。
ドーピングされた自身の肉体がこの後どうなるのかも構わず、戦場を蹂躙していく。
メルミネ自身もまた、その長い鞭をしならせながら最前線へと躍り出た。
「これでも喰らってなさい!」
一振りだけで、前線に立っている騎士数名が血飛沫を上げながら宙を舞う。
「ハァアアッ!」
そこへ私は地面を蹴り、エクスカリバーを握り締めて、メルミネに向かって切り掛かる。
だが、その斬撃は堅くもしなやかな鞭の腹で受け止められてしまう。
「あなた何をしたの!?」
「あははっ!ただの激励よ。連れてきた魔族や魔物たちの能力をちょっとだけ底上げさせてあげたのよ。この魔鞭でね!」
メルミネは手首の返しだけで鞭をしならせ、私を強引に引き離す。
一定の距離を保った私は、彼女の手に握られた不吉な得物へと視線を送った。
知性を持つ魔族さえも、文字通り家畜のように服従させ、その潜在能力を無理やり引き出す。
並大抵の出来事ではない。
「魔鞭……。それも魔王軍が生み出した武具の一つなの?」
「そうよ。あたしの魔力をしっかり込めたこの鞭を浴びせれば、受けた側は能力が跳ね上がり、おまけに痛覚すら麻痺させる恩恵も与えるのよ。見てよ、あの姿を」
メルミネが指差した方角へ顔を向けると、言っていた通り、身体を斬られても尚、笑いながら騎士の首を絞め上げる魔族の姿があった。
ジャードやロリエが懸命に対処しているが、周囲の騎士たちは完全に気圧され、防戦一方に追い込まれている。
「凄いでしょ?あたしの言うことは何でも聞いてくれるし、死ぬまで戦い続けてくれる。最高の駒だよねぇ!」
(まあ、効果が永遠に続くわけじゃないのが難点だけど、別に構わないけどね。あの魔物たちの肉体はじきに負荷に耐えきれず自壊するはずだしさ……)
彼女は勝ち誇ったように笑う。
その瞳の奥には引き連れてた魔族や魔物の命を駒としか見ていないだろう、得も知れない狂気が宿っていた。
状況はまるで芳しくないけど、私のやるべきことは変わらない。
戦いの元凶をこの場で断つのみ。
「だったら……速攻であなたを斃すだけよ!」
私はエクスカリバーを青眼に構え直す。
「威勢がいいわねぇ。ああ、そうだ。言い忘れてたけど、この魔鞭は第三者に強化を施すのは本当なんだけどねぇ……」
メルミネが魔鞭にどす黒い魔力を込め始める。
彼女はその先端で自身の胸元をトントンと愛おしげに叩いた。
「自分にも使えるんだよね。……あたしは強い。あたしは最強。あたしは誰よりも……ッ!」
すると……。
「魔力が膨れ上がっていく……!?」
「最近ようやくできるようになったのよ!あはははははっ!力が滾る、世界が透けて見えそう!自分で自分を調教して、強くしてくれるこの感覚!最高だわ!」
メルミネの足元から、強烈な勢いで魔力が噴き上がった。
それはもはや、物理的な衝撃波となって周囲の石を砕き、土を巻き上げ、異様なまでのプレッシャー帯びたようなオーラが大気そのものを重く変質させていく。
その皮膚の下を黒い紋様が血管のように這い回る。
その表情は恍惚と殺意が入り混じり、見る者の正気を奪いそうになるほどに悍ましい。
「あたしがあんたをここで仕留めてしまえば、この戦いの天秤がこちらに傾くのは明白。さあ、あたしの輝かしい栄光の糧になりなさい!勇者様ッ!!」
大地すらも抉り取らんばかりに狂乱の魔鞭を振るうメルミネだった。
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