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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第三章

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第103話 混沌を告げる轟音

バアゼルホが混沌としようとしていきます。

「急がないとな」


 俺たちはフォーペウロの北にある国境付近で確認された魔族や魔物の軍勢の討伐に当たるために向かっている。

 騎士団の先発部隊の加勢をするためでもあるけど、状況から見るに、魔王軍の幹部格が出向いている可能性も否定できない。

 とにかく合流しないことには始まらない。


「道が空いていたのは幸いだな。予想よりずっと早く着きそうだ」

「そうね。フォーペウロを守る結界があるから守りは問題ないでしょうけど、魔族が相手なら、ここで潰しておくに越したことはないからね」

「かもな」


 騎士団の先発部隊が防衛線を張っているはずだが、敵は魔族と魔物の混成部隊だ。

 報告によれば、魔王軍の幹部格が出陣している可能性も極めて高い。

 このフォーペウロは四聖女による防御結界や騎士団を中心とした防衛力は魔王軍の進撃を防ぐ大きな要となる国にして、平和に繋げる礎となろう存在だと思う。


「どうにかして、この状況を切り抜けないとな」

「ええ。結界がある限り、王都の守りは盤石でしょうけど、攻め入ろうとする連中をここで叩いておかないとね」


 シャーロットの言葉に頷きながらも、俺の胸の中には俺は一種の違和感を捉えた。

 魔族軍が侵攻しているにも関わらず、何の障害も無しに目的地までの道を行けているのに、何一つトラブルに遭遇することなく、あまりにスムーズに行けていることに。

 急ぐあまり、重要な何かを見落としていたのではないかしれない不安が警鐘を鳴らす。


「とにかく、どうにかしないとな」

「そうね、やるしかないわ……。ここで食い止め――っ?」


 その時だった。


「あれは……?」


 馬車の隙間から、何かがひらりと舞っているのが見えた。

 それは一枚の紙飛行機のようだけど、それにしてはその軌道が不自然だ。

 風に弄ばれているのではなく、どことなく人の手によって操られているように落ちていく様相だった。

 見渡すと、それが一枚や二枚ではなく、あちこちで数枚が舞っている。

 本能的に<感覚操作(センス・コントロール)>を発動させた俺だったけど、一瞬の考える間も与えられないまま、迎えてしまうのだった。


「「「――グォオオオオオオオオオッ!!」」」

「うぅうううう!」

「うるさ——、ガァアア!」

(いかがわしい魔力は全く感じなかった……。なのに、この威力は……何なんだ!?)


 それは魔物の咆哮でも、物理的な爆発音でもない、俺たちに響いたのは耳を裂くどころか、脳内さえも容赦なく潰さんばかりの轟音が大気を震わせた。


「う、あぁああああッ!?」

「うるさっ、ガァアア!」


 シャーロットたちが耳を押さえ、動けなくなった。

 馬車を引いていた馬は前のめりに倒れかけており、動けなくなっていた。

 街路の建物の窓ガラスが、一斉に砕け散っている。


「皆、しっかりして! 何が起きてるの……?」


 俺は馬車の荷車から顔を出しながら、<感覚操作(センス・コントロール)>や<魔力確認(マナチェック)>を発動させて、轟音の出所や魔力の指向性を探るのに神経を注いだ。

 声を掛けられたシャーロットをよそに一つの違和感、いや、起きて欲しくないシナリオを想像する。


「なぁ、今のこの状況、もしかして……」

「おい、嘘だろ? 上を見ろよ!」


 ジャードが掠れた声で叫び、空を指差し、その方角を見た俺たちは信じられない光景を目にする。


「王都を覆う結界が……」

「揺らいでいる?どうして?」


 聖都バアゼルホを中心に空を覆っていた結界。

 それがまるで水面に映った鏡像が乱れるように、激しく明滅しており、綻びが生じて消え入りそうなまでに薄くなっている。


「まさか、聖女様たちの身に何かが?」

「わかりません。ですが、この異常事態に関連しているのは間違いありません。もしも、これが――」

「勇者パーティの皆様ッ!!」


 絶叫に近い声が俺たちの会話を断ち切った。

 倒れた馬車の陰から、血相を変えた騎士が片脚を引きずるようにして現れる。


「報告します! 王都バアゼルホを起点とするフォーペウロ全域の結界強度が急速に低下! このままでは消失します!」

「なんだって!?」


 聴覚や平衡感覚をほんの少し戻りつつある俺たちはそれを聞いて背筋に冷たい汗が伝う。

 今起きている状況を鑑みても分かる。このフォーペウロが混沌としているってことが……。


◇———


 バアゼルホの象徴たる大聖堂。


「ハァアア!」

「ガァアア!」

「お前ら!一体どうしたというのだ?」


 神秘的かつ清廉な空間が支配していたその場所は今、獣のような咆哮とこびりつくような鉄錆の臭いに塗り潰されていた。


「ガァアアッ!」

「貴様ら、正気に戻れ! 何を血迷っているのだ!」


 フォーペウロの第一王女であるレイニース様や騎士団トップのアルフラド団長の眼前に広がっていのは先刻まで忠義を誓い合っていたはずの部下たちが突如として狂ったように暴走し、獣じみた唸り声を上げていた。

 その瞳はどす黒い赤に染まり、もはや理性のかけらも見当たらない。


「姫様、私の後ろへ!」

「はい!」


 レイニース様はアルフラド団長の背に隠れながら、震える手で自身の胸元を握りしめた。


(騎士たちの様子があまりにも異常だわ。あの血走った目。まるで、内側から何かに突き動かされているような……)

「ガァアア!」

「グッ!」

(尋常じゃない力だ。何かしらの理由でパワーアップしているのか?)


 狂戦士のような剣戟を受けて尚、どうにか余力を残しているアルフラド団長だったが、周囲を固める数名の正気な騎士たちは疲労困憊となっており、防戦一方に追い込まれていた。


「団長、これ以上は……」

「動ける者は姫様を連れてここを離れろ!姫様!一旦逃げましょう!」

「ええ!」


 アルフラド団長は一時的に撤退することを決断し、レイニース様もそれを尊重する。

 その瞬間だった。


「うわぁあ!」

「「ッ!?」」


 声がした方角へ振り向くと、騎士の一人がボウガンの矢のような物を額に受けて倒れている。

 声もなく崩れ落ちたそれは即死だった。


「困りますわ。他の聖女はともかく、あなたにはここで消えていただかなくては。王女様」

「あなたは?」


 氷のように冷淡な声が大聖堂に響き渡る。

 勝手知ったる我が家のように悠然と歩み寄ってくる一人の女。

 胸元に国章が刻まれた黒い背広のような官服はフォーペウロの政務に関わる者の証だ。


「今回の計画を完遂するため、ここで死んでいただきますわ」


 フォーペウロの宰相ゲータスの付き人であるジョシュナだった。

 だが、纏う空気は……もはや人間のそれではなかった。

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