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滅亡したオーランド王国の国王と皇女たちの物語 2

 我々は馬車で旅を続けながら、着いた町や村で物乞いをしたり、日雇いの仕事をしながらグランダ王国行きの港を目指した。そして旅を続けて25日目にようやく港へ到着したのだが…。



 青い空、白い砂浜にエメラルドグリーンの美しい海が太陽の光が反射してキラキラと輝いている。



「何いっ?!グランダ王国行の船が出ていないっ?!」


「ああそうさ。もうあの国へ行く船は無い。何しろあの国は滅んでしまったからな。激しい天変地異が起こって城が崩壊してしまったんだよ。最も国は滅んでしまったが、徐々に復興し始めているらしい。だが王族制度は廃止された。今では皆に選ばれた人物が中心になって町の再開発をしているそうだ」


右腕にイカリのマークの入れ墨をした船乗りの男がタバコの息を吹きかけながら説明する。全く…かつては国王だったこの私に何たる無礼を働く男なのだろう。

手で煙を払いながら、しかめ面をしてやった。

しかし私は男の言葉に内心激しく動揺していた。一体どういう事なのだ?グランダ王国が天変地異を引き起こした?まさか私の可愛い娘、レベッカに何かあったのではないだろうか?


「ところで、グランダ王国の王族の方々はその後どうなってしまったのか知らないか?」


私の問に男が首を捻りながら言った。


「さあなぁ…何しろ、天変地異の被害は城を中心に起こったらしい。突然城の内部で激しい爆発が起こったらしいからな」


「な…何だってっ?!」


その言葉に衝撃を受けた。


「そ、それで城にいた人々はどうなってしまったのだ?!」


船乗り男の襟首を捕まえ、激しく揺さぶりながら問い詰めると男は苦しげに言った。


「ば、馬鹿!苦しい!は、離せっ!俺はそこまでの事は知らん!そんなに知りたきゃあの国に行ってみればいいだろう?!」


「ああ!私の目で直に行って見てやる!それでどうすればグランダ王国に行けるのだ?!」


男の襟首を締め上げた。


「だ、だから…は、離せって…!今は直接行けないんだよ!『ネルソン』って町に行く船に乗れば一番近いが…出港は明日だよ!」


「な、何だって明日だって…?!そんなに待てるかっ!一刻も早くレベッカを探しに行かなくてはならないというのに!!」


男の首をようやく離すと頭を抱えてしまった。ああ、こんな事なら路銀を稼ぎながら旅をするべきでは無かった。例え無一文になろうとも野宿生活をしながら港を目指すべきだったのだ…!


「うおおおおっ!!レベッカ!父さんが悪かった!お前を嫁にやらず、最も親不孝で役たたずのエミリーをあの腐れ皇子の嫁にやれば良かった!」


思わず天に向かって叫んだ時、背後から声を掛けられた。


「ちょっと、そこの旦那」


「何だ?私の事か?」


ぐるんと振り返れば、そこには髭モジャでどこかやさぐれた男が私を見ている。


「あんた、グランダ王国へ行きたいんだろう?漁船で良ければ乗せてやるぜ?」


「本当か?!恩にきる!で?どの漁船なのだ?あれか?あの船が漁船なのか?」


眼前にエメラルドグリーンの海に白い2枚の帆を張った船が桟橋の側で浮かんでいる。真っ白な白い船体も中々美しいではないか。


「はあ〜お前さん、頭平気か?あんなのが漁船だと思ってるのか?あれはヨットだよ。俺の漁船はあれだ」


国王の私に向かって頭が平気かとは何たる無礼な男だ。しかし、ここはレベッカを助けに行かなくてはいけないのでぐっと堪え、男の指差した漁船を見て思わず絶句してしまった。


「な、なんと…あ、あれに乗れと言うのか…?」


「ああ、丁度漁船を動かすのに人手不足でさあ…ただで乗せてやる変わりにグランダ王国に着くまで手伝ってくれよ」


な、何ということだ…あんな今にも沈没しそうな漁船に乗れと言うのか?しかし…私はレベッカを助けに行かなくてはならないのだ。


「よし、分かった!ちなみに乗るのは私だけではない。3人の娘たちも一緒だ。呼びに行くので待っていてくれ!」


「ああ、俺は構わないぜ。人員は多ければ多いほどいいからな」


髭モジャ男は言う。


「よし、そこで待っていろっ!」


そして私は能天気に波打ち際で遊んでいる愚かな娘たちを呼びに砂浜へ向かって駆け出した。


レベッカ!無事でいろよ―!




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