笑顔が絶えない職場です、のブラック感は異常
突然の転生により強制無職となった俺こと井草与一は、現在異世界で冒険者(半なんでも屋)をしている。
そんな俺は……ギルドの掲示板に張り紙を張り、仲間が来るのを待っていた。
『仲間募集
剣士と武闘家あり。笑顔が絶えないパーティです。
シフト :要相談
募集条件:なし 』
「なんか書き方がブラック臭いんじゃが!」
俺の作った張り紙を見て、ルナが言う。
確かにヘローワークに延々と残っているバイトとかこんなイメージあるわ。
募集条件なしが逆に怪しさ増しているっていうか……。
だが、条件までつけると誰も来ないのが目に見えている。
「お前の大食らいが知れ渡っているからだぞ」
「ヨイチが無職だからに決まっているじゃき」
醜く押し付けあう二人。
だが、何も生むものはない。精々借金くらいである。
既に張り紙をして五日が経とうとしているが、まだ一人すら来ていない。
昔から居る奴等からはうちのパーティは終着点とすら言われている。
二人でも何かしらの仕事をしなければ、ルナの食費すら賄えん。働くか。
「あの……パーティ募集の張り紙を見て来たんですが」
背後から声がかかる。
来た! 俺は逃がすまいと高速で振り向く。
そこには綺麗なローブを纏った金髪の若い男である。
顔は整っており、どこか品を感じる。
「フィンと申します。剣士と武道家と聞いて。あらゆる魔法を使える魔導士のジョブですのでお役に立てるかと」
魔導士!
魔法使い系のジョブは貴重である。
魔力適正がないとなることもできないため数が少なく、パーティに一人居ると大変助かると聞いた。
やはり俺の才能は分かるやつには分かるんだよなあ。フィン君。君、見る目があるぜ。
「ヨイチは剣士じゃなくて、無——」
「お前は黙ってろ!」
俺はルナの口を抑えると、バナナを投げる。
ルナが食べている間に話を進めよう。
こいつは逃がしちゃあいけねえ。
「フィン君、うちも何人も面接している状態でねえ。今選考中なんだよ」
「そうなんですか」
周囲が笑っているが、気にせずに進める。
「だが、君のその物腰や佇まいから将来性を感じた。是非パーティに入って欲しい」
将来性なんてさっぱり分からん。
「本当ですか!」
「ああ。うちのパーティは契約制なんだ」
俺はそう言うと、契約書を取り出す。そこには最低半年間は契約を破棄できないと記載してある。
すぐに抜けられちゃ困るんだよ!
「契約書とは、珍しいですね」
フィン君が訝しげな表情を浮かべている。
やりすぎたか?
いや、ここはそのまま騙しきるぞ!
「パーティに慣れるのにも時間がかかるだろう? お互いすぐに相手を切らないために、ね」
「なるほど、分かりました!」
そう言って、フィン君は契約書にサインをした。
契約書とった!
これで逃がさねえぜええええええええええええ!
「今日は軽くでいいから、実力を見せてくれないかい?」
「分かりました!」
「わしはルナじゃ。よろしゅう」
「フィンです! よろしくお願いします!」
ルナと二人の時は不安だったが、まともそうな奴が入って良かった。
俺達はリエン街を出て、魔物の居る森へ向かった。
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