レベッカを探せ 4 〜キング一家の旅 3
「あいつ…遅いな…」
俺は港の直ぐ側にあるカフェでアイスコーヒーを飲みながら、船乗りを待っていた。
頭上ではウミネコがミャアミャア鳴いて飛び回り、カモメは港で餌をつついていた。
「全くのどかな光景だ…」
フト視線をやると、別のテーブル席ではカップルと見られる男女が仲よさげに食事をしている姿が目に入った。
「そう言えば…考えてみればレベッカとは2人きりで食事をすることも無かったな…」
それにしても謎だ…。
何故、俺はあんなにもレベッカを毛嫌いしていたのか…。あんな美少女は見たことも無かったのに、初めて彼女を見た時から嫌悪感がこみ上げてきたのだ。
嫌悪感?
いいや、違うな。よくよく考えてみればあれは嫌悪感というものではない。
そうだ、劣等感だ。俺はレベッカに劣等感を感じていたのだ。
王族という地位に生まれたものの、俺はただの人間だ。
しかし、レベッカは違う。
彼女は人ならざる力を持ち、俺の行動を意のままに操る。
それどころか天候も自由に操ることが出来るのだ。
こんなのはもはや神の領域だ。
俺は神と結婚できたというのに…彼女をないがしろにしてしまったのだ。
それもこれもリーゼロッテに心を奪われていたのが原因だ。
今にして思えばあんなアバズレ女の何処が良かったのだろう?
顔だって中の下だし、知性も無かった。
ただ身体の相性が良かっただけだったのだ。
なんてくだらない。あんな奴は娼館で一生を終えればいいのだ。
手が切れて清々する。
そして今の俺は愚か者だったときとはもう違う。
あの時、レベッカの神がかった力を目にした時…俺の価値観はガラガラと音を立てて崩れ去った。
俺は王族だ。ただの女を妻に迎えるなどとんでもない。
レベッカを手に入れれば、世界を手に入れられるも同然なのだ!
「ねぇ…何?あの男の人…」
「ああ、さっきからずっと海を見つめてブツブツ呟いているぞ?」
「それどころじゃないわ。さっきはニタニタと笑っていたんだから」
「全く気味が悪いな…」
さっきから俺の近くに座っているバカップルがこちらをみて俺のことを話題にしていやがる。
全く、鬱陶しい奴らだ。
ジロッ!!
思い切り睨みつけてやると、男が「ヒッ!」と短く叫んで震え上がった。
「い、行こう…。あの男の視線…普通じゃなかった…このまま店にいたら何をされるか分かったものじゃない」
男は震えながら連れの女の腕を引いた。
フン!意気地無しめ!
「え、ええ。そうね…あんな危険人物関わらないほうがいいわよね?」
女もテーブル席を立ち上がると、2人は逃げるように店内を出ていった。
「フン!軟弱な奴め!」
気づけば他にも数人いた客が全員いなくなっている。
「これでやっと静かになったな…」
コーヒーを口に運ぼうとした時…。
「あの〜…お客様」
不意に背後から声を掛けられた。
「何だ?」
振り向くと、先程コーヒーを運んできた店員だった。
「恐れ入りますが…お客様のことを他のお客様方が怖がって…全員帰ってしまったのです。これでは商売になりませんので…どうかお引取りをお願いしますっ!!」
店員は頭を下げてきた。
「何だと?俺は客だぞ?金を払って、わざわざ然程うまくもないコーヒーを飲んでやっているというのに、出ていけというのか?やはりこの店は客を平気で追い出すような最低ランクの店だったのか。大体貴様、俺が誰だか分かってそんな口を叩いているのか分かっているのかっ?!よーし、いい度胸だ。いいぜ?お望み通り出ていってやる。だがな、俺を店から排除したことを後で死ぬほど後悔しろよっ!!」
変態親父とクソ兄貴への鬱憤、いつまで経っても戻らない船員への苛立ちを全て店員にぶちまけた。
「お、お願いですっ!どんなに悪く言われても構いませんっ!ど、どうか…お引取りを〜っ!!」
余程俺にいなくなってほしいのか、店員はウオンウオン泣きながら俺に訴えてくる。
「ああ、分かったよ!望み通りに出ていってやるさっ!ただし、条件があるっ!俺は今人を探している。有益な情報を持ってきたら、すぐにでも出ていってやるさっ!」
「そ、そんな〜っ!!」
ガックリ膝をつく店員。
こうして徐々にレベッカ探しの人脈?を広げていった。
この調子ならレベッカが何処を目指したのか行方を掴めるだろう。
俺は心の中でほくそ笑んだ―。




