第1話 脱退からの
記念すべき第一話です!
「俺は今!この場をもって、このパーティを脱退させてもらう!」
「あ?」
「「「……」」」
俺の名前はリュウト・ドルキオス。21歳。ジョブはレンジャー。
レンジャーとはジョブの一種であり、感知スキルによる敵方の探知やトラップの対処、味方の支援や援護射撃を得意としており、時には斥候を担うこともあるジョブだ。
俺は冒険者をしており、Aランク冒険者パーティの名を欲しいままにした『戦鬼の大剣』の一員だった男だ。
十五歳から冒険者として活動を開始し、冒険者パーティ『戦鬼の大剣』の一員になってから六年目になり、一年前にAランクとなった。
その過程で魔物との戦闘やダンジョン攻略だけでなく、冒険の準備に依頼や攻略の下調べ、宿屋や野営の手配に物資調達などの雑務も担ってきた。
パーティをしっかりと支えてきたと我ながら思っていた。
だが、『戦鬼の大剣』のリーダー格であり、近接戦を得手とするジョブが剣士のガルドス・ハリブザー率いるパーティを脱退する決断をたった今したのだ。
「一応、理由くらいは聞いてやる。なぜだ?」
「分からないのか?達成した依頼の報酬の分け前!かなりの額の金を貰ったはずなのに、俺だけこれっぽっちなのは不公平だと思わないのか?」
「……?」
俺は今日の報酬が入った袋を取り出して中身を見せた。
つい先ほど、今回の依頼の報酬として渡されたものであり、中には金貨が一枚、銀貨が十数枚、銅貨が数十枚入っている。
多いか少ないかで言えば少なく、むしろ依頼のために買い揃えた弓矢やポーションを始めとする消耗品を含めた経費の方が高いくらいだ。
「いやいや、妥当な額だろ?」
「何だと?」
「俺とビーゴル、アキリラでガンガン魔物を倒しまくって、リリナも回復魔法や補助魔法でしっかりとフォローしている。魔物の討伐を始めとする戦闘や依頼においてどれだけ貢献できているかどうかで報酬の分け前や待遇が決まるのは至極当然だろ?お前らもそう思わねえか?」
逆立った金髪と整った顔立ちに侮蔑の念を宿しながら高らかに語るパーティのリーダー格であるガルドスの表情はどこか歪んでいるようにも見えた。
ふと俺はパーティーメンバーの三人に目をやった。
「「「……」」」
アキリラとビーゴルは侮蔑の眼差しを、リリナは何も感じていないような眼差しを俺に向けている。
「あのさ~。あんたが魔物の討伐を始めとする戦闘においてやっていることと言えば、弓矢で後ろから援護射撃するのとあたしらが仕留め損なった雑魚の魔物処理くらいでしょ?強力な魔物は前衛で戦うガルドスとビーゴル、あたしの魔法のお陰で倒してこれたのよ。大した貢献もしていないのに卑しい男ね」
「てめえは前に出て戦うこともなければ、強力な魔法をぶっ放してトドメを刺したり魔物共の殲滅をすることもないのに金の要求なんて厚かましいんだよ。他に役に立っていることと言えば、戦闘以外の雑用くらいだろ?誰でもできることを積極的にやってるアピールしているくらいでお高く止まった気になってんじゃねえよ!」
「アキリラ……。ビーゴル……」
明るい茶髪のロングヘアに紺色を基調にしたローブに身を包んだ魔術師のアキリラ。
ガルドスと同じく前衛を担い、濃い灰色の短髪と若干強面で鎧に身を包んだ戦士のビーゴル。
二人はガルドスと共に『戦鬼の大剣』を組んだ時からの仲であり、パーティの起ち上げメンバーでもあり、年齢も俺より一つ上だ。
それでも、堅苦しいのを良しとしないガルドスの方針もあって、敬語や敬称で呼ぶ事も無ければ、良き関係を保っていけると思っていた。
だが、二人が見せたのは明らかに俺を蔑むような表情だった。
「リリナ!」
