オレ ロウドウ スキ
◇◇◇
「さてさて、あの馬鹿はどうしているのかしら?」
女神は天界から下界を覗いていた。
その女神の瞳に映るのは、土嚢を持って走る与一の姿であった。
「あるぇ?」
思わず変な声が出る。
(どういうこと? なぜ彼はあんなことをしているの? 働く喜びに目覚めたのかしら? いや、あの馬鹿に関してそれはない)
女神はすぐにその考えを止める。
「せっかくあんな凄い力を与えたのに……使わなければ宝の持ち腐れねえ」
そこで女神は気付く。自分が彼に力の説明を全くしていないことに。
教えた方がいいだろうか?
と一瞬考える。
「まあ、教えない方が面白いわね」
三割くらいは自分をないがしろにした与一への嫌がらせであった。
◇◇◇
「だから、遅えって言ってんだろうがあああああああああ! もっと一回で持ってこいやああ!」
「これ以上持てる訳ねえだろうがジジイ!」
俺は両腕に限界まで土嚢を持っているにも関わらず、この言われようである。
「ルナを見習えやああああ!」
ルナが俺の五倍くらいの土嚢をまるでトラックのように運んでいる。
そう、パーティを組めないルナも俺と同じ見習いとして働いていた。
「あんなゴリラと一緒にすんじゃねええ!」
「誰がゴリラじゃ」
ルナの言葉とともに、土嚢袋が目の前を弾丸のように飛んできた。
土嚢袋って凶器になるんだ、いい勉強になったわ。
「てめえ、やる気もなけりゃ力もねえしこのままじゃクビだからな。この無職野郎!」
「だから……今働いてんだろうが。くそジジイ!」
俺は下に落ちていた石を親方に投げる。
その石は俺も驚く速度で親方の横を通り、後ろを歩いていた男に当たる。
「ぐえっ! てめえ、何しやがんだ! 俺達がクドーファミリーと知っての狼藉か!」
男はこちらを見ると、顔を歪めながら怒号をあげる。
どうやら俺が石を当ててしまった男はギャングらしい。
「ジジイ、苛々しているからってギャングに当たるのは良くねえぜ」
「テメエ、なに俺のポケットに石入れてんだ!」
俺は親方のポケットに石をぎっしり入れて工作をする。
「カタギにそう当たるんじゃねえよ」
男の後ろから他よりも仕立ての良いスーツを纏った金髪の男が現れる。
この雰囲気、おそらく奴がボスのクドーだろう。
「アニキ……ですがこいつが舐めたことを、ん? ルナじゃねえか! お前早く金返さんかい!」
「分かっとーけど……」
ルナは男から目を逸らす。
「なんだ、このガキも客か?」
「へい。賭博狂いです」
「まあ、今回は怪我もねえ。行くぞ」
「アニキが優しくて良かったな、お前等! ルナ、支払い期限は来週だぞ!」
そう言ってギャング達は去って行った。
「借金返さないといけないけえ、パーティに入れて欲しいんじゃけど」
「真面目に働け。俺まで借金増えるだろうが」
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