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ブラックな冒険者パーティを脱退した俺は自由気ままに誰かの役に立ちます~このレンジャー、いろんな意味で凄かった件~  作者: カワチャン
第三章

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第97話 【Sideレイニース】一糸まとわぬ王女様

フォーペウロの第一王女がメインのお話です!

「ただいま戻りました」

「姫様。お帰りなさいませ」

「お帰りなさいませ」

「無事のご帰還、心よりお慶び申し上げます」


 月が昇る夜、わたくしはフォーペウロを治める貴族の方々との夜会を終え、整列した従者やメイドたちの深く静かな礼が複数の従者やメイドに迎えられながら王城へと帰って参りました。


「わたくしがいない間に変わったことはありますか?」

「はい。こちらの資料ですが、先日行われました城内で決まった会議の資料でございまして……」


 わたくしは王城の廊下を歩きながら、一人の従者から渡された会議資料に目を通し、自分がいない間に何があったのや明日の予定を共有された。

 聖女としての仕事はもちろん、フォーペウロの第一王女としての仕事も疎かにはできない。

 それから自室に戻って、ようやく一人の空間になった瞬間、肺の奥に溜まっていた溜息を吐き、すぐに向かったのは……。


「はぁあ~。久しぶりにちゃんとしたお風呂に入れたわ~」


 王城内部にある大浴場だ。

 壁と床は大理石で造られており、天井や壁に設置されているシャンデリアやランプの淡い光によって鏡のように反射している。

 浴槽の中央で圧倒的な存在感を放つのは精緻な彫刻で造られた両手で抱える大きな壺を持った慈愛に満ちた表情を浮かべる水の女神像だ。

 そこから絶え間なく滾々と清らかなお湯が流れ、その音は静謐な空間に心地よいリズムを刻み、立ち上る温かな霧は優しくも暖かい吐息のように優しく肌をなでる。

 お湯の温もりと大理石の冷たさのコントラストが織りなす極上のひと時。


「今回はいろいろと立て込んでいたからな~」


 聖なる湖に戻ってすぐにそのまま夜会に参加したのもあってか、解放感はもちろん、一種の達成感がわたくしを包み込む。

 湯船の中で足を伸ばし、指先を動かし、心の底に溜めていた疲労感も湯汗と共に流れ落ち、リフレッシュされていくのが自分でも分かるくらいに気持ち良かった。


「こうしている時が本当に最高だわ~」


 広い空間の中で一人、流れ出るお湯のせせらぎを感じながら入浴を楽しむのは至福の時。

 思わず鼻歌が零れます。


「鼻歌まで流れるとは、ご機嫌ですね」

「え?」


 静寂を裂いたのは凛としていながらも、どこか包み込むような温かみを持った声だった。

  声のした方角に振り向くと、揺らめく湯気の向こう側に一人の女性が立っていた。


「私もよろしいかしら?」

「お母様!」


 声の主はエリザナ・ドゥ・フォーペウロ。

 フォーペウロを治める女王陛下であり、わたくしの実母です。

 お互いに公務で忙しくしている身であるため、同じ屋根の下に暮らしていても、一緒に入る機会はあまりございませんでした。


「良い湯加減です。歌を口ずさみたくなる気持ちも分かります」

「ふふ、お恥ずかしいところを見せてしまいました」


 お母様は優雅な所作で私の隣に腰を下ろしました。

 こうして見ると、お母様の身体つきは均整が非常に整っているのはもちろんですが、湯気に濡れたその肌は一片の曇りもなく、透き通るように白い。

 過酷な政務をこなしているはずなのに、その立ち居振る舞いは常に清廉であり、風呂の場においても女王陛下です。

 気持ち良いと心から思っているのか、お母様は柔和な笑みを浮かべます。


「いいえ。レイニース、聖なる湖での儀式、大儀でした。あなたが無事に役目を果たしたことを母として、そして女王として誇りに思います。まずは一段落着いたというところでしょう」

「ありがとうございます」


 お母様に労を労われました。

 それからわたくしは王都を発ってから聖なる湖に辿り着いたこと、儀式のこと、帰って来るまでの経緯を語りました。


「様々なことがあったのですね。あなたの瞳を見れば、それがただの義務ではなく、実りある旅だったことが分かります」

「はい。振り返ってみても、騎士団や勇者パーティの皆様にはいろいろとお世話になりましたわ。特にリュウトさんとか……」

「リュウト? 彼が何か?」


 わたくしたち四聖女が聖なる湖に向かう道中、魔物と遭遇したのはもちろん、野営をすることが何度かありました。

 その度に彼から食事を振る舞われましたが、これまた美味でした。

 王族には専属のシェフがおりますけど、それに引けを取らないくらいだったのです。

 聖なる湖に向かう時を始めとする道中の野営の際には身体を拭くか、川や池で水浴びをするくらいしか清める方法はありませんでしたが、リュウトさんは簡素な手作りシャワーを用意してくださったのです。

 野営でシャワーを浴びれるなんて思いもしなかっただけに。


「彼は『サバイバルを生きるためのノウハウの一つ』と笑っていましたが、わたくしたちにとっては非常に助かりました」

「それは頼もしい限りですね……」

「はい。お母様の方はどうでしたか?」

「え?あぁ。私はね……」


 お母様は少しだけ悪戯っぽく微笑んだ後、今度は少しだけ真剣な顔になった。

 今度はわたくしがこの一週間の間に何があったのかをお母様のお話を聞くことになりました。


「ええ。ゲータス宰相の周辺で少し動きがあり、ジョシュナという新しい付き人が就任されました」

「ジョシュナ……でしょうか?」


 ゲータス宰相といえば、この国の政治を支える重鎮であり、そこに就いた新しい部下。

 お母様の話によれば、仕事ぶりは完璧で非の打ち所がないものの、お母様も心から信用しているわけではないみたいです。

 平気で人を疑うのは本来好ましくありませんが、国の政治においては他国のスパイである可能性も考慮したうえで向き合わなければなりません。


「半月前、ゲータスの部下が一人辞任したでしょう?家族の事情と届出にはありましたが、私は裏があると見ています。ジョシュナはその穴を埋めるように採用されましたが、()()()()()()()()()()入り込んできたのではないかと……」

「素行調査は?」

「既に進めています。他国のスパイか、あるいは別の勢力の回し者か」


 表立ってしまわないようにジョシュナを調べているようですが、結果はまだ分かりかねるとのことでした。


「明日からはわたくしもお手伝いします。ゲータス宰相には、わたくしからそれとない内容について問う形で接触してみましょう」

「頼もしいことです」


 こうして、わたくしはお母様との平穏な時間を心ゆくまで楽しみました。

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