「……。あなたがそんなワガママを見せるんだったら、勝手にするしかないんじゃない?」
「ッ!?」
シャギーを効かせた水色のセミロングヘアにアイボリーを基調にした上着を羽織っているのは僧侶のリリナであり、パーティにおけるサポーターだ。
リリナは冒険者を始めた時からの仲であり、確かな絆があると思い込んでいただけに、強いショックが入り混じった絶望感も抱いた。
全員、俺が脱退しようとしている状況を既に受け入れている様子だった。
「ほらな!」
「ぐぅ……。うぅ……」
「それと脱退するってんなら、テメェが前から持っていた物や自腹で買った物以外の装備品や消耗品は全部置いていけよな」
「な?これは————」
「お前が付けている防具や剣は俺らが金を出し合って用意したんだから、パーティを抜ける時に返してもらうのは当然の事だろ?そんなのも分かんないとかつくづく無能だな!さっさと出せや!」
「グッ……」
ガルドスの言う通り、腰に携えている細めの片手剣と胸周りを覆っている革鎧は皆でお金を出し合って購入した物であり、質そのものは優れている。
しかし、脱退を申し出た途端に返却を求められるなんて酷い話だ。
このまま走って逃げてもって思うが、コイツの性格を考えれば、渡さないは渡さないでそれ以上に厄介なトラブルが起こりそうな気もするので、大人しく受け入れた。
「これが全てだ。文句はないよな?」
「出せばいいんだよ!出せば!ちなみにさっきの報酬は手切れ金の意味でくれてやるよ!俺って優しいからな!ハハハハハハ!」
俺は指示された装備品を差し出すと、ガルドスは乱雑に受け取る。
「残念だぜ。いや~、お前も馬鹿だよな。自らAランクパーティのメンバーの肩書を捨てるなんてな!勿体なさすぎだぜ!」
「それがお前の本音なんだな。分かったよ……。俺はもう抜けるけど、いずれお前らがSランクになれるのを応援してるよ」
「ハッ!『何が応援してるだ』!?カッコつけてダサいんだよ。バ~カ!」
「身の丈に合わないキザなセリフを言ってばっかりの男は嫌われるわよ!キャハハハッ!」
俺はガルドスやビーゴル、アキリラに最後まで詰られながら、拠点にしていたパーティハウスを後にした。
夜の帳が降りようとする中、俺は力なく歩いていた。
「何でこうなっちまったんだろうな?」
最初はあんな雰囲気のパーティではなかった。
俺たちがパーティを組んだばかりの駆け出し時代、それぞれの短所を補い合い、切磋琢磨してきた。
一緒に冒険している時や依頼を成功した後で飲み明かす時間も楽しかったし、Sランク冒険者になるんだって夢も語り合った。
しかし、ランクや知名度が高くなるにつれてガルドスを筆頭にビーゴルやアキリラは増長するような態度を取るようになっていき、俺への扱いや待遇もそれに比例するかのように悪くなっていった。
リリナだけはそれほど俺を蔑ろにはせず、雑用とかを手伝ってくれたりもしたけど、冷たい言葉を投げつけられてしまうと辛い。。
結成してから六年も一緒だっただけに、改めて空しい気持ちを抱いてしまう。
そこで俺は公園のベンチに座り込み、まとめておいた荷物を確認する。
「今持っている全財産はこれだけか……」
俺は現段階で持っているお金をかき集めた。
今まで貯めておいたお金とさっきの報酬を合わせれば、冒険者やそれに類する仕事をしないとしても、しばらく食い繋げるくらいはできるだけの余力は残っている。
だが、それは何の活動もしないままの話であり、ボーっと過ごしていればいつか貯金も無くなってしまう。
パーティに入った当初は依頼成功の際、公平に分け前を与えられていたものの、ランクが上がっていくにつれて、適当な理由や屁理屈を付けられては俺だけ分け前が少なくなっていたけど、ガルドスのさっきの言葉を思い出すと悲しくなる。
