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Episode.5(中編)
無口のまま後ろをついてゆくと、雑居ビルの裏口に着いた。
錆びた扉を開けて、階段を下りてゆくと目の前に頑丈そうな扉が、赤い光に浮彫になった。
「ここよ」
扉を押して中に入ると、閑散としたライブハウスの裏側だった。
よっ、ほのか、と黒髪の背の高い男性が話しかけてくる。
「アレは?」
「待ってるよ。此れだろ」
処方箋と書かれた薬の袋を5つ渡し、引き換えに茶封筒を渡す。
「ソロモンの肯定書は?」
「あいかわらずだ、奥にいる」
そのまま奥くに進んでゆく。
「彼は櫻木京一郎。現役の医師よ」
ただうなずくだけだった。
「さぁ、いらっしゃい」
あたりにいる人たちが笑いながら見ている。
「肯定書に会わしてあげる、君がどんな物語を持っているのか」
まぁ、君がその意志がないならすぐに、と耳元でささやかれる。
「まて、姫っ!」
カウンターの下から眼鏡の男性が現れる。
「更科どうした?」
「あれに会わせるのか?」
もちろんだ、とうなずくと、更科は「訳が分からない」と言ったのを、無視する形でそのまま奥に行く。




