ある娼婦の物語 3
今夜も私には指名が沢山入った。
「ウフフフ…また来てね?」
一番最後のお客に服を着せながらニッコリ微笑む。
「ああ、勿論だよ。ロッテ、また来るからな?ほら、これをやろう」
何処かの貴族らしき年配の男性客は懐から銀貨5枚を差し出してきた。
「まぁ、こんなに沢山。ありがとうございます!」
笑顔で受け取りながら心のなかで舌打ちをした。
何よ、シケた客ね…。あれだけサービスしたんだからもっとお金を払ってくれたっていいのに。
「それじゃあな、ロッテ」
「ええ。それじゃ」
服を着込んだ男性客が私に軽くキスをして部屋を出て行った。
バタン…
扉が閉じられると、自分の口元をゴシゴシと袖で拭った。
「全く…。最後までしつこいお客ね」
そしていつものように床板を外し、ツボの中に内緒でもらったコインを入れた。
「フフフ…大分お金がたまったわね」
ここで働く女性たちの大半は借金を返す為に働いている。だから皆お金を必死で貯めて、早くこの娼館を出ることばかり考えているけれども私は違う。
別に私はアレックス王子にこの店に売られたわけでもないし、借金があるわけでもない。ただ行く宛も無いし、正直に言えば私はこの仕事が気に入ってる。
好きなことをして、その上お金まで貰えるのだからこんなにありがたいことはない。
まぁ、中には相手をするのも嫌な男性客もいるけれども、それでも運が良ければ自分好みの男性のお相手をすることが出来るのだからこんなに楽しいことは無い。
だからなのだろう。
私の指名率はこの店で一番高く、今ではアレックス王子の予想通りにナンバーワンに上り詰めることが出来たのは。
とにかく、今の私に取ってこの仕事はまさに天職だったのだ―。
****
この娼館で働き始めてから、一ヶ月程経過した時の事だった。
私達娼婦は夜に働き、明け方から眠る…それが当たりまえの生活だった。
そして私も昨夜は深夜3時までお客をとり、眠りについたのは午前4時を過ぎたあたりだった。
それは突然起こったのだ―。
『やめておくれっ!ここは私の大切な店なのよっ!』
『何が大切な店だっ!いかがわしい、しかも違法な商売をしておきながら!とにかくこの店は摘発させてもらう!』
『キャアッ!だ、誰なのっ?!』
『いやあっ!出てってよっ!』
あちこちで騒ぎが起こっている。
「え…?い、一体何なの…?」
まだ半分寝ぼけ眼でベッドからムクリと起き上がった時―。
ガチャッ!!
突然乱暴に扉が開かれた、町の治安警察の制服を着た数名の男の人達が部屋の中になだれ込んできた。
「キャッアッ!と、突然何ですかっ?!」
驚きのあまり悲鳴をあげた。
「ここにもやはり娼婦がいたのか。全く…こんな森の中にいかがわしい店を作りおって…」
「どう見てもお前たちはウェイトレスには見えないしな」
「ああ、男の前でそんなだらしない姿を平気で見せることが出来るんだからな。そこの女!とにかくベッドから降りてこい!」
3人の警察官たちは失礼極まりない台詞を口々に言う。
「ちょっと待って!いくら警察官だとしても、あまりにも失礼じゃないっ!」
思わず食って掛かると口ひげを生やした人物が私を睨みつけてきた。
「うるさい!黙れっ!男を食い物にする娼婦めっ!この娼館は未成年を働かせている罪で摘発することが決定したのだ!早くここから出ていけ!」
何ですって?!
このベッドの床下には私が貯めたお金が隠されているのにっ?!
「いやよっ!出ていかないわっ!」
「四の五の言わずに出ていくんだっ!」
激しく私は首を振って抵抗すると、別の警察官に右腕を掴まれた。
「何するのよ〜っ!!」
ガブッ!!
「ぎゃ〜っ!!痛ってーっ!!」
警察官の悲鳴が狭い私の部屋に響き渡った―。




