黒騎士様の友達
「ねぇねぇ~、海は僕の事好きなの?」
この笑顔に騙されてはいけない。
「あはっ!…それとも黒騎士様が好きなのかな?」
「どっちもちげーよ」
生徒会書記の風見は爽やかに笑う。
この世の明るさを凝縮したような笑顔だが、本心はこの世の闇を濃縮したような腹黒さを持っている。
なぜこんなに風見に詳しいかと言うと、俺とこいつは幼なじみ。どんなに笑顔が素敵でも、風見の本心は怖い。
生徒会に入れば、『雪の女帝』である松方滴に仕えなければならないが何処吹く風とばかりに、毎日ご機嫌だ。不気味なくらい。
あの女帝に無能呼ばわりされて、何人も書記が代替されていったのに…なんでた。
「理由?
んっとねぇ〜滴様ってさぁ〜僕の性癖に合致しちゃってそそられちゃうんだよ〜!
……あのプライドへし折って、絶望してる泣き顔とか想像するとぉ~……も〜たまんな~いっ!」
最悪だ。
顔が青ざめていくのを感じる。
そんな事であの魔宮に通っているのか。
だがあの女帝は、こいつを一度も無能と蹴り倒したことはない。必要以上に頭が回る奴なのだ。
「僕は滴様が好きなんだぁ。
……でも〜『黒騎士様』は嫌ぁい」
『黒騎士』とは女帝の双子の兄。そして俺の友。
男女共に崇拝者が多数いる彼だが、その人気ゆえに孤独。
黒騎士というのは去年やった役で、伝説の舞台となっている。
本人は黒歴史のように感じているが、満の人気を不動にした歴史的出来事となった。
俺は満と席が隣だったので話す機会があったのだが、思っていたより寂しそうな奴だった。
その過敏な被害妄想がほっとけなくて、つい声をかけてしまう。
最初は怯えていたが、ようやく俺に慣れてくれた。
これで友達が増えればいいのだけれど。
「海とはずっと一緒だったけどぉ〜まさかこんな形で対立するとはねぇ〜!」
風見は人差し指で俺の額を突つく。
対立してるのはお前だけだ。
「でも海が滴様を好きになんなくて良かったぁ〜!あはっ!
僕もありとあらゆるヤバイ手を使って潰すとこだったからね♪」
…悪魔の笑顔に見える。
女帝も教師陣を潰して無敵状態だが、
案外こいつが天敵なのかもしれない。