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41:呪いの真実・1

 エルフの族長・ケラスィーヤの家に案内されたエイミたちと、シグルスの母アムリア。

 長を名乗る者の家と思えぬ質素で古びた木造の家は、賑やかな来客に僅かに音を立てた。


「久方ぶりの客が精霊を連れて現れた外界の者たちとハーフエルフ……きっとあたくしはこの時のために生きながらえてきたのね」

「え?」

「エルフの中でもあたくしは飛び抜けて長生きしているの。なにせ、千年以上生きているのだから」


 それでも、最近は活動を抑えて暮らしているのだけどね――驚きを隠せない一行の前で、族長はふふっと笑う。

 ここに来るまでに見た族長の動きは、確かに見た目の若々しさからは想像もつかないほどゆっくりとしたものだった。


「ドラゴニカの黒竜と同じぐらい……」

「ええ、そうね。魔界側についていた竜が人間の少女と出会い、心を通わせた……当時のこともよく覚えているわ」


 歴代のドラゴニカ王の相棒となる黒竜。女王パメラをガルディオに奪われ、何処かへと飛び去ってしまい行方知れずだが……


「あたくしはレレニティア……レニが女神になる前から彼女と友達だったの。当時を知る、数少ない生き証人よ」

「お、お友達……ですか!?」


 ケラスィーヤは頷くと一旦エイミから視線を外し、シグルスの赤い瞳へと向ける。


「だから彼女がどんな人物だったか知っている……そしてそれが、現在のハーフエルフが受けている差別の歴史に繋がるの」

「ハーフエルフが……?」

「ねえ、今、外界に伝わる“レレニティア”ってどんな姿かしら?」


 言われて、一同が思い浮かべるのは各地で見られる女神像や、昔語りの絵本など。

 必ず語られる特徴は、きらめくエメラルド色の長い髪。そして、目元を覆い隠すヴェール……


「彼女の瞳の色、知ってらして?」

「あ……!」


 彼女の目は常に隠され、その色はどこにも語られていなかった。

 もしかして、とプリエールが小さく呟く。


「そう。レニの目の色は彼と同じ赤色。彼女はハーフエルフだったのよ」

「女神が……俺と同じ……!?」


 人々から疎まれる、人間とエルフの狭間の子。今ではすっかり姿を見なくなってしまった、赤い瞳のハーフエルフ。

 世界を救った女神レレニティアのルーツが同じと聞いて、エイミたち、誰よりシグルスが驚きを隠せないようだった。


「……といっても当時はエルフと人間は普通に交流していて、ハーフエルフもそれなりにいてね。ヴェールは後世の人々にそれを隠すための後付よ」

『ってコトは、女神様がハーフエルフだと知られるとマズい事情があるの……?』

「知られたら、と言うよりも……新しく生まれたら、かしらね」


 一同がケラスィーヤの言葉の意味をはかりかねていると、さらに話は続く。


「レニが悪魔を封印した時、悪魔は腹癒せに彼女の血を呪った。今後ハーフエルフが関わると大切なひとを喪うように……“不幸を呼ぶ”というのは、そういうことよ」

「!」


 彼女の言葉が事実なら、かつて魔物の大量発生で命を落としたシグルスの父は……

 シグルスは俯き、震える拳をぎゅっと握り締めた。

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