加えて、俺のことをメンバーの一員ではなく、便利な道具のようにしか思ってくれなかった事実も……。
そんな考えが過った時、俺はその場でため息をつくしかできなかった。
「マジでこれからどうしよう?」
贅沢せずに生きていくだけならば、しばらくの生活は困らない。
しかし、何か仕事をしてお金を稼がないと食いっぱぐれるのは明白であり、今ここで死んでもいいやという自暴自棄な精神は欠片も抱いていない。
引き続き冒険者を続けて他のパーティに入る及びソロで傭兵的な活動するのもいいけど、どこかの組織や店に雇われて定職に就くか自分自身で組織や店を興し、自営業で稼ぐかも考えた。
どこかで雇われて仕事をすれば、得られるお金は冒険者時代と比較すれば大分少なくなるものの、安定的で堅実な生活を送れるだろう。
雇い主との性格や相性が悪ければ億劫この上ないが、逆に合えば居心地の良い環境で仕事ができる。
前のパーティにいた頃は事務作業や雑用をよくやらされていたから、デスクワークができなくもない。
そもそも自営業で組織を起ち上げようにもアイデアやノウハウがないし、今持っているお金だけでは初期投資だけで赤字なのは明白だ。
しばらく考えを巡らせて俺が出した答えは……。
「とりあえず、今日はもう寝よう」
◇—————
格安の宿に一泊した翌日、資金稼ぎの手段を見つけるべく、俺は街中にあるスティリア支部の冒険者ギルドへと向かった。
「あら、リュウトさん。こんにちは。今日はお一人なんですね」
「はい……」
ギルドのカウンターに立つと、受付嬢のリサさんが笑顔で迎えてくれた。
茶色のショートヘアに薄化粧だが、笑顔の可愛い美人さんだ。
『戦鬼の大剣』を結成した頃からの顔見知りであり、仕事もできる人だから冒険者や同じ職員さんからの信頼も厚い。
「どのようなご用件でしょうか?」
「俺一人でもできる依頼を探しに来ました。後、経験を活かせる仕事とかもあればなと思いまして……」
「リュウトさん。『戦鬼の大剣』に所属されていますよね?どうして急に……」
「昨日をもって自ら辞めたんです。まあ、方向性の違いと言いますか……」
「それまた急に。ですが、冒険者をしていたら、人生いろいろありますからね」
「おっしゃる通りです」
俺がパーティを脱退した事実を告げると、リサさんは同情するような表情を見せた。
「まあ、冒険者界隈の事情は何かと複雑ですからね。ところで、今一度ご確認させていただきますが、リュウトさんのジョブはレンジャーですよね?」
「は、はい」
「少しお待ちいただけませんか?」
「え?」
するとリサさんは手早く何かを確認する。
ものの十数秒で終わり、彼女の仕事ぶりを見て惚れ惚れしそうになる。
「リュウトさん。冒険者以外の仕事に興味とかあったりします?」
「え?あるにはありますけど、急にどうしたんですか?」
まさか、この展開って?
ほんの数秒の間を置いてリサさんが口を開き、一冊のパンフレットを差し出した。
「そんなリュウトさんにこちら!エレミーテ王国騎士団遊軍調査部隊のお仕事です!選択肢の一つとして、いかがでしょうか?」
「……え?」
思わぬ展開に俺はその場で氷魔法を受けたようにフリーズするのだった。
いかがでしたでしょうか?
ハイファンタジーでレンジャーに焦点を置いた作品は珍しいと思います。
少しでも「気になる!」「面白い!」「続きが楽しみ」と思われましたら下の☆☆☆☆☆を★★★★★にしていただけると幸いです!
面白いエピソードをご提供できるように努める所存ですので、どうぞよろしくお願いいたします!
P.S
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