第11話 リュウトの休日
社会人の休日って貴重ですよね~!
「おお~!やっぱり王都の城下町は賑やかだな」
エレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊の一員となって二週間が過ぎようとした。
基本的にやるべき仕事を覚えていき、部隊にも馴染みつつある中、俺は王都エメラフィールの城下町まで足を運んでいる。
今日は非番だからだ。
遊軍調査部隊にも休日は設けられており、俺が所属する第六班を含む複数の班でローテーションを組みながら仕事を回しつつ、交代で休みを取るようなシステムとなっている。
まあ、緊急事態になったらそんな暇も無くなってしまうけど、それはそれで仕方ないと割り切っている。
「そう言えば、王都の城下町で休みを取るのはしばらくぶりになるな」
俺がAランクパーティ『戦鬼の大剣』に所属していた頃、依頼を受ける際、王都にある宿屋に数日滞在しては城下町に繰り出したことが何回かあったな。
アキリラからは荷物持ちをさせられたり、ガルドスやビーゴルとは食べ歩きに連れ回されたり、リリナとはほのぼのと買い物したりで思い出が蘇ってくる。
けど、今の俺は冒険者ではない。
簡単に忘れることはできないけど、新しい環境で仕事をする自分になろうと改めて決めるのだった。
「おっ。新しいお店ができてる」
城下町は多くの人で賑わっており、出店の数々からは食欲をそそるような香りがあちこちから漂ってくる。
この空気感は久々だな。
武器屋やアイテムショップを始めとするお店の数々を散策している時だった。
「あれ?リュウトさん!」
「ん?」
俺に話しかけてくる一人の女性の声がしたものの、それには聞き覚えがある。
「やっぱりリュウトさんだ!」
「アンリ!それに、シーナさん……ってソフィア副隊長も!?」
その相手は俺と同じ第六班に所属している隊員の一人であるアンリだった。
加えて、第六班の副班長であるシーナさんもおり、更にはアンリの姉でもあるソフィア副隊長もいる。
「奇遇ね。もしかしてリュウトもお買い物?」
「まあ、そんなところですかね。ソフィア副隊長も今日は休日でしょうか?」
「ええ。私だって休日は取ることもあるわよ」
「ですよね」
王都の城下町はかなり広いけど、まさか鉢合わせるとは思いもしなかった。
ソフィア副隊長も休暇が取れたのもあって、アンリと一緒に買い物に出掛けていたところでシーナさんと偶然出くわし、そこから行動を共にしていたことを教えられた。
「ねえ。せっかくだから一緒に散策しない?」
「いいですね!」
「え?」
シーナさんとアンリが一緒に買い物しようと提案され、俺は一瞬だけ動揺した。
思わずソフィア副隊長に視線をやると……。
「私も賛成だ。せっかくの機会だしな」
「よろしいのでしょうか?」
「構わないよ。それに、今日は休養日だからな。仕事以外では副隊長をつけて呼ばなくていいぞ。リュウト」
「では……ソフィアさん」
「よろしい」
成り行きではあるが、俺はアンリとシーナさん、ソフィア副隊長と一緒に城下町でお買い物をする事になった。
それからは露店で売られている肉の串焼きやデザートを食べ歩いて、服屋に入ってはシーナさんがコーディネートしてくれて、アンリやソフィア副隊長からは「どれが良いかな?」と洋服を選ばせられたりしたけど、楽しかった。
女性三人に男の俺が混じって大丈夫かと思いもしたが、全員が受け入れてくれた。
昼下がりになった頃、俺たちはオシャレなカフェで昼食を取る事になった。
「う~ん。美味しい!このケーキ」
「美味しそうに食べるな」
「美味しい物を美味しいと言うのは当然のことです!」
「それね!」
美味しいパスタやサラダを食べた後にデザートのフルーツタルトをいただいたが、これまた絶品だった。
その証拠にアンリとシーナさんが至福の一時と言わんばかりの表情となっている。
俺とソフィア副隊長は達観しながらその様子を見ている。
「……」
俺もそうだが、今のソフィアさんやアンリ、シーナさんは私服姿だ。
ソフィアさんは紺色の薄手のシャツにふわりとした素材のロングスカートにカーディガンを羽織った清楚さを重視した装いであり、仕事の時はシニヨンに纏めた髪も降ろしているだけに、新鮮さを感じる。
アンリは水色を基調にしたオフショルダーのワンピースと可愛らしい装い。
シーナさんは黒い五分袖のジャケットを羽織り、オレンジ色のタンクトップと黒いショートパンツとアクティブな装い。
こうして見ていると、それぞれの個性が光ったような格好をしていて素敵に見える。
何か新鮮だな。
「そう言えば、俺が入隊した頃から聞いていたんですけど、シーナさんって冒険者をしてたんですよね?」
「ええ。そうよ」
「私はあまり知らないですね。シーナさんの冒険者時代のお話」
会話の内容はシーナさんの冒険者をしていた時期に変わった。
俺たちは詳しい話を聞くことになった。
「シーナさんが遊軍調査部隊に入る前はBランクの冒険者だったんですね」
「そうよ。他のメンバーが大怪我による引退や限界を悟って田舎に帰るとかになって、最終的に一人になってしまったところで今の仕事を知って、紹介されたってことなのよ。まあ、冒険者時代の一獲千金みたいな機会はめっきり減ったけど、遊軍調査部隊で働く自分も悪くないって今では思ってる」
「俺も同感です」
中々に複雑な事情であるのは分かったけど、今のシーナさんには憂いや後悔の表情は無いように見える。
話を聞いた後だからなのか、自分の道は自分で決めたから、後悔はしていないし、してしまいたくないって思わせてくれるようだった。
それからは冒険者だからこそ感じるあるあるな話を交えながら盛り上がった。
その後の買い物でも楽しかったし、それだけ充実した時間を過ごせた。
気がついたら日が暮れそうになっており、騎士団の寮へと戻った。
「ふう。思わぬ形で出くわしてしまったが、私にとっては充実した日々だったよ。ありがとう。リュウト」
「いえいえ、そんな滅相もございません。俺も楽しめました」
「あたしも楽しかったよ!」
「リュウトさん。また勤務日に!」
「はい。また後日に……」
ソフィアさん、シーナさん、アンリと予期せぬ形で過ごした休日だったけど、俺にとって有意義な一日となったのは間違いなかった。
「こんな日を過ごすのも悪くないかもな」
俺はそう呟きながら、自分の部屋へと戻っていくのだった。
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