第5話 ここはどこですか?
まぶたに明かりが差し込み、夏美の意識が急浮上する。
目を開けると、天蓋ベッドの天井が見えて、うっすらと、しかし次第にはっきりと昨晩のことを思い出した。
(……ああ、そういえば……ラブホでそのまま泊まったんだ)
意識が覚醒してくると同時に、襲われる空虚感。
(いない……)
ヤることが目的の相手であれば、こういうことは悲しいかなままある。しかし、昨日のあのぴったりとくっついたときの心地よさ……もとい相性を思うと、いつもよりも寂しさを強く感じる。
(予定があったのかもしれないし、ゆきずりの女なんてわざわざ起こして行ってきますを言うような関係でもない)
頭では理解していても、心が追いつかないこともまた、ままある。
(寂しいなぁ……)
そう思いながら身体を起こしたとき、行為後に蹴って下の方に追いやったはずの毛布がかけられていることに気づく。
(こ、れは……)
今の自分は、裸にその毛布だけ。これが冬の気候であったら夜中に震えて目を覚ますだろうが、幸いにも今は寒さを感じる気温ではない。
(……毛布、かけてから出て行ったのかな)
アイザック、と名乗ったあの男が、どこか冷めたような一面も持つあの男が、自分に毛布をかけてくれたのだと思うと、先ほどの寂しさはいくらか軽減された気がした。
(よし……とりあえず、帰るか)
夏美は身支度をして、忘れられない一夜を過ごしたこの部屋を出ることにした。