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6-15 ランベールの子供の秘密とエルウィンの相談事

 翌日―


 すっかり体調の良くなったセリアが少し遅れて仕事場にやってきた。


「おはよう、アリアドネ」


糸紡ぎをしているアリアドネに声を掛けてきた。


「あ、おはようございます。セリアさん。もう体調は良くなったのですね?食堂で姿を見かけなかったので、まだ具合が悪いのかと思っていました」


「いいえ、大丈夫よ。エルウィン様に呼ばれてお城に行っていたの。それで今朝は皆と一緒に食事が出来なかったのよ」


そしてセリアはアリアドネの隣に座ると自分の持ち分の糸を紡ぎ始めた。


「そうだったのですか。エルウィン様に呼ばれていたので不在だったのですね」


スピンドルに羊毛を巻き取りながらアリアドネはセリアの話を聞いている。


「ええ、具合はどうかと色々尋ねてこられたわ。だからもう大丈夫ですと返事をしたの」


「エルウィン様はセリアさんのことが心配だったのですね」


「そうね。でも気にかけてもらえて嬉しいわ。私がエルウィン様の侍女をやめてもう10年にもなるのに、今も度々声を掛けてくれるから」


「余程エルウィン様はセリアさんを慕っているのでしょうね」


手際よく毛糸を紡ぎながらアリアドネは相槌を打ちながら思った。


(やっぱりエルウィン様は世間では恐ろしいイメージを持たれているけれども本当はお優しい方なのかもしれないわ)


「ありがとう、アリアドネ。私の代わりにエルウィン様の礼服を選んでくれて。お陰で助かったわ」


「いいえ、お礼を言われるほどのことではありませので…でもお役に立てて光栄です」


「ええ、きっとエルウィン様も喜ばれたと思うわ。ところで話は変わるけどね…」


その後もアリアドネとセリアは女同士の話に花を咲かせながら毛糸紬の仕事を続けた。




****


 同時刻―。



 シュミットとエルウィンは執務室で仕事をしていた。


「…なぁ、シュミット」


書類に目を通しながらエルウィンはシュミットに声を掛けた。


「はい、何でしょうか?エルウィン様」


シュミットは顔を上げてエルウィンを見た。


「今朝…久しぶりにセリアを私室に呼んで…一緒に朝食を食べたんだ。セリアの具合も悪かったし…叔父上の事でも話があったからな…。セリアも子供に会いたいのではないかと思ったし…。」


「…そうですね。それで?セリアさんはウリエル様に会えたのですか?」


「ああ。ウリエルだけ呼ぶのは変に怪しまれるだろうから…ミカエルも呼んだ。今朝は俺とミカエル、ウリエル、そしてセリアの4人で朝食を取ったのだ」


「ウリエル様の様子はどうでしたか?」


「いや、別に…いつもとあまり様子は変わらなかった。何しろミカエルもウリエルも叔父上とは殆ど顔も合わせること無く暮らしていたからな…。それにウリエルは自分の母親がセリアであることを知らない。だから不思議そうな顔でセリアを見ていた」


「…セリアさんは自分がウリエル様の母親であることを伝えるのを望まれてはいませんからね」


「ああ、そうだ。それに…セリアが叔父上との間に子供を産んだことを知っているのはほんの僅かな者たちだし…。叔父上の目もあったから、自由に会わせてはやれなかったが、もう亡くなったんだ。これからは少しずつ2人を会わせてやることが出来ればと思ったんだ」


「なるほど…。それは良い考えですね」


シュミットは頷いた。


「それで…その時に出た話だが…」


エルウィンは言いにくそうにシュミットを見た。


「エルウィン様?どうかしたのですか?」


「ああ…。セリアに言われたのだが…」


そこでゴホンとエルウィンは咳払いした。


「俺の式服を合わせてくれた…リア?だったか…お礼をしたのかを尋ねられたんだ。やはり…そういう場合、礼はするべきだったのだろうか?」


「お礼…ですか?」


(普通なら使用人が主の為に尽くすのは当然だが…一応アリアドネ様はエルウィン様の妻となるべきお方だったからな…それでセリアさんはそのようなことを口にしたのかもしれない)


そこでシュミットは言った。


「そうですね…。ですがお礼の言葉は述べられたので良いのではないですか?」


「う、うむ…。だがセリアに何という言葉で礼を述べたのか尋ねられたのだ。だから『今日は助かった』と述べたと言ったら、ため息をつかれてしまった。…やはり、その様な言い方ではまずかったのだろうか?」


エルウィンはいつになく真剣な眼差しをシュミットに向けてくる。


「…エルウィン様。ひょっとして…」


「何だ?」


「そんなにその女性のことが気になるのですか?」


「何?違うっ!そんなんじゃないっ!もういい…この話は終わりだ!」


エルウィンはムスッとした表情で、再び書類に目を落とした。


「エルウィン様…」


その様子を見てシュミットは思った。


(やはりエルウィン様はアリアドネ様のことが気になっているようだ…)


と―。







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