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レベッカ一行の世界漫遊の旅 3 (ノマード王国の旅 17 )

「何か用ですか?」


私の父親と左程年齢が変わらない男の人がこちらを振り向いた。このおじさんもやはり露出が激しい服を着ている。…いや、今の言い方は少し語弊があったかもしれない。マントの下は布地の少ない涼し気な服と言い換えて置こう。


「コホン。えっと、これは何の行列ですか?」


「ああ、この行列は『ナージャの占いの館』の行列だよ」


「まあ、館ですか?私の目にはどう見えてもテントの様に見えますが…ハッ!ひょっとしてあのテントの奥は亜空間になっているのでは?!」


レベッカが真面目に考え込んでしまった。


「あの…この方は何を言っておられるのでしょう?」


おじさんが私に尋ねて来る。


「あ、どうぞ気にしないで下さい。ではおじさんが一番最後の列なのですね?」


にこやかに尋ねると、何故かおじさんは悲し気な目で私を見る。


「おじさん…」


「え?」


「ううう…こ、これでもまだ俺は32歳だ!おじさんと呼ばれる年齢じゃない!」


「「ええええっ?!」」


驚きのあまり、私とミラージュの声がハモってしまった。まさかまだ32歳だったとは…。目の前のおじさん…もとい、男性をじっと見た。顔に薄っすら刻まれた皺‥‥頭頂部がかなり薄くなった髪の毛…とてもではないが32歳には見えない。良くて40

歳、軽く見積もって50歳…というところだろうか?


「す、すみません。落ち着いている様に見えたので…年齢が…あの、少々高く見えてしまったんです」


「ああ、そうか。別にいいよ、いろんな人に年齢の事で驚かれるから」


急に砕けた話し方になるおじさん‥いや、男の人。


「それじゃ、ミラージュ。私達も並んで待ちましょう」


「ええ、そうですね」


私達はおじさんの後ろに並ぶと、何故か私達の方を向いて話しかけてきた。


「君達もナージャに占ってもらいたいんだね?」


「ええ、そうですわ。その為に『ノマード王国』からラクダ酔いに耐えながら砂漠を超えて来たのですから」


「え?そうなのかい?でも残念だったな。お嬢さんたちじゃ恐らく占って貰えないんじゃないか?」


「え?それはどういう意味なのでしょう?」


ミラージュは首を傾けた。


「知らないのかい?ああ…でも『ノマード王国』からやって来たなら分からないか。この占い師はとても気まぐれでね、自分が占いたいと思った客しか占いしてくれないんだよ。俺はもう2週間も通い続けている」


「ええっ?!2週間もっ?!絶望的じゃないですかっ!そこまで拒否されたら普通諦めませんかっ?!」


「ええ。そうですわ。あまりしつこい男は嫌われますよ。引き際と言う物があるのですから」


私とミラージュは思わず本音を口走ってしまった。


すると…。


「な、何だよ…き、君たち迄そうやって俺を馬鹿にするのか…?!」


何と目にうっすら涙を浮かべているではないか!


「まあっ!大の大人が‥しかも男性のくせに泣いていますわ!気持ち悪い!」


思ったことをすぐに口走るミラージュを慌てて私は止めた。


「シーッ!駄目よ、ミラージュ!それ以上言っては。それは確かに私だっていきなりおじさんが泣いたら気色わるいって思うけど、それを本人の前で言うなんて」


「おい…誰が、おじさんだ?おれはまだ32歳だと言ってるだろう?!」


おじさんの顔が赤くなっていく。ああっ!口が滑っておじさんを怒らせてしまった。


その時―


「次の方どうぞ」


テントの中から女性の声が聞こえた。気付いてみればいつのまにか列に並ぶのは私達のみだった。


「はい!」


おじさんは涙を拭いながらテントの中へ入り…。


「何よっ!しつこい男ねっ!二度と来るなって言ったでしょ?!」


次の瞬間、テントの外に蹴り飛ばされていた。


「ウウウ…またしても視てくれなかった・…」


おじさんは私達に目もくれず、とぼとぼと帰って行く。


「 コホン…では次の方どうぞ」


つ、ついに私達が呼ばれた…!


緊張する思いで私達はテントの中へ入って行った―。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 二十歳前の乙女たちから見れば、32歳は充分「おじさん」。「おじさん」でイイです。 諦めろ「おじさん」。(と言い聞かす私はその更に「おじさん」世代) [気になる点] 《ではおじさんが一番最…
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