第4話 「恐怖!マーズドラン現る!?」
再結成を果たした我々「イルミナティwithミジンコたち」は破竹の勢いと言えるほどではないが順調にフロア1を進んだ。破竹と聞くとちくわを連想してしまう俺だったが、ちくわならば斬るのは容易い。え? ピーチクパーチクうるさいって? バッチグー!
そんなわけで|三日月の羽をもつ吸血蝙蝠やネズミーマウスたちを倒しつつ俺たちはフロア2へとたどり着いた。これもマップを完全に記憶し、位置情報を割り出したミノムっちゃんの貢献が大きい。マジで彼が居なかったらツンでたね。一応通った所にはしばらくすると勝手にライトが点灯される安心設計なのだが、無駄に動き回れば本当に迷子になる。タイムアップまでダンジョン内をぐるぐるすることになるだろう。
「やっとフロア2ね! ガンガン行きましょう!」
ドラクエでも作戦変更をしたことのなさそうなイルミナティを先頭に、ミノムっちゃんの的確なガイドと俺の類まれなるユーモアによって俺たちはフロア2も順風満帆に進んだ。ここはフロア1よりも通路の幅は広く、横道も多いため死角も生まれやすい。だが、突如として現れた鉱石狼にもイルミナティは即座に反応した。素早く動くため接近されると銃では戦いにくいのだが、そこは彼女の真骨頂、可変槍の出番である。
「ワタクシに噛みつこうなんて100年早いのよ!」
毛のないごつごつとした痩せ狼の、鋭く尖る石器みたいな歯が光る。だがその噛みつきに合わせて、口内をその槍が突き刺した。体内の柔い部分に鋭く刺さり、その狼は短い生涯を終える。そこそこ強敵なんだけどな……と思いつつもここでアジャスタピアの説明をせねばなるまい!
あの槍は彼女の持ち込んだ近接武器であり、文字通りの性能だ。「伸びろ! 如意棒!」と叫ぶ必要もなく手元にあるスイッチで伸び縮みする。こういった銃の効きづらいモンスターにも対応できるし、なにより対人戦ではその変幻自在なる間合い操作によって多くの英雄候補たちを涙目にさせてきた。俺は少なくとも勝てる気がしない。
「ふん! 30グラムね。はしたクォーツだわ」
はしたクォーツの説明は不要だろう。その後も現れた磁力スライム(磁力を帯びたコアを持つ赤いスライムである)や、火星では珍しいブヨブヨした皮膚を持つ火星ミミズなどの生き血を吸って、彼女の快進撃は止まらなかった。ミノムっちゃんが珍しく声を張るまでは。
「ちょっと止まって!」
「なによ!?」
「なにやつ!?」
彼は足元の1点をライトで照らす。むむ? ただの床にしか見えないが……ちょっと出っ張っているな。そうか!
「ミミクリンだ」
なんだか耳がくりんとしてそうな可愛らしい響きだが、あれは悪名高きトラップモンスターの一角だ。奴は火星の赤茶けた岩肌に擬態し、獲物を待ち受ける。触れてしまえばあら大変! 小規模な爆発が引き起こされるのだ。なんでも最近の研究によればマーズクォーツは周囲の元素に干渉し相転移(気体から液体になったりするやつね)を引き起こす力があるらしい。化学の力ってすげー。
「離れて。あのマグネスライムを引き付けよう」
ミノムっちゃんは通路の奥に揺蕩うスライムの前に予備銃弾を一発投げて転がした。スライムはそれに反応し、見かけによらぬ早い動きでゼリーが地面を滑る。それを3回ほど繰り返し、ゼリーは爆ぜた。ミミクリンを踏んだようだ。ミミクリンは地面からその岩壁もどきの背中を持ち上げてスライムのコアに噛みつこうとする。あー、あれって虫だったんだ。ダンゴムシみたいに足がいっぱいあってちょっとキモイ。
ミノムっちゃんは次の爆発まではタイムラグがあるらしいそやつに近づいてナイフでひっくり返すと、そのまま突き刺した。最新のナノテクノロジーはホログラフィックなのに触感がある。実際に触れるし乗ったりできるのだ。凄まじいぜ! ミミクリンは一瞬もがいたものの絶命し、マーズクォーツが転がる。ついでにマグネスライムの分も回収し、合わせて20グラム。スライムが15グラムだったからミミクリンは5グラムか……しけてやがるな。
「ここからはミミクリンにも注意して進もう」
まったく、頼りになる男だぜ! おでこ出したらきっとイケメンだろう。俺みたいにアップバングにしたらいいのに。
「ふん、今のはお手柄ね。褒めてあげるわ!」
あ! ちょっとデレた! やっぱりツンデレだったんだなあ。
俺たちはその後も特に苦戦することなくフロア2を最短ルートで進んだ。いやあやっぱりこのチームは素晴らしいね! 俺が何もしてないって? いやいや、わかってないな。俺は原子の構造で言うところの中性子みたいなもんで、プラスの電荷をもつ陽子ことイルミナティと、マイナスの電荷をもつ電子ことミノムっちゃんを繋ぎとめているのだよ!
