表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

女神様降臨

前回、主人公が関西弁話してましたが、母親や地元の人と話す時には、関西出身ということで関西弁になる設定でした。説明不足ですみません。

 食欲の秋である。


 相変わらず、食べることに敏感なレイカやキョウコの真っ二つに分かれた意見の争いに、傍観者と化している女は、既にどうにでもなれと諦めの境地である。


 更に面倒なのは、時々、泣き虫僕ちゃんこと“僕”(名前は不明)が二人の争いに巻き込まれて泣き出したり、タカシがそれを宥めつつ、女子(?)共の争いに茶々を入れてより争いがよりヒートアップしてと、結構なカオスなことだろうか。


 「誰かズバッと解決してくれないかな~。毎日堂々巡りで疲れる」と、現実に誰もいない一人部屋でゴロゴロしながらつぶやいてると、


 『あらあら、また堕落した生活送ってるわねぇ。レイカもキョウコも皆相変わらずだし』と、おっとりとした有閑マダムのようなお声が女の頭に響いてきた。



 私はガバッと飛び起きて、叫んだ!近所迷惑にならない程度に叫んだ!!


 「ユリエ~!待ってました!!!」



 今の女の表情に効果音をつけるなら、キラキラ2割増ししかないといわんばかりに、女は彼女が現れるのを待っていた。


 何故なら彼女こそが、このカオスでお手上げ状態な状況を救ってくれる確率が高い女神様だからである。



 ユリエはまず徐に、女の服を脱ぎ、体重計に乗った。数値は50kgジャスト。それが間違いでないのを確かめるように何回か体重計に乗って、誤差がないのを確認し、にっこり微笑んだ。


 『前回ワタシが確認したのは・・・7月の半ばだったかしら。あの時より8kg減ったのね。よく頑張ったわね』と、女に労いの言葉をかける。


 『レイカ、この子はあなたに一番気を遣って、断食に近い食事内容で頑張って体重を落としたのよ。この子のその努力は認めてあげて、多少でもいいから優しくしてあげて』と、今度はレイカに優しくお願いし、


 『キョウコ、この子はレイカに怯えながらも、あなたの意見も少しずつ取り入れて、レイカに怒られても耐えるつもりで間食したりしてたのよ。つまり、あなたのこともレイカとほぼ同列に気遣ってたってことを忘れないであげて』と、諭す。


 すると、レイカは舌打ちしながらもぷいっとそっぽを向いて黙り、キョウコは【はいはい】と仕方ないように溜息をついて、口をつぐむ。


 二人が争うのをやめたのを確認し、にっこり笑ってユリエは更に男性陣にも声を掛ける。


 『僕ちゃん、何がそんなに悲しいの?二人が仲良くしてくれないからかしら。だとしたら、僕ちゃんはとっても心の優しい子ね。もう泣き止んで、僕ちゃんの素敵な笑顔を見せてちょうだい』


 そう言われると、僕ちゃんはぐすぐす鼻をすすりながら泣き止み、ユリエに甘えた声で〈うん〉と返事をして、はにかんだ。


 『さて、タカシは・・・あなたならもっと早く穏便に皆を宥められたでしょうに、わざと茶々入れて面白がってたわね。あなたは性格は悪くないのに、時々すごく意地悪になるから、そういうところは直さないと駄目よ』


 《はは、なんか俺だけ駄目だしされてない?もっと他の奴らのように優しく宥めて欲しいな》と、少し期待外れだったのか肩をすくめる仕草をタカシは見せた。


 対するユリエは『あら、あなたにはワタシの優しさなんて必要ないでしょう?ワタシが居ない時に時々とはいえ、僕ちゃんを慰めてくれたり、レイカやキョウコの仲裁をしてくれてたの、ワタシはちゃあんと知ってるんだから。これでも頼りにしているのよ』と微笑んだ。


 タカシは自分でせびっておいて、ユリエに面と向かって素直に褒められて、決まりが悪くなったのか、顔を少し赤くして《これだから、ユリエには敵わない》とつぶやいて、明後日の方向を向いた。



 (すごい、あっという間に皆落ち着いてくれた!やっぱ。ユリエは皆のお姉さんだ!いや、むしろ女神様かも)


 「ユリエ、いつもながら有り難う。もうちょっとでこっちの気が狂いそうになってたから助かったわ。今日はお母さんもいないし、自分ではいっぱいいっぱいだったから」


 『ふふ、いいのよ。これがワタシの役目の一つなんだから。それより、いつも中々出てきてあげられなくてごめんなさいね』


 「ううん、いいの。たまにでも出てきてくれると嬉しいし。今日はしばらく私の話し相手になってくれる?」


 『ええ、もちろんよ。それもワタシのもう一つの役目ですからね』


 女はそれを聞いて安堵した。そして、気がつくと他の皆の人格が引っ込んでいて、ユリエだけが頭の中にいる。頭の中が賑やかなのも騒がしいのも慣れたつもりだったけど、やはり世話のかからない穏やかな優しい人格であるユリエと二人というのがとても安心する――一番は現実の母といる時だけど――。


 「ねえ、ユリエ、あのね・・・」


 『うん、なあに?』



 女はわかっている。これは普通じゃない安らぎだ。いくら本来の自分とは全く違う相手とはいえ、レイカもキョウコも、僕もタカシも・・・ユリエも皆、私一人から生まれた私の人格だ。端から見たら、自問自答して滑稽だったり、気が狂ってるようにしか見えないだろう。そして、担当医の言葉を信じるなら、まだまだ私が認知していない人格が私の中にいっぱいいる可能性がある。


 そのことに、自分が普通でない事に不安を感じないわけではない。しかし、女はユリエや母と対話することで、普通じゃなくてもいいんじゃないか、そもそも普通の基準って何よ?と開き直ってきている。


 普通じゃない、一般的じゃない、どんとこい。私の一度きりの人生で、この病気になったのも、何かの縁だ!克服できなくても最後まであがいてやろう。私なりの幸せの形を見つけるために。



 「ユリエ、私、幸せになれるかな?」


 『あら、ワタシやお母さん、それに他にもいっぱいあなたには味方がいるのよ。いつかレイカ達とも仲良く話せるようになるわ。そうしたら、とっても賑やかになって、楽しくなるわよ。ふふ、そうなったら、そういうあなたはどうなるかしら?』


 「さあ、そんなの想像もつかないわ。どうなるの?」



 ユリエは微笑みを深くして、女神様のように囁いた。


 『いつでもどこでも、現実ではひとりぼっちの時でも、あなたの中は賑やかで楽しくって満たされてる・・・こういうのも“幸せ”の形としてアリじゃない?』

一旦、ここで完結にします。登場させたかった人や人格、関係性、主人公の思いみたいなのは書けたかなと思うので。ネタはまだまだあるし、幅広い方にこの病気のやっかいさ、利点などを伝えていきたいので、また二部として、連載再開するやもしれません。

ややこしい会話文ばかりの拙作をお読みいただき、有り難うございました。特に応援ボタンやコメを頂き嬉しかったです。また、何かの形になった小説をお読みいただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