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火星ダンジョン英雄譚 ー英雄だったおっさん、全人類に魔王と呼ばれ討伐対象にされるー  作者: 八夢詩斗
第一章 「俺が魔王とかマジで本当に嫌なんだけど?」
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第6話 【掲示板】「ドラゴンライダーじゃなくてドラゴンホリダー!?」

 お待ちかねのあの時間だ。やっとこの時間がやってきた! そう! 毎日恒例、「オンラインテレビ電話 with 愛しき天使たち」のお時間である!


 中間考査が終わった夜。俺はドラゴン戦の余韻に浸りつつもこの時間のために頑張って起きていた。いやあ、めっちゃ怖かったわ、あのドラゴン。2度と会うのはごめんだね。


 そして時はきた。俺はうっきうきでオンライン電話をかける。何と言っても今日の試験内容は全国に配信されていたのだ。ベイビーたちもパパの活躍を、その眼を画面にこすりつける勢いで見ていたはずである。いや、もうすりすりしていたに違いない。


「お疲れ! マイスウィート!」


「ぱぱ! こんばんは!」


 ああ、画面には麗しきマユミがぶんぶんと手を振っている。覚えたての”こんばんは”を使ってみたのだろう……。なんて可愛い生物なんだ。プラトンだか誰かが探していたイデアは彼女に違いない。


「まゆちゃーん! 元気だった~!?」


「うん! パパも元気でよかった!」


 きっと今日の配信を見ていてくれたんだろうな。疲れ果てた俺のゾンビみたいな顔を想像していたに違いない。確かにさっきまではまるで、干からびたかんぴょうみたいになっていた(干からびてない干瓢ってなんだ? ピョウか?)。だがしかし! この天使の笑顔を見てしまえば疲れなど、吾輩の辞書はおろか全世界の辞書からその存在がなかったことになるだろう。


「パパ、お疲れ様!」

 

 そして、天使(まゆみ)の後ろからまばゆき女神が降臨なされた。俺は毎度のことながらスクショした。5連打ァ! とばかりに連射である。ああ、また俺の写真フォルダに聖なる画像が増えてしまったぜ!


「結月もお疲れサマンサタバサ! 今日も今日とて綺麗だよ」


 俺が下手なウィンクをすると彼女は照れ臭そうに笑う。と同時に俺はまたスクショしていた。あー可愛い。もう止まらないよね!


「……見てたよ、今日の配信。すごかったじゃん」


「パパ、どらごんさんに乗ってたもんね!」


 ふふふ、俺は勝ち誇ったように笑う。やはり我が活躍をその眼に焼き付けてしまったようだな。俺の華麗なるドラゴンライドを!


「どらごんほりだーってみんないってたよ!」


 ? ドラゴンライダーじゃなくて?


「っふふ。そうそう。コメントも盛り上がってたよ」


 2人はニコニコ笑う。まあ確かにドラゴンを乗りこなしていたわけではない。むしろ寄生虫の如き卑しい姿を晒していたと言われればその通りである。まあドラゴンジラミとかよりはマシか。


「そっかードラゴンライダーの予定だったけど、ま、いっか! まゆまゆはどう思った?」


「んーとねぇ……かっこよかった! よーちえんのみんなに、あしたじまんする!」


 俺は涙が出そうになるのを少し抑える。よかった。かっこいい自慢のパパと思ってもらえて。マユミも御年6歳。幼稚園の年長さんか~。


伊良原(いるはら)さんがやられちゃったときはやばっ! って思ったけどね~! 他のチームもあのドラゴンに結構やられちゃってたし」


「俺もあの時はオワタ―って思ったよ。ま、でも俺の天才的発想によって見事に切り抜けたけどね!」


「パパてんさい! さすがえーゆーさん!」


 ズキュウウウン! 生きててよかった。やはり直接会って抱きしめなくてはなるまい。画面越しでこの破壊力では俺の身が果たして持つかどうか……いっそ死んでもいいな。世に言うキュン死ってやつ。


「よーし! 明日からパパお休みだから、一緒に遊ぶぞおおお!」


「そうなの?」とママに尋ねた後、マユミは飛び跳ねて喜んだ。俺も飛び跳ねた。その様子をママ(ゆづき)は微笑ましく見守っている。いつも負担をかけるな……でも英雄になればお金もきちんと出るんだ。訓練期間はあと半年。もう少しだけ待っててね。