そんな我々チーム「鉄腕原子」はついにフロア3へとたどり着いた。設置された梯子を下りると空気が変わる。遠くでは爆発音も聞こえるし、なんというか文字通り空気が違う。息苦しいプレッシャーがぞわぞわと押し寄せるのだ。なんか酸素濃度とかもいじってんのか? 日本政府め!
「ここからが本番、だね」
現在俺たちの持つマーズクォーツは250グラム。あと750グラムか……最低でも5匹くらいは倒さないとかな。
「そうね、狙うは大物……火星オオトカゲよ!」
マーズドラン――それは体長2.5メートルを超す大型のトカゲだ。ウサイン・ボルトよりも早い俊足と、ゴツゴツメットを全身に付けたような皮膚、鋭い歯は言うまでもなく、強力な毒を持つやべえモンスターだ。毒は噛みつかれたりしてもすぐ死ぬ猛毒だし、あまつさえそれを吐き出して飛ばしてくるというのだから、これまでのモンスターがキュートに見えるほど殺意むき出しの強敵である。普通にどうやって倒すんだろう。こわい。
「そうだね、脱出時間を考えてもあまり多くのモンスター狩ってる時間はない。討伐難易度的にマーズドランを倒せば500グラムくらいは手に入ると思う。探してみよう」
経過時間は現在35分。歴代トップを塗り替えるなら、 あと10分以内には1kgに到達していないと厳しそうだ。マーズドラン+αでギリギリかもしれない。きっついなー。すげえや、たいやきくんはやっぱり。
俺たちは極力戦闘を避けつつフロア3を徘徊した。一匹だけ現れたキメラサボテン(馬みたいな見た目の結晶化した針を持つサボテンもどきだ)をイルミナティが巧みな槍捌きで討伐し100グラムをゲットする。そしてついに見つけた。開けた場所に巨大な影が見える。あれ? 2.5メートルどころじゃなくね?
「いくわよ! 援護しなさい!」
だがそんな違和感を抱いた俺をよそにイルミナティは意気揚々で気分上々とばかりに、そのどでかいトカゲに向かっていった。奴は確かにこちらに気づいていないらしく、そっぽを向いている。「いや、大きすぎる……?」ミノムっちゃんも違和感は覚えているようだが、迫るタイムリミットと彼女の勢いにつられ飛び出した。
作戦は探索中に聞かされていた通り、まずは比較的やわらかい腹部に向けて手榴弾を投げる。奴がじたばたしている隙をついてイルミナティの狙いすました如意棒で奴の眼や口内を狙うのだ。俺たちは手榴弾を放り投げた後、牽制くらいにはなるであろうアサルトライフルを構える。
「こっち向きなさい! トカゲ野郎!」
大声に反応しマーズドランはこちらを向いた。その直後、手榴弾の爆発が起こり、爆風と強烈な破裂音が響く。適度な間合いに詰めていたイルミナティは狙いすませた一閃を食らわせ……いや、何かがやはりオカシイ。手榴弾がまるで効いていない。
「逃げてイルミナティ! そいつはマーズドランじゃない!」
焦ってイルミナティと呼んでしまったことにも気付かず、ミノムっちゃんは声を荒らげた。その声は震え混じりで、心なしか前髪……どころか全身をわなわなと震わせている。
「嘘!?」
イルミナティが避ける間もなく、振り向きざまに吐かれた爆炎のブレスが彼女を覆う。彼女は死んだ判定になった。彼女の今まで拾った分、200グラムが表示から消える。そして彼女の攻撃はもはやダメージ判定を与えることは叶わなかった。
マーズクォーツのように真紅に光るその瞳が俺たちを突き刺す。身体のところどころも結晶化しており、それは鈍い赤色を灯していた。あれは確かにトカゲなのかもしれない。いや、というよりむしろ……。
「あれはマーズドランじゃない……火星地底龍だ……」
ミノムっちゃんは諦めたような、か細い笑みを浮かべていた。そう、目の前にいるこやつは通常、現生人類最深到達フロア……フロア6に生息する、まごうことなきドラゴンであったのだ。イレギュラーモンスターが徘徊している可能性があることは確かに事前に通告されていた。でもいくらなんでも……。
「これは無理だろおおおお!」
俺は叫んでしまった。あんなのに勝てるわけないじゃん。日本政府のバカ!
イルミナティは22歳で割とお嬢様です。ピンク髪ツインテールで顔も可愛い。ちょっと目つきはキツイですが。
家族は火星関係者が多く、英才教育ばっちり。戦闘民族です。
プライド高いけどそれは努力の裏返しだったりします。
英雄になるんだから!と気張ってしまった結果こじらせてしまったようです。
努力できない人とかを見るとイライラしちゃうんでしょうね。
あんまり友達いなそうだけど、目標と関係ないから気にしていないんだと思います。
ちなみに僕の青春はドラクエ5でした。
スーファミ版を幼稚園くらいから遊んでたかも。
フローラを選んでました。ごめんなさいビアンカファンの皆様。
ピエールは一生スタメンだった気がします。