表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

141/194

ある娼婦の物語 1

 私の名前はリーゼロッテ。


けれどここではロッテと名乗るように命じられている。私の名前はどうやら呼びにくいらしく、ビッグマムに名前を変えられてしまったのだ。




深夜2時―。


「はーい、毎度ご利用ありがとうございましたー」


「今夜も最高だったよ、ありがとう。ロッテや」


私の今夜最後のお客様、マルコヴィッチ男爵が着替えを済ませ、私の頭を撫でてきた。

マルコヴィッチ男爵は年齢50代程の男性で奥様との夜の生活が不満らしく、週に3回は通ってきている私の常連客である。


「はい、今夜のチップだよ」


いつものように男爵が私の手に金貨1枚を握らせてきた。


「どうもありがとうございます!」


私はにっこり笑ってお礼を述べた。


「いいかい?くれぐれもこの事は他の人達に内緒だよ?」


男爵はウィンクしながら私に口止めし、「またくるよ」と言って部屋を後にした。


そう、この娼館では娼婦とお客の間で個人的金銭を貰う事は禁止事項になっているのだ。


私達は完全歩合制で働き、稼ぎの半分はビッグマムに搾取されている。

当然、そのことで他の娼婦仲間たちは不満に思っている。

けれども殆どの娼婦たちは全員訳アリで、何処にも行く場所が無い者たちばかりなので、皆いやいやこの娼館に身を寄せているのだ。


かくいう私もそうなのだけど。


「フフフ…今夜も金貨をくれたわ。マルコヴィッチ男爵は上玉のお客ね。私ってなんて運がいいんでしょう」


早速この金貨をいつもの場所に隠すことにした。

実はこのベッドの下は床板が1枚だけ外れるようになっているのだ。私は早速ベッド下に潜り込んで床板を剥がすと、そこは小さな空洞が空いている。そして空洞の中にはツボが隠されているのだ。


チャリーン


今夜の分の金貨をツボの中に入れて、思わず笑みが浮かぶ。


「フフフ…本当にここの仕事は私に合ってるわ。娼館に置き去りにされたばかりの頃はアレックス王子の事を恨んだけれども…」


私は自分が娼館にやってきたばかりのことを思い出した―。




****


 それは突然の出来事だった。


妙に身体が痛くて目を覚ましてみると、なんと私はスケスケ下着姿のまま見覚えの無い部屋の床の上に転がっていたからだ。


「キャアッ!い、一体何なのっ?!」


驚いて起き上がると声が聞こえてきた。


「おや?やっと目が覚めたんだね?」


「え?」


驚いて声の聞こえた方向を振り向くと、そこには紫色のカウチソファに座り、パイプを咥えた中年女性が私をじっと見つめていたのだ。


「え…?あ、貴女は誰なの?」


「私かい?私はこの娼館『夢の館』のオーナーのアメルダよ。店の娘たちからはビッグマムと呼ばれているわ」


「ビッグマム…」


口の中で小さく呟き、ハッとなった。


「そう言えば、アレックス王子は何処なのっ?!それに娼館て…一体どういう事なのよ?!何で私はこんなところにいるのっ?!」


すると、ビッグマムは眉をしかめた。


「全く…キャンキャンとうるさい声で鳴くわねぇ…もう少し小さな声で話せないのかい?まだ夜が明けないんだよ。店の娘たちがようやく眠りにつく時間なんだから、静かにしておくれよ」


言われて、窓の外を見ると外はまだ闇に包まれている。


「分かったわ。小さな声で話すから、教えてよ。どうして私はこんなところにいるの?一緒にいた仲間は何処なの?」


「ああ教えてやろう。さっきも言ったがここは娼館で、あんたは眠っている所を3人の男たちにここに連れてこられたのさ。あんたをここで働かせてくれと言って置いていったんだよ」


「な、なんですってーっ!!」


私が叫んだのは言うまでも無かった―。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