1杯目ー中編ー
前編勢いで投稿したので、申し訳ございませんが、修正しております。
もし続けて読んでくださってる方がいらっしゃったら、再度前編から見ていただけるとありがたいです。
がむしゃらに走る。
心臓は激しく鼓動し、呼吸は乱れていた。
「何年ぶりだろ」
ふとつぶやいた。
会社に遅刻しそうな時だってよく走っていたはずなのに、胸の奥で目覚める感情は、どこか懐かしく、でもずっと遠い場所にあったものだった。
心地良い疲労を感じながら、リカコは常連のお婆さんを探し回った。
「あ、あの!すみません!」
最寄駅の改札に入るお婆さんを見つけた瞬間声が飛び出す。
「あら、リカコさん。どうしたのそんなに慌てて」
息も絶え絶え、汗で髪が額に張り付いた私を見て、お婆さんは少し呆れたように笑った。
「やります、おまじない。私にやらせてください!」
お婆さんと談笑しながらお店の玄関に着いた。
「あ。」
看板はOPENのままだったし、鍵もかけ忘れていた。
「どうしたの?」
お婆さんの心配そうな声を背に、私はただ何でもないですと答えドアを開けた。
「お、間に合ったようだな」
お店のドアを開けると、フクロウの置物が得意げに顔を向けた。
「お前、鍵かけんの忘れてっただろ。安心しな。誰も店に来てないから。」
「あんたが焦らせたんでしょ!」
小さな口論に、お婆さんが不思議そうな顔でこちらを見つめる。
何でもないですと微笑み、席に案内した。
キッチンに入り、小声で問いかけた。
「あんたの声って私以外に聞こえないの?」
「俺の声はリカコにしか聞こえないよ。まあそんなことは置いといて。まずはおまじない。お婆さんが何をして欲しいのか聞いてこいよ。」
なんか偉そうだな。
そう思いつつお婆さんの席に向かった。
「あの、おまじないの件だったんですけど。どうしておまじないをして欲しいんですか?」
キッチンから微かに小言が聞こえたような気がするけど、今は無視しておこう。
「あぁ、そうよね。実はね、今日私の夫の命日なのよ。」
少し悲しそうにお婆さんは告げた。
「今日は特別な日だったんですね。」
「ええ。よく2人でここに来ていたのよ。ここでコーヒーを飲んでいるうちに、どうしてもあの人のこともっと鮮明に思い返したくて、前にカヨコさんがおまじないをしているって聞いたから。」
おまじないに頼ってしまいたくなるほどだったんだ。
魔法が使えるかは分からない。
でも、できなくても、せめて最大限は尽くしたい。
「そうだったんですね。分かりました。私がなんとかしてみます!」
キッチンに戻るとフクロウの置物は、目を細め、待っていたとでも言いたげだ。
「話は聞いていたぞ。そこの引き出しを開けてみろ。今のお前に役立つものがある。」
言われた通りに引き出しを開けると、そこには手書きのレシピノート。
コーヒーのシミが所々に残り、使い込まれた後が歴史を語る。
「役立つものってレシピじゃん。」
「みなまで言うな。中を読んでみろ。」
表紙をめくると、一枚の紙が挟んであった。
母の字でこう書かれている
『リカコちゃんへ、このレシピがあなたの魔法の手助|けになることを祈って託します。追伸 偉そうなフクロウの置物はホウ助って呼んであげてください。』
「あなたホウ助って言うのね。」
フクロウは得意げに羽を広げた。




