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41:呪いの真実・2

「悪魔の呪いを受け、当時生きていたハーフエルフやその周囲に災いが降り掛かった。彼らの存在そのものが災いを招くというよりも、ある不幸な事故や出来事があったとして、たまたまその犠牲者になる……といったところよ」

「そんな……」

「当時の族長はエルフに外へ出ることを禁じ、人間との接触を避けて森を閉ざした。やがて、エルフより寿命の短いハーフエルフたちは自然とその数を減らしていったわ」


 エルフたちが厳重に森を閉ざして人間を避けていたのは、呪いをかけられて以降、ハーフエルフが新たに生まれないようにするためだった。


「なにもそこまでしなくても……」

「人と人が出会えば、いくら禁忌だと知っていても、止められないこともあるの。そこにいるアムリアがそうだったようにね」

「!」


 当時のことがよぎったのか、途端に赤面するアムリア。

 シグルスの母だという彼女は、今も恋する乙女のようだ。


「アムリアさんをシグルスと引き離したのは?」

「ハーフエルフがいなくなってから、この森には強力な結界を張ったの。呪いの根源であるハーフエルフから引き離せば呪いは届かない、というのが精一杯だけど。アムリアまで喪うわけにはいかない……仕方なかったのよ」


 犠牲を減らしたかったというエルフたちの言い分はわかるが、それでもシグルスや周りの人間に説明が足りていなかったのは事実だ。

 その結果、彼はここまで理由もなく周りから不気味がられ、疎まれて育ってしまったのだから。


「俺の周りにいる奴は不幸になる……まさか、陛下もそのせいで……?」

「シグルス?」

「俺がここに来たらせっかく逃げ延びた母さんも……俺は一刻も早くここを出た方が良いみたいだな」

「あっ、待ってよ!」


 自嘲が混じった昏い笑みを浮かべ、ふらふらと出ていくシグルス。

 慌てて追いかけようとしたアムリアよりも早く、サニーが飛び出していった。


「……彼のことはふたりに任せて、僕たちは本題に入ろう」


 早々に切り替えるモーアンは一見すると冷たく見えるが、彼が仲間を案じていないわけがない。

 このシルワ島に来た時シグルスのことを人一倍心配していたサニーなら、太陽のような彼女ならきっと、沈んだ彼の心を引き上げてくれるだろうという信頼あってのものだ。


「木の精霊ベルシュのことね。彼女はレニの最初の仲間よ」

「やっぱり女神……いえ、レレニティア様の旅はここから始まったんですね」

「それはもう。生まれ故郷だもの」


 千年の時を生きるエルフはおもむろに瞼を閉じ、すうっと息を吸い込んだ。

 遥か遠くの記憶を手繰り寄せるように。懐かしい香りを思い返すように――。

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