Episode.3
<00>
「しかし、よく耐えれるね……私もビックリだよ。本当に」とカルテを見ながら言う。
医者は深く椅子に座りなおす。
「……私が欲しいのは薬だけ。≪呪われた過去≫を、払拭できればいいの。あの事件のことを少しでも、忘れたいの」
それはわかった、と医者は言って、カルテにいつもの薬の名前を書き込む。
……ありがとうございます。と言い立ち去る。
診察室を出ると、面倒を見る更科が診察室の壁に寄りかかっていた。
何の用?と尋ねる間もなく、一枚の写真と紙が目の前に出される。
「新しい仕事?」
更科は頷く。
わかった。と言って写真と紙を奪うって、鞄の中に入れる。
「学校もろくに行ってないだろ最近」
「なに、私に指図?」
「いえ、学業に差しさわりのない程度にしてください」
睨みつけて速足で立ち去る。
調査は順調で楽だったわ……、と言って更科との電話を切る。
<02>
仕事の帰りのその足で、両親と姉妹が眠る、お墓へ行く。
花をお墓に手向けて、手を合わせる。
「パパママ、唯緒……ごめんね……」
砂利を踏む音が聞こえる。
背筋に何か鋭い何かが、あてがわれるのが、わかった。
両手を上げろ、と野太い声がささやく。
……人の霊前で、よくそんな行為ができるな、と言って振り向くと顔に強衝撃をくらう。
「どこまで、阿呆なんだ。十六年前も」
胸倉をつかみ、持ち上げられる。
「軽いな……。酷く軽い」
切れた唇を袖で拭い、「うるさい」と呟く。
「すべての≪始まり(元凶)≫」はお前なんだ。そして、私がこうなったのもお前のせいだ!」
少しの間を開けて「このためにとっておいた。≪私の贖罪≫それは、お前を殺すこと。そして、それは家族への弔いと同等の行為になる」
「戯けが、この馬鹿娘」と男は言い胸倉をつかんだまま、墓標に向けて投げ捨てられた。
男は寄ってきて、肩を踏みつつ「お前も≪魔女の権利≫を受けたのか」と言って立ち去った。