 こうして家族電話はマユミがお(ねむ)になるまで続いた。ぶっちゃけ俺もお眠である。


「今日は、かっこよかったよ。でも本当にハラハラしちゃった。あんまり無茶はしないでね」


「大丈夫! 俺は絶対死なないよ! だからもう少しだけ、ごめんね……」


 娘を寝かせ、結月と2人で少しだけ話をした。妻は控えめで俺のことをいつも尊重してくれる。俺がどんなにふざけても笑ってくれる。どれだけ迷惑をかけただろう。それでもいつも微笑んで背中を押してくれる。だから俺はガンバレるのだ。俺1人の人生なら英雄なんて考えもしなかっただろう。


「うん……約束だよ。死んじゃったら許さないから……。おやすみ」


「約束だ! また明日ね! おやすみ!」


 俺がグーサインを送ると彼女もグーサインで返してくれた。本当に俺にはもったいないくらいの妻である。幸せだなあ。


 俺は名残惜しさもありながら、通話を終えた。途端にどっと疲れが押し寄せる。そのままベッドに寝転ぶと、スマホをいじった。さて、ドラゴンホリダーね……。俺は”英雄まとめ速報”を開き、第八期英雄候補のスレッドをタップした。お! あったあった……って何このタイトル。やべえ……でもこれはミノムっちゃんのせいだな。


「【朗報】チームイルミナティ、ドラゴンに遭遇した結果w→おっさんがソロ攻略w」


 あっちゃあ、チーム名がイルミナティになっちゃってるじゃん。俺は言ってないよね? 多分。てかおっさんって俺の事だよなあ? まったく民度が低いぞスレ民たちよ! 俺はこう見えても34歳! まあ確かに候補生の中では最年長だし? 娘もいるし? 相対性理論で言えばおっさんかもしれんが……。


 俺はそのままそのスレを開いた。とにかく読んでやろうじゃないか。


 ――――――――


【朗報】チームイルミナティ、ドラゴンに遭遇した結果w→おっさんがソロ攻略w


 1:名無しの英雄 

 おっさんがドラゴンホリダーとしてデビュー戦を飾るw


 2:名無しの英雄

 パワーワード多すぎだろこのチームw


 3:名無しの英雄

 それなw イルミナティw


 4:名無しの英雄

 考えた奴おっさんだろw 村田実は絶対思いつかなそうやし


 5:名無しの英雄

 実が言ってたんだけどね


 6:名無しの英雄

 >>5

 でも発祥はおっさんやろ多分w


 7:名無しの英雄

 それで言ったら兄もイルミナティw

 伊良原湊斗いるはらみなと→イルミナティ

 

 8:名無しの英雄

 伊良原家自体がマジで秘密結社説


 9:名無しの英雄

 あいつらぐう有能やもんな


 10:名無しの英雄

 兄はガチ有能。妹は戦闘だけ


 11:名無しの英雄

 >>10

 なんでや! 美奈たんツンデレやぞ?


 12:名無しの英雄

 でも実際今回の戦犯はイルミナティ

 泣いてたのは可愛かった


 13:名無しの英雄

 イルミナティがゲシュタルト崩壊してきたw


 14:名無しの英雄

 マジで良く立て直したよなw

 おっさん見直したわw


 15:名無しの英雄

 >>14

 ホンマそれ

 チーム崩壊の危機を救う→実を助ける→ドラゴンホリダー

 おっさんリーダーでよさそう


 16:名無しの英雄

 最初の引き締めかっこよかったよなw

 普段とのギャップw


 17:名無しの英雄

 ちょっと怖くなかった?

 意外と闇深いんかな

 

 18:名無しの英雄

 あれはわざとやと思うぞ?

 年の功w


 19:名無しの英雄

 実にはあれが足りない


 20:名無しの英雄

 実も有能なんやけどな~

 想定外に対応できなすぎる


 21:名無しの英雄

 実際のところ誰が欠けてもキツそう

 意外とダークホースかも


 22:名無しの英雄

 >>21

 タイム的には2位だっけ?


