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祭りの翌日

――寝過ぎた……?


さっきまで闇に閉ざされていたはずの窓枠の中は、すっかり陽の光に満たされ

窓の外には蝉の声が重なって響いていた。

カーテンの隙間から差し込む光が、陽が高くなっていることを教えてくる。

布団の中で一度だけ寝返りをうち、天井を見上げる。

見慣れた木目、自分の部屋。


「え……やば」


小さくつぶやいて、ガバッと上体を起こす。

歌番組を流していたはずのテレビは、いつの間にかニュースに切り替わっていた。

『――今日の天気は、午後から一部地域でにわか雨の可能性があります。』


ぼんやりと音だけを聞きながら、頭の中で時間を数える。

多分、十時間くらい寝ていたかも……。

どうりで、変に頭がすっきりしているわけだ。


ベッドから出て窓を少しだけ開けると、湿った夏の風が入り込み、セミの鳴き声が一層近くなる。

『――昨晩、県内山間部で土砂崩れが発生しましたが、巻き込まれた方はいないとのことです』

ニュースは淡々と、いつも通りの調子で流れている。

私はそれを背中で聞き流しながら、洗面所の鏡と向き合う。

いつも通りに少し跳ねた寝ぐせと、まだ完全に覚めきっていない目。


蛇口を開けると、勢いよく水が流れ出す。

両手で受け止め、溜めた水をそのまま顔にかけた。

冷たさが一瞬で広がって、眠気がまとめて吹き飛ぶ。

水滴が頬を伝わって落ちていくのを感じながら、私は大きく息を吐いた。



「だからでっかい音の目覚まし買っとけって言ったろ、小夜(さよ)

町の少し外れにある神社の境内。

朝と言うには少し遅く、昼と言うにはまだ早い、中途半端な時間。

境内に並べられた石段に腰をかけ。幼馴染の日向(ひなた)は呆れたように言った。


「まさか寝過ごすなんて思わなくて……」

「あれだけ楽しみにしてたのにな、祭り」

そう、昨晩はこの町のお祭りだったのだ。

毎年楽しみにしていて、準備段階からワクワクしながら当日を待ち遠しく思っていた。

新しい浴衣を用意し、出店で何をどの順番で食べるかまで考えていたのに……。

いつの間にか寝てしまい、そのまま朝までぐっすり、というわけだ。


「そいえば、おばさんたち昨日から出かけてるんだっけ?」

「そうなんだよねー、油断してた。色々楽しみにしていたことあったのに……」

戻らない時間を後悔していると

「まぁさ、一週間後に花火あるだろ、それで取り返そうぜ」

私の落ち込みが予想以上だったのか、日向(ひなた)がフォローしてくる。


「んー……じゃあ、今度はちゃんと約束しよ」

「お、珍しいな」


日向(ひなた)とはいつもこんな感じだった。

約束はしないけど、会える気がしている。

どちらとも勝手に向かい、偶然会えたら「やっぱりな」と笑う。

この町……いや村か?

見栄を張って街なんて言っているけど、実際は村の方がしっくりくる規模だ。

遊ぶとこも少なくて、季節のイベントなんて限られている。

だから、こういう日は大体みんな同じ場所に集まる。

運命的な雰囲気のように言ったが、会えるのは偶然ではなく、ほぼ必然なのだ。


でも、もし昨日ちゃんと約束していたら。

日向(ひなた)は家まで来たかもしれないし、電話で起こしてくれたかもしれない。

そう考えると、やっぱり悔しさがこみ上げてくる。

少しだけ考え込みながら日向(ひなた)を見ていると、日向(ひなた)は「なんだよ」と怪訝な顔をした。


「やっぱ昨日寝過ごしたのって日向(ひなた)のせいじゃない?」

「なんでだよ!」

即座に返ってきたツッコミに思わず口元が緩む・

そんなやり取りをしていると、少しだけ気が紛れてくるように思えた。


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