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愚か者のいい日旅立ち  作者: lstm
第一幕
6/25

第一幕 5


 レミとミコチはすぐに打ち解けあった。

 初対面からもうすぐ一週間経つが、もうすっかり仲良しさんだ。

 まあ、レミもミコチもお互いに人見知りするタイプではないし、物怖じするタイプでもないから、当然と言えば、当然だったが。二人とも僕と出会ってすぐに話すようになったわけだし。まあ、レミと僕の出会いは、穏便というわけではなかったけれど。

 レミはミコチのバラックに居候している。レミは居るだけで保護欲をそそるタイプだし、ミコチは頼れる姉御肌だから、もともと相性がよかったんだろう。

 ミコチは昼すぎから深夜まで用心棒の仕事だから、三人で過ごす時間はあまりなかったけれど、僕が知る限り、二人が一緒にいる時は、同性の友達が出来たのが二人とも嬉しかったのか、女子トークに花を咲かせているようだ。

 女子トークの間は二人ともすごく楽しそうで、こぼれるような笑顔で会話している。女子二人、水入らず、なんて言いたくなるほどに。

 だから、男の僕は二人の邪魔をしないように、聞き耳をなるべく立てないようにしながら、二人から少し離れたところから見るようにしている。

 レミはともかく、ミコチも女子トーク中にあんな笑顔になるなんて、少し以外だったが。ミコチもやっぱり女の子なんだなあ、とかシミジミ思ったり。

 ところで、僕とレミは生活時間帯が合うから、ギメルの店の前にたむろして、ダラダラおしゃべりするのが日課になった。

 聞くところによると、最近レミは仕事を探していたらしい。なんでも、ミコチはレミの居候をまんざらでもなく思っているらしいのだが、さすがに何もしないでゴロゴロしていられるほどレミは堕ちていなかったらしく、僕の知らない内にギメルに相談して、あちこち動き回っていたそうだ。

「猫だからイコール自堕落と決めつけるのは、安直過ぎますよ!レミちゃんは活力あふれる若者なのです!」

 とか言っていたっけ。この前までホームレスして、昼間っから寝ていたくせに。

 とはいえ、身元不明、保護者なしの猫耳謎っ娘を雇おうというまともな職場などあるはずもなく、結局は僕やミコチのような、ロクでもない仕事しか見つからないだろうと思うけれど。僕のは仕事と呼んで良いものかするわからないし。


 何にせよ、レミがこの街で僕らと暮らすようになってから一週間が経とうかという本日、ミコチの仕事が休みらしい本日を見計らってか、レミから僕とミコチに招集が掛かった。

 何やら「重大発表です!」かつ、「強制参加ですよ!」とのことらしい。今は昼過ぎ、もうすぐミコチが活動を開始する頃合いだから、そろそろ時間だろう。

 集合場所は、僕のボロ屋。

 実のところ、僕の部屋に来客があるなんてことはほとんど無いし、あまつさえ、女子が来るなんてことは今まで想定したことすらなかったゆえに、客人を迎えるためにはどうしたらよいのか、まったくわからないのである。

 だから、とりあえずのところとして、今までの人生では無援だった、お茶とお菓子というものを昨日のうちに買っておいて、さらに、今まで一年間まったくやったことのない、掃除というものを午前中から始めて今に至っている。もとがボロ屋だから掃除などしてもあまり見栄えが変わった気がしないけれど、こういうのは気持ちの問題だろう。

 たかがレミとミコチが部屋に来るからといって、どうしてこんなに気を使っているのか自分でもわからないが、とにかくどうやら、僕は今少し緊張しているらしい。いつも外では自然に話す仲の二人だけれど、自分の部屋に来るとなると、妙に彼女らが歳の近い女の子であることを意識してしまうものなんだなあ。

