エピソード0
閲覧ありがとうございます。
まずはこの話のそもそもの始まりをご覧ください。
「田舎でゆったりホテルでも経営しようかと思うの」
勇者と一緒に旅をして、魔王を倒したことにより自由を得た。
正直この5年は日本で暮らしていたあの頃よりも、毎日が忙しくて休む暇もなかった。
なんせこの勇者一行は全くもって危機感ゼロの能天気の集まりだったからだ。
召喚された当時は15歳だった私も、この勇者PTのみんなと旅したことによりこの国の現状や水準が5年で嫌というほど理解できた。
異世界召喚。
普通召喚されるのは勇者とか聖女とかのチート能力を持った人達だと思っていた。
そんな中、召喚された私は全く持ってチート能力は持っていなかった。また、神からのギフトやらも、アイテムボックスや鑑定、ステータスを見る能力もないこの世界にはないという。
おまけに言語理解不能のため、召喚された当時は言語の勉強から始まったのだ。
勉強は嫌いではないが理数系が得意だった私にとって、この国の言語は英語に似ているせいか、なかなか理解することができなかった。
1年間はほとんど国の国立図書館での勉学と魔法の練習で日常が過ぎてしまったのだ。
そして日々の努力のおかげで、国一と言われるほど魔法師、賢者と呼ばれるようになったのだ。
そんな努力の私とともに行動したのは完全に天才肌の勇者。
生まれた時から教会で育った引きこもり聖女。
そして国から剣豪と呼ばれるほど剣術を持った剣士。
努力よりも生まれた時から持っている才能を発揮する仲間とともに旅することは本当に大変だったといっておこう。
大変な旅の中にも一時の安らぎがあった。
それは宿屋でゆっくりと眠れることだった。おいしいごはんを食べてゆっくり寝る。
スローライフを夢見ていた私にとっては、何よりも幸せな一時だったのだ。
しかし、宿屋はあってもホテルはない。
異世界のここは、ホテルというものが一切なく、食堂や飲み屋の二階が宿屋になっていることが多く、私の世界にあったホテルという概念自体がなかった。
だからなのか、ふと旅が終わったら田舎でのんびりしながらホテルを経営したいと思ったのは。
「田舎でゆったりホテルでも経営しようかと思うの」
そういったときの仲間の顔を今でも覚えている。
元々聖女は旅が終わったら教会に戻ることは決定していた。
けれども、勇者と剣士は旅が終わったら一緒にギルドで活躍して仕事をしようと考えていたようだ。
そんな中での私の一言。
反対もされたし、考え直せとも何度も言われた。
けれども私の意思は変わらないとわかってくれたのか、最後には笑顔で送り出してくれた。
選別にと三人からそれぞれ送り物を戴き、それをリュックに入れて転移魔方陣に立つ。
「ホテルができたらぜひ遊びにきてね」
それが別れの言葉だった。
これから行くのはゲルフォニア王国最果ての地クローズド。
海と森に挟まれた王国一静かな町は、異世界からやってきた少女によって作られた異世界ホテルによって、活気ある交流の町へと姿を変える。
これはまだ誰も知らない、そんな町の始まりのお話。
閲覧ありがとうございます。
今回の0には名前がそもそも出てきていません。なぜなら今回の主役はホテルに出てくる人であって、勇者や聖女が主役ではないからです。話が出ていくにつれて名前もでてきますので楽しみにしていてください。また時間があったら賢者の旅なども書いていきたいと考えています。長くなるかと思いますがよろしくお願いいたします。