表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/194

レベッカ一行の世界漫遊の旅 2 (女盗賊アマゾナ編 6)

「まあ、モグラですか?モグラなんて可愛いものではありませんか?」


ミラージュは大胆にも巨大な肉の塊をフォークでぶっ刺し、大口を開けて飲み込んだ。その姿はまさに人間版ザ・ドラゴンである。


「何言ってるんだい、モグラをなめちゃいけないよ?どうもある村ではモグラのせいでたった1週間で全ての畑が壊滅状態にされてしまい、滅んでしまったそうだからね」


「ええええっ!な、何ですってっ!何と恐ろしい‥」


私はナイフとフォークで魚の骨を取り除きながら身震いした。


「フッ…たかがモグラの数十匹。この俺が華麗な剣さばきであっという間に退治してやろうじゃないか」


言いながらサミュエル皇子はワインをがぶ飲みして、顔が赤らんでいる。あんな状態でまともに剣を振るえるのだろうか?第一私は今まで一度も彼が剣を振るっている姿を見たことが無い。最もサミュエル皇子の活躍の場を奪っているのは、他ならぬ私とミラージュであるのだけれども…。


「よし、分かりました。アマゾナさん!貴女は私の為にあのクズ皇子を面白い目に遭わせてくれた恩人です。そのモグラ退治…私にお任せ下さい!」


私はドンと胸を叩いて言う。


「えっ?!本当にレベッカに任せて大丈夫なのかい?」


「ええ、勿論です!」


「レベッカ様、当然私もモグラ退治参加させて頂きますわ。レベッカ様の行くところは何処へでもお供致します!それでサミュエル皇子は…?」


私とミラージュが振り向くと、サミュエル皇子はテーブルに突っ伏してワインの瓶を抱えたまま眠りこけていた。


「何て事だい!彼はたった1人でこのワイン飲んじまったのかいっ?!このワイン、村の酒豪の男衆が作った特製ワインだったんよ。何とアルコール度数30%越えなんだよっ!それを1瓶まるまるまる空けてしまうとは…」


アマゾナは空になったワイン瓶と気持ちよさげに眠っているサミュエル皇子を見てため息をついた。


「という事は…?」


「ええ、ですわね…」


私とミラージュは顔を合わせて笑みを浮かべた―。



****


「ここが、被害に遭った畑なんだよ。」


アマゾナの馬車に揺られて連れてこられたのは村はずれにある広大な畑だった。


「まあ!何て大きな畑なのでしょう!オーランド王国で私は畑番をしておりましたが、こんなに広くありませんでしたわ!」


ミラージュが興奮気味に言う。うん、確かに私も驚きだ。あんな小さな村がこれほど広大な畑を所有しているとは思えなかった。なにしろ、左右を見渡しても地平線が見えるのだから。そしてその畑は見るも無残に野菜は枯れ、畑のいたるところで土がこんもりと盛り上がっている。中には高さ1m程の山が出来ている場所もあるが…うん、見なかったことにしよう。


「どうだい?酷い有様だろ?耕しても耕してもすぐにモグラにやられてしまうから今じゃ畑を放置してしまってるんだよ。罠を掛けてもちっとも引っかからなくて途方に暮れていたのさ。しかもどうやら魔力と知性を持った巨大モグラが出没したらしく、そのモグラの率いる群れがこの村の畑を襲っているんだよ」


アマゾナがため息をつきながら言う。


「ハハハハ…巨大モグラですか…」


はっきりって私はモグラは得意ではない。身体は完全に動物なのに、あのどことなく人間の手を思い起こさせるような形、そしてあのとんがったピンク色の鼻がどうにも我慢できないのだ。手のひらサイズのモグラなら我慢できるかもしれないけれども、巨大モグラが出没した場合、冷静でいられる自信が…はっきり言って無いっ!


「大丈夫かい?レベッカ。顔が青いようだけど…?」


アマゾナが心配そうに声を掛けてくる。


「いえいえ!とんでもないっ!あとは私たちで何とかするのでアマゾナは一足先に村へ帰っていてください。馬車も持って行って大丈夫ですよ?」


「ええ?!大丈夫なのかい?!」


アマゾナは目を白黒させて言う。


「はい、何も問題ありませんわ」


ミラージュの言葉にアマゾナは申し訳なさそうに言う。


「それじゃ…悪いが任せるよ。本当はあんたたちに付き添ってやりたいんだが‥今はバザーの開催期間で忙しくてね…」


「大丈夫です、気にしないで下さい。事が済んだら村に戻るので」


私は笑みを浮かべて言う。


「そうかい。それじゃ後はよろしく頼むよ」


そしてアマゾナは馬車に乗り込むと、ガラガラと音を立てて走り去って行った―。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] う~ん、どうやらサミュエル皇子、武闘には今後も活躍させてもらえないフラグが立っているような感じです、わはは。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