 などと無体なことを考えているうちにレミとミコチ降臨。

 ノックもせずに扉(の役割の板)を外して、勝手に中に入ってきた。

「よおーカイン!いるかー?」

「お邪魔しまーす!レミちゃんですよー!」

 いつも通りだ。

 初めての女子の来訪として、なんかちょっとイメージと違った気がするけれど、通常運転の二人に、僕の緊張もいい感じにほぐれた。

 レミはローブを新調してだいぶ小奇麗になった。

 相変わらず丈の短い黒のローブ姿だけれど。

 ミコチも相変わらず真っ赤な着物。

 脚部の大胆なスリットは乗馬や戦闘に対応するためのものだ。肩と脇の部分も剣を振るいやすいよう、に大きく開いている。肌がチラチラと覗いて結構色っぽいんだよなあ。

 ちなみに赤は帝国軍人の軍装の色で、意外にそういうところ気にしている筋もあるのかも知れない。

「やあミコチ、レミちゃん。入ってはいって、ってもう入ってきてるけど」

 二人は勝手にずけずけと部屋に入り込んで、じろじろと舐めるように中を見回している。

「いやー、カインの部屋初めて来たけど。しかしなんもねえな、お前の部屋!テーブルが一個だけ、他はなんも無し、ベッドも無しとはな……」

 ため息交じりにミコチが言う。

 そう。僕の部屋には小さいテーブル以外に家具が存在しない。 

「まあね。あんまり必要性を感じないというか。調度類は僕がここに住み着いてからほぼ変わっていないよ」

「でもちゃんと掃除されてるじゃないですか。ちょっと意外です」

 レミが褒めてくれた。ということにしておく。

 ええ。そりゃあ、午前中に必死に掃除したから。

 よかった、掃除しておいて。

「それに、ミコチの部屋も似たようなものじゃないですか?簡易ベッドが一つ増えるくらいですよ」

 そういえばミコチの部屋を見たことはないな。

 ふーん。ミコチも物欲なさそうだしな。

「ベッドが一つって、じゃあレミちゃんは床で寝てるの?僕のように?」

「そんなわけないじゃないですか。一緒に寝てるんですよ!ミコチと二人で!一つベッドの中!」

「な!ちょっ!言うなっ!」

 顔を赤らめるミコチ。肩を震わせ、恥じらっている。

「ミコチかわいいんですよ!夜寝てるときにですね、レミちゃんが後ろからおっぱいを揉むとですね、とってもかわいらしい声を出すんですよー!『んぁっ……だめぇ……』って」

 ミコチのモノマネをしながらレミが暴露する。

「なに!」

 っと僕。

「太ももをすりすりするとですね、とっても女の子らいしい小さな声でですね……、『ぁん……んっ……んっ……』って!腰に手をまわすと、そっと吐息を漏らしてですね……、『はあぁ……ん……』って!」

「ちょっ、レミ――言うなっ!」

 と、顔を真っ赤に染め、慌てて抗議するミコチ。両手をバタつかせて、全身で恥じらっている。

 なんだと。

 夜な夜なそんなけしからんことをしているのか君たちは。

 というか百合か。百合なのか。あらん方向で仲良くなりすぎだろ。

 どこへ行こうとしているんだ君たちは。

 ってかミコチ、実はドSではなかったのか。レミの方が攻めなのか。

 もう少し詳しく聞きたい気もやまやまだが、ミコチのプライバシーのためにこれ以上追及するのはやめておこう。

「で、レミちゃん。ミコチのお胸さんはやっぱり上等なのかい?」

 やめられなかった。気付いたらレミにひそひそ話で訊いていた。

「それはもう。こぼれんばかりでした」

 正直者のレミ。

「で、ではミコチのお太ももさんはいかがだったかな?」

「それはもう。なめらかできめ細かい肌が、美しい曲線をですね……」

 チラッとミコチが居た方を確認すると。

 さっきまでミコチが立っていたのに。

「!」

 修羅が立っていた。

 修羅がサーベルを抜いて立っていた。

「お、お前ら……い、いい加減に……しろ!」

 憤怒の化身に切り刻まれるかと思ったが、意外にも、ミコチは益々恥じらっていただけらしい。耳の先から胸まで真っ赤にして、なぜか内股でワナワナ震えていた。

「ごめんごめん。まあ、ミコチが意外に『受け』なのはわかったから。まあ、椅子なんてないけど、適当にその辺のブランケットを敷いて座ってよ。今日は二人が来るから、お菓子を用意しておいたよ。好きに食べて。今お茶淹れに、外のかまどに行ってくるからちょっと待ってて」

