<能力>②
【赤柱 信】
2xxxの4月と11日。昼寝するには良い気温の月。だが、オレは4月が嫌いである。
特に今年の4月は16年間史上で最も嫌いになること間違いなしの4月である。
理由は2つ。1つ目の理由は、単純に学校は面白くない上に面倒なのだ。
'18年間生きて8年しか通ってない奴が何を言うか'と言われそうだ。
ちゃんとした理屈はある。友人関係が面倒なのだ。今日から入学し、3年通学する高校は全く知り合いがいない所である。その為、友人登録者数0の状態で学校生活が始まる。
4月に友人を作れなければ、その後の生活や行事に支障をきたすことが多い。
ちなみにこれは体験談であるから事実である。小学校時代はこの件で散々な目に遭っている。
2つ目の理由は、通うのが義父の卒業した学校であるからである。名を<能力育成機関高等学校-関東校>。
<能力>の力で世の中の平和を云々と謳っている、<能力部隊>に所属する隊員を育成するための教育機関。
ちなみにこの手の高校は日本全国で8校。と詳しくは知らないが中等部が在るとかないとか。
この高校が設立されたのが、確か12年前。オレが4,5歳ぐらいの時。
大規模な戦闘の跡地に作られ、そのようなことが二度と起きないようにという事で設立。
関東校は最初に建てられた能力関係最古の高校であり最も人数が多い。
前日は入学式等々で早帰りだった。当然やるのはネトゲある。数週間前にめでたく2周年を迎えたはずのタイトルの突然の終了宣言。終了時期は3か月後ともう直である。そういう訳で、仲間同士で遊びまくった。
(調子こいて28時までやるじゃなかったな……)
と後悔しつつ通学路を歩いていく。
「やっ、おはよ~」
猫背に近い状態で歩いていたオレを背後から押してくる。
彼女は紫花来華。簡単に言えば幼馴染である。オレよりも学業成績は良く、運動神経は中の上ぐらい。容姿も多分普通ぐらいか。赤に近い緋色の紙で短髪。で、<能力>持ちである。
「小学1年から中学1年時代と変わらず、朝は眠そうでやる気がないね」
「自宅通いを舐めるなよ」
「それは関係ないでしょ。また、ゲーム?」
さすが、正しい読みである。と言っても彼女にはオレの次の行動が見えているのだから、当然と言えば当然であり、読みとは違うか。
「自宅通いじゃなくて、学校寮にすればいいのに」
「そんな素晴らしいモノがあったのか。でもなー」
「『人間関係が面倒』ってところ?」
「そうだ」
学校案内パンフレットを確認した際に載っていた学生寮は一部屋2名で使用するタイプのだった。
これでは関係構築スキル値:0のオレでは数時間も経たないうちに自主退去をする。
そういう訳で、通学を拒否していたが、義父は近場のマンションの一室借りたらしい。
<能力部隊>の仕事は、絶えず起きる争いを止める事や市街で起きる事件/事故の対応。危険な分、払いが良いのだ。そういう訳である程度の出費は訳ないらしい。何だか嵌められた気がするが、特に不自由はしていない。
「入学式の次の日って何かワクワク……」
「しない。断じてしない。そもそも面白みがない」
「そう言うと思ったよ。でも、始業初日から寝てたらまずいと思うよ」
「その点は心配ない。録音機を持参しているからな。その他対策は万全だ」
「さいで」
だが、この数時間後。それは全く意味をなさないことを思い知らされる。
2017/07/03