吾輩は売れっ子作家である。妻は元ギャルである。
誤字が多すぎたので改訂、再投稿しました
よろしく( `・∀・´)ノ
吾輩は底辺作家である。名前はまだ世間に認知されていない。
いつから小説を書き始めたのかとんと検討がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした高等学校の図書室でニヤニヤ笑いながらノートにペンを走らせて居た事丈ことだけは記憶して居る。
吾輩はこゝで始めてギャルというものを見た。しかも後で聞くとそれは白ギャルというギャル中で一番獰悪な種族であったそうだ。
このギャルというのは時々我々ヲタクを捕つかまえて「うわキっも、超ウけるんですけどー?」と言うという話である。
しかし、それなんどきは何という考かんがえもなかったから別段恐しいとも思はなかった。
ただ彼女の口車に載せられてスーと持ち上げられた時何だかフワフワした感じが有った許ばかりである。
口車に乗せられた上で少し落ち付いて彼女の顔を見たのが所謂いはゆるギャルというものゝ見始みはじめであろう。
此時このとき妙なものだと思った感じが今でも残って居る。
第一、校則に従えば、装飾されていない筈の顔がつるつるして毛穴が見えぬ。加えて毛の穴は見えないのに耳と鼻、加えて唇とヘソには余計な穴が開いている。
其後、黒ギャルにも大分逢ったがこんな穴あき人間には一度も出くわした事がない。
このギャルの掌のうちでしばらくはよい心持に座って居たが、暫くすると非常な速力でメイクし始めた。最後の趣味の悪い香水が漂ってくると胸が悪くなる。
悪臭地獄からは到底助からないと思っていると、どさりと音がして眼から火が出た。
それまでは記憶しているがあとは何の事やらいくら考え出そうとしても分らない。
ふと気が付いて見るとギャルは居ない。沢山あった本の一冊も見えぬ。肝心の図書室さえ姿を隱して仕舞った。そのうえ今迄いままでの所とは違って無暗に明るい。眼を開けて居いられぬ位だ。
此処は病院であった。
何でもようすがおかしいと、のそのそ這ひ出して見ると非常に痛い。吾輩はベッドから急に床の上へ落ちたのである。
やっとの思いで床からベッドに這い上がると向こうに大きなメロンがある。吾輩メロンの前に座ってどうしたらよかろうと考えて見た。
別に是これという答えも出ない。
暫くして座ってたら巡回の看護婦さんが吾輩の現状について説明してくれるかと考え付いた。
ニヤニヤと家から持ち出したラノベをカバンから取り出して読みつつ待って見たが誰も来ない。其内そのうちメロンの上をさらさらと風が渡って日が暮れかゝる。
腹が非常に減って来た。食いたくてもメロンは直では無理だ。
病人食ではきっと足りぬことなど分かっている。
仕方がない、何でもよいから食物くいもののある所まで行こうと決心をして財布とスマホを持って歩き始めた。どうも非常に苦しい。そこを我慢して無理やりに歩いて行くと漸くの事で何となく購買のような所へ出た。
此所(こゝ)へ入ったら、どうにかなると思つて自動ドアから、とある院内マーケットにもぐり込んだ。
そこには、なぜだか妙に既視感のある少女がいたのである。
縁は不思議なもので、もしこの時、吾輩の腹が減っていなかったなら、吾輩は遂に彼女と再会することも無かったかもしれないのである。
一樹の蔭かげとはよく言ったものだ。此この病院で交わしたアドレスは、今日こんにちに至る迄、吾輩と彼女との連絡先となっている。
さて、とりあえず其の少女に声をかけてみたモノの、是から先どうして善いいか分らない。
そのうちに互いの表情は暗くなる、腹は減る、会話は弾まない、冗談は寒いという始末でもう一言も言葉が出なくなった。
仕方がないから単刀直入にモノを申してみた。今から考えると其時は既にその少女に惚れていたのだ。
吾輩は、「あなたは図書室にいたギャルではありませんか?」と、問うてみた。少女は驚いた様子であった。
まず、その時の少女の見た目は黒髪ロングのストレートに薄化粧、第一ボタンを開ける程度の着崩しに、ひざ上5センチ程度のスカートであった。
そして、先ほどまで最近の天気やらこの病院の名前やら当たり障りのないつまらない話ばかりをしていた男が急に清楚な少女に向かって頓珍漢としか思えぬ発言をしたことに驚いたようであった。
少女の返答は意外や意外、「是」。肯定であった。
そこで吾輩は何をトチ狂ったか、彼女に告白してしまった。
「一目惚れしてしまいました。吾輩と付き合ってください!」
数秒の間、周りからは好奇の目線に晒される。当たり前である。ここは病院の購買のマーケットの入り口付近、いくら病院内とはいえ人はそれなりにいるのである。
いや此れは駄目だと思ったから眼をつぶって運を天に任せて居た。
しかし、彼女の返答はまたしても「是」。肯定であった。
こうして返答をもらってから、やつと胸の痞つかえが下おり、吾輩は幸せと興奮で周りの視線が気にならなくなっていた。
吾輩が最後にアドレスを交換し終えたときに、病院の看護婦が騷々しい何だと言いながら出て来た。
吾輩が気が付かなかっただけで、周りは他の病人に囲まれ、口笛とヒューヒューという声が遠くのナースステーションに聞こえるほどだったようだ。
看護婦は吾輩を引っ張って、元居た病室の方へ向けて連れて行った。その看護婦によれば、吾輩は香水の合成香料アレルギーとのことである。
吾輩は鼻の下を伸ばしながら、一人だけ増えたスマホのアドレス帳を暫く眺めていたが、やがてそれなら早速連絡を入れようと思い立った。
LIN〇にて吾輩は声をかけた。
(こんにちは貴女の彼氏です。>
かくして吾輩は遂に彼女を自分の伴侶と決める事にしたのである。
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十年の時が経ち、吾輩たち二人の関係は彼氏彼女から夫と妻になった。
吾輩の書いた小説ラノベは飛ぶように売れ、ついにはアニメ化作家の仲間入りである。視聴率もグッズの売り上げも上々である。
妻はすっかり大人しくなり、今では料理上手な優しい一児の母である。
将来娘に吾輩と妻が何者かを聞かれたらこう答える腹積もりである。
吾輩は売れっ子作家である。妻は元ギャルである。
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http://www.geocities.jp/sybrma/42souseki.neko.html
こちらで元ネタを見ながら読むともっと面白い(かも・・・)
個人的には「ニャーニャー」を「ニヤニヤ」にしたところを気に入っています。
名作の描写力の高さに圧倒されました。