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7:精霊との契約・1

 黒いモヤに取り込まれ、魔物となっていた光の精霊ディアマントを救出すると、彼の力できらめきの森は元の景色を取り戻した。

 その名に相応しく美しい光舞う森に、一同の口からほう、と溜息がこぼれるほどだったが……その余韻は長くは続かず。


『まさか精霊がこんなフランクじーさんだったとはね……』

『まぁ仰々しい奴もおるがワシはこのスタンスじゃ。親しみやすくて良かろ?』


 呆れ顔のミューにウインクを返すディアマント。そのまま話は続く。


『そもそも精霊なんてモンは自然界にあるものから生まれとるんじゃ。確かに自然は強大で時に恐ろしいモノじゃがヒトや生物と自然は切り離せぬもの。同時に親しき隣人でもある』


 だから、自分は親しげに接しているのだというのが彼の言い分だ。


「……それでアマ爺、どうして魔物になって暴れていたのか話してくれるかい?」

『それなんじゃが……そう、ちょうどお前さんみたいな服装の男が近づいてきてのう。黒いモヤモヤしたものをワシにこう、ブワーッと』

「!」


 モーアンが追っている親友、ノクスを最後に見たのはこのきらめきの森だ。黒いモヤを纏って豹変した彼がディアマントに近づき、こうなったということは……


「まさか、ノクス……アマ爺やこの森の異変は、ノクスのしわざだっていうのか!?」

『ノクスというのか、その神官は。目も虚ろで、今思えば奴も操られていたのかものう』


 ふぅむ、と唸り目を瞑る光精霊。モーアンの表情が険しくなっていく。


『……奴は「精霊を穢し、女神の力を削ぐ」と言っておったよ。あの黒いモヤモヤは“穢れ”とでも呼ぶべきか……この調子で他の精霊のところにも行っているかもしれん』

「精霊を穢す……」


 しばし、気鬱な空気が流れる。特に日頃は朗らかなモーアンが暗い顔をしていることが、より一層この場を湿っぽくしていた。


「でっ、でも!」


 思い切って沈黙を破ったのは、エイミだった。一歩踏み出し、モーアンを見上げる。


「精霊を探していれば、いずれはノクスさんに会えるかもしれないってことですよね?」

「そ、そうだぜ。どこに行ったかわからなかったけど、これって貴重な手がかりだよなっ?」


 一生懸命訴えるエイミとフォンドの表情から見えるのは、心配の色。

 モーアンは眉尻を下げ、ふにゃりと緊張を解いた。


「……若者にそんな顔させちゃダメだよね。うん、ありがとう。その通りだ。今は手がかりが得られただけでも大収穫なんだよね」


 最初の一言は小さく、自分に言い聞かせるように。気を取り直すといつもの柔和な雰囲気に戻る。


「それじゃあ、次の精霊を探しに行こうか! おにーさん張り切っちゃうぞー!」

『張り切りすぎてまた足を滑らせておっこちないようにね』


 すかさず入ったミューの容赦ない言葉にずっこけたモーアンは「ひどいなぁ」と苦笑いをした。

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