「な、なんだ、か、カインにしては気が利くな」

 サーベルを鞘に納めながらも、まだ顔の赤い、後遺症のミコチ。

「おおー!蜂蜜ケーキにラズベリーケーキじゃないですか!美味しそうですねー!食べていいんですか?カインありがとう!大好きです!」

「…………」

 猫耳をぴょこぴょこ跳ねさせながら、こぼれんばかりの笑顔を見せるレミ。餌付けされれば誰でも好きになるんじゃないか……。チキンサンドの時もそうだったし……。

 

 少しの間、二人を部屋に残して外へ出て、かまどへ向かう。さっき、火を焚いて湯を沸かしておいたから、あとはポットに注ぐだけだ。

 しかしミコチ変わったよなあ——、と思う。

 以前は、彼女に対して、根はいいヤツだけどちょっと荒っぽい、っていう印象しか受けることはなかった。しかし、レミが来てから、明るくなった、というか、柔らかくなった、というか。レミ風に言うならば、かわいらしくなった気がする。

 思えば、もうミコチとは一年くらいの付き合いになるけれど、一緒にお茶を飲むなんて、今日が初めてだ。それなりに顔を合わせる機会はあったけれど、お互いに、プライベートの話とかあんまりしなかったしなあ。

 それともやっぱり、今までの僕らがすさんでいた、ということなのだろうか。


――僕も、ミコチから見れば、変わっているってことなのかな……。


 レミのおかげで、一年前から止まっていた時計が、少しずつ動き始めたような気がして、淹れたてのお茶を抱え、ちょっとだけ前向きな気持ちで、二人のもとへ戻った。


「おーカイン、これ美味いな!」

 ケーキをモグモグしながら至福の笑顔で僕を迎えるミコチがいた。

 甘いもの好きだったのか。やっぱりミコチも女子だったんだなあ。

 買っておいてよかった。

「はい!美味しいです!それにこのお皿、えらく立派で高級そうですね!どうしたんですか、これ?」

 レミも甘味にご満悦のようだ。ついでにケーキの器にも興味津。

 まあ、僕の部屋にある食器類の出どころなんて全部一緒なんだけれど。

「ああ、それ。盗んだ」

「そりゃラッキーだったな!」

「はい!グッジョブです!」

 なんにせよ、基本的な倫理観は欠如しているんだよなあ……。僕たち。

 

 と、まあ、ケーキと僕が淹れたお茶をたしなみながら、たわいもないおしゃべりに興じて、一通りの時間を過ごしたあと、レミがおもむろに切り出した。

「さあ、本題です!ここからが本番です!いいですか?重大発表です!」

 そういえば、最初からそういう趣旨の会合だったな、今日は。

「レミちゃん、決めました!仕事ですよ!しごと!」

「へえ、どんな?」

 と僕が訊くと、

「じゃーん!これですよ、これ!」

 と言いながら、レミが十数枚の紙束を僕たちの方に放り投げた。

「ん?『賞金付き依頼手配書』?」

 紙束の一枚をしげしげと眺めながら、ミコチが首を傾げて訊いた。

「賞金稼ぎですよ!しょうきんかせぎ!三人でやるんです!」

 人差し指をビシッと立てながら、レミが説明を続ける。

「賞金稼ぎ、傭兵。呼びかたはいろいろありますけど、やることは一緒です!シンプルに依頼を受けて、片付けたら賞金を受け取るのです!いいですか!もうアテナイでみみっちい依頼を受けるだけの生活は終わりにするのです!」