 23:名無しの英雄

 >>22

 せやな

 1位 犀原(さいばら)チーム→1時間13分

 2位 チームイルミナティw→1時間27分


 24:名無しの英雄

 やっぱ歴代トップばけもんやろw

 イルミナティ1世w


 25:名無しの英雄

 あいつらはイレギュラー倒してたからなw

 まあ今回はドラゴンってひどすぎやけどw


 26:名無しの英雄

 ドラゴンは流石になぁ

 米軍がロケラン使いまくって倒してたし


 27:名無しの英雄

 あれに挑むのはバカ

 あれに乗るのは天才


 28:名無しの英雄

 ガチでモンハンみたいだったもんなw

 バサルモスかジエンモーランw


 29:名無しの英雄

 >>28

 懐かしすぎて草ww


 30:名無しの英雄

 実戦じゃキツイやろな

 マーズクォーツ拾うのも大変やし


 31:名無しの英雄

 でも見てて一番楽しかったよなこのチーム


 32:名無しの英雄

 おっさんのギャグがいい味出してる(面白いとは言ってない)


 33:名無しの英雄

 >>32

 ミッキーとミニーとピカチュウは笑ったw


 34:名無しの英雄

 おっさん秘密結社とディズニーから消されるやろw


 35:名無しの英雄

 ふつーに次回も楽しみw


 36:名無しの英雄

 次はどんな異名が飛び出すかやなw


 37:名無しの英雄

 もう異名いらんやろw

 ミジンコとかミノムシとかただでさえ渋滞してるのにw


 38:名無しの英雄

 最後おっさんがギャーギャー喚きながら必死の形相で走ってるのちょっと笑ってしまったw


 39:名無しの英雄

 なんかもうやけくそやったもんなw

 

 40:名無しの英雄

 まあ一発喰らったら終わりやし、よく頑張ってたやろ

 

 41:名無しの英雄

 盾持ってきてたのは偉い

 ちょっとダサいけどw


 42:名無しの英雄

 >>41

 やっぱアジャスタピアは神武器

 ただし使いこなすの鬼ムズイ模様

 

 43:名無しの英雄

 火星で死なないでほしいわ

 たしかおっさんパパやろ?

 

 44:名無しの英雄

 そマ? 

 あの年でパパでよくやるわ


 45:名無しの英雄

 なんか会社の資金持ち逃げされたらしいで


 46:名無しの英雄 

 辛すぎるw

 おっさん、がんばれ!(アラフォーより)


 47:名無しの英雄

 火星はマジでバンバン死ぬからな

 やっぱ候補生たちの動画がちょうどいい

 

 48:名無しの英雄

 生配信も時差あるし映像荒いもんなw


 49:名無しの英雄

 技術革新に期待

 

 50:名無しの英雄

 色々と成長に期待やな


 ――――――――


 ふぅー。思ったより俺、評価されてる? 実際のところあの2人の方が実力的には格段に上なんだけどね。まあ嬉しいは嬉しい。


 でもミノムっちゃんもイルミナティも23歳とかだもんな~。1周り違うし伸びしろ含め俺なんかよりずっとすげえんだよ。イルミナティの槍さばきと、反応速度というか身体操作は神がかってるし、ミノムっちゃんがいなけりゃ露頭で野垂れ死にだった。データとかマッピングとか頼りっきりだったもんね。もうちょっと2人も評価されてほしいわ……。ま、とりあえず今日はこの辺で寝よう。


 なんたって明日はマユミと遊びまくるのだからな!

 

 こうして俺はエゴサをひと段落して眠りにつくのだった。

誠の妻、結月は誠と同い年です。

出会いは大学のサークルだったそうな。学部が違うけど同じ大学です。

茶髪のサラサラヘアーでとても美人。頭はいいけど体力にはあんまり自信ない。

誠と一緒にいると楽しいな、とそんな風に感じたんだとさ。リア充ですね。

読書や漫画や音楽の趣味は誠と合うらしく(誠の守備範囲が広すぎる説はありますが)、夫婦円満。誠の無茶な行動や恥ずかしい言動で喧嘩になることは多いものの、なんだかんだ許してしまうのでした。

今は都内の小さめアパート住まい。元々働いていた法律事務所で事務職をしています。頑張れ結月!


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