ねた子はおこすな 千 ※BL
全六話
施錠音を聞いて。目をあけた。
頭を上げるとちょうど扉の灯りが消えた。そのまま、またシーツに沈みこんだ。
低い天井。とってつけた間接照明。鼻につく清潔感。
これに自分以外の体温と体臭がまざれば、色気のない部屋も一気にヤラシイ空間へと変わる。 ……。
かーっ。
あーっ。
完全なる不完全燃焼。散らせきれなかった熱がナカでくすぶってる。まだ足んねぇって。
帰るのもめんどくせぇー。
これもそれも、「初モノ」なんかに手ぇ出すから。しかもノンケとか。
まぁ、それなりにたのしませてもらいましたけどー。
ベッドでのいきおいはウソのように。身支度から部屋を出るまで。たてる音の小ささは気づかいからか、うしろめたさから、か。デカイ図体して。
さすがにね、われにかえったらビビるよね、男同士、で。とか。
女にモテそうだとおもった。
はなやかなルックスではないけど。男、雄クサイっつうか。見ためだけでいえばそういうのとは真逆な印象なのに。
誘い文句を吐いたのはあしらうためで。タイプだと言ったのはリップサービスじゃなく本心からで。
かえってきたまさかの反応。くってイイならくうよねそりゃ。
お。サイドボードにメモ発見。
──仕事が早いので出ます 唐渡
ふーん。 ……カラワタリ。 ……カラト。 ……トワタリ?
ふーん。律儀なこと。
つか、電話番号まであんじゃん。もしかしてハマっちゃった? やめとけやめとけ。ゴメンねー。連絡しないよ。社交辞令みたいなモンだろうけどさー。
んー。
意外。なんか無防備。ついでに、キレイでていねいな文字。
タイプの顔。肌感もよかった。いまのとこヤバい趣味もちではなさそう。一回きりはもったいない? かも。
カーテンから夜がのぞく。
地上が明るいほど月も星も遠い。
歩くことはできても。似かよってばかりの顔を見わけるのはむずかしい。
えらそうに。自分のことも見失うくせにひとのことなんて。それにどうせ。
そのうちわすれる。
うまいも。不味いも。快感も。苦痛も。
喉もとすぎれば記憶から消える。
だからなんども欲しがって、なんどでもくりかえしてしまう。
今夜の熱もわすれていく。
さっきまで抱きあってた男も。俺も。これまでとおなじように。
ただ。
ねる。おきる。またねて。またおきて。
それだけのこと。
だから眠れればいい。
人肌に溺れて。
快楽に理性を焼き切らせ。
重くなった身体を抱え。
深い眠りにおちるための行為くらいでいい。
ほかに意味なんていらない。
──からっぽ。
つか、ねるためにだれかとねるって。ヘンなの。
ただのスキモンだろーがよ。
ああ。そう。
行為中。なんとなくで。見上げた先の前髪をすくった。熱のこもったあの目にはゾクッときて。悪くなかった。
────ふぁぁ。 …………あ。
眠れたことを目覚めて知った。それも、おもいのほか。なんか笑いながらおちてったような。
ほんと。意外。