 両手を広げて声を張り上げる、レミの演説会が始まっていた。

「ミコチはもう用心棒やら半殺し屋なんてやめてください!チンピラ女子なんてモテませんよ?」

「うっ!」

 っとミコチ。

「カインもギメルの舎弟なんて卒業してください!イマドキ流行りませんよそんなの!いつの時代ですか?」

「うっ!」

 っと僕。

「いいですか?これからはちゃんと認可された手配書の依頼を受けるのです!難易度は上がりますが、三人でこなせば余裕です!報酬も今までとは桁違いですよ?ちまちまコソコソ小銭を稼ぐのはもう終わりです!ビッグにドカーンと一発当てようではありませんか!」

 僕は無言で依頼の束を改めて眺める。


――えーっと。『賞金首』、『商船の護衛』、『猛獣の退治』、『エルサレムへの出征』、『港湾施設の警備』……。


 いろいろあるんだなあ。

 考えたこともなかったなあ。

 確かに、ずっとギメルの舎弟のままってわけにもいかないしなあ。

 レミが乗り気ならいいかもなあ。

 しかしレミって凄いよなあ。グイグイ来るよなあ。

 なんて考えながら、なんとなしに依頼を眺めていると、

「どうしたんですか?カイン。そんなに手配書とにらめっこして。卑猥な依頼はありませんよ?」

 通常運転レミの僕ディスを受けた。

「ミコチはどう思います?」

 レミがミコチの意見を訊いた。

「んん?そうだなあ。まあ今の用心棒も結局日雇いだしなあ。アタシも他に仕事のアテがあるわけでもねえし――。帝国公認の依頼なら、剣を振るう大義名分も出来るってか。いいんじゃねえか?アタシは賛成だぜ」

「で、カインはどう思います?」

 ほんとの話、レミとミコチなら多少危険な目にあっても大丈夫だろうし、せっかくレミが言い出してくれたことだし、この街でうろうろしているよりも、新しいことを始めるそぶりを見せることは、悪くはないんだろうと思う。

 深く考えるよりも、流されてしまうのも、いいかな。

「うん。僕も賛成だよ。異論なし。で、レミちゃんはこれといった依頼をもう決めてるの?」

「はい!これです!見てください!」

 と言って、レミが一枚の手配書を差し出す。


 え。

 その手配書は、余りにも僕の眼を引き、釘付けにした。

 なにこれ。うそ。

――『公募依頼『統治者の書』の奪還 賞金 金貨五百枚 皇帝璽』……。

 嘘だろ?

「どうです、これ?皇帝さん直々の依頼ですよ?本を取り戻すだけで金貨五百枚なんてお得です!太っ腹です!さすが皇帝さんです!いいじゃないですか?」

「ふうーん。『統治者の書』が盗まれたって?初めて知ったな。もっと大ごとになってもよさそうなのに。ひっそりと依頼が出てるのが逆にリアルっぽいってか?こりゃ掘り出し物だな、なっはっはー!」

「…………」

 ミコチは笑っているけれど、笑いごとではない、多分。

 『統治者の書』。

 皇帝に相応しき者と共にある書。皇帝の誓いの書。皇帝を縛る法典。

 帝国が現在の形に収まってから、六百年間変わらずに、皇族内で受け継がれてきたという統治の指南書だ。

 新皇帝は『統治者の書』に書かれた誓いを唱えなければ即位できないとされている。書は門外不出で、内容は皇帝や皇太子、一部の高級官僚や大法官のみが知るところだが、誓いを破る行為は皇帝といえども糾弾の根拠となり得てきた。実際に、歴史上何度か、時の愚帝を引きずり降ろす、宮廷クーデターの根拠ともなったこともある代物だ。

 その甲斐あってか知らないが、帝国始まって以来、皇帝の質を維持してきた書として、帝国領の安定を享受してきた民衆の信頼も厚い。誰も、書の内容を知らないのだけれど。

「皇帝の名で依頼が出てるのも、なんかリアル盗難っぽいな」

「皇太子さんが探しているなら、権力争いって感じがしますけどね!」

「…………」


 確かに、レミとミコチの言う通り、皇位継承争いの一環ならば、皇太子の名前で依頼が出そうだ。いずれにせよ、継承争いなら、皇太子が血眼になって書を探していなくてはおかしい。そもそも皇帝はまだまだ若い。宮廷内が揺れているなんて聞いたことないし、何よりギメルの情報網に伝わらないはずがない。

 宮廷争いとか、そんな可能性より、そんなことより。

 もっと、ありそうな可能性、もっと納得できる説明、信じるに値する筋書がある。

 僕は、知っているではないか。


「反乱軍だか革命軍だかっていう、あれ関係か?一年前に、帝国史上最悪の大反乱を起こしたっていう……」

「そうですね。なんたって、『統治者の書』ですから、政治犯の仕業でしょうね……」

「…………」

「じゃあ、反乱軍だか革命軍だかを当たるってのが基本的な筋になるってわけか?」

「そうですね。捜索の本筋は反乱軍の線でしょう……」

「…………」

 

 帝国宮殿に忍び込んで、『統治者の書』を盗むなんて荒唐無稽なこと。

 そんなこと考えるやつ、考えて実際に実行するやつ、実行して成功してしまうやつ。

 帝国領広しと言えど、そんなやつ、一人しかないことを、僕は知っている。

 あの人ならば、そんなこと、造作もなくやってのけることを、僕は知っている。

 ハナから、この事件の犯人なんて、僕には分かり切っているではないか。

 だから、『統治者の書』が今どこにあるかも、僕には分かり切っているではないか。


 では、どうしてこうなっている?

 どうして今、あの人に関する依頼が、僕に突き付けられている?

 はじめからあの人のことを知っているこの僕に?

 あの人に辿り着ける、唯一の人間である、この僕に?

 こんなことってあるのか?

 こんな偶然って、あるのか?


 偶然なんて馬鹿げている。

 誰かが、動き出している。

 僕が動いても、動かなくても。もう既に。

 罠かもしれない。

 でももし、昔の僕ではなく、今の僕でもなく。

 レミとミコチと一緒に、もう一つの生き方が、見つかるとしたなら――。

「……ン!……イン!おーいい!もしもーし!どうしたんだ?」

「大丈夫ですか?ボーっとしちゃって?」

 ミコチとレミが僕を呼ぶ声がして、ハッと我に返った。

 咄嗟に言葉が出る。 

「……え!ああ、ごめん。ちょっとね。ミコチの喘ぎ声のモノマネをするレミの喘ぎ声を思い出して興奮しちゃったみたいで……」

「!」

「…………」

 赤面するミコチと、げんなりするレミ。

「で、いつ出発する?僕にはこの依頼で異論は無いよ」

 覚悟が決まったからとか、使命に突き動かされてとかでは決してなく、どうするべきかわからないから、流されるままに――。

「出発は明日です!この手配書を見ているのがレミちゃん達だけとは限りませんからね、善は急げです!」

「あいよ。アタシも異論はないよ!」

「じゃあ、決まりです!」

「わかった」

 大したきっかけではなく、いつもの雑談のようなノリで――。

 僕の時間が、再び進み始める。

 一年前から止まっていた時間。

 歩みを止めた僕。アテナイにおける停滞。

 そんな僕を再び迎える世界とは、一体どんな顔をしているのだろうか。想像もつかない。でも、そんなことはどうでもいいことなのかもしれない。

 なぜなら僕は今、これから僕たちの身に起こる出来事のことなど、想像しようともしていないのだから。

 歩みを進めるべきかもしれないし、このまま立ち止まり続けているべきかもしれない。自分で考えて答えを出すべきなのだろう。しかし僕は、そんなことを考えようともせず、ただ、レミの言葉に従って――。


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