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38:再戦の誓い・3

 竜騎士の詰め所にはもう城を取り戻した報せは届いているらしく、彼女たちもこころなしか喜びの色が見て取れるようだった。

 竜が戻ってきたことで、こちらに逃げ延びた人たちも何人かはドラゴニカの防衛と復興に向かったという話を聞くことができた。


「ラファーガ……!」


 無事に帰ってきたエイミたちを見るなり、彼女の叔母である竜騎士ブリーゼはラファーガのもとへと駆け寄った。


「ブリーゼ、久し振りだな。グリングランを守ってくれたこと、礼を言う」

「無事だったんだな……魔界へ向かったと聞いて、どれだけ心配したと……っ」

「……すまん」


 沈黙の間に、集まる視線。オホン、と慌てて咳払いで誤魔化すブリーゼ。


「と、とにかくラファーガが戻ったならグリングランもひと安心だ。あとは本来の警備隊にまかせて、私もドラゴニカへ向かおう」

「そうですね。ブリーゼの力は今のドラゴニカに必要です。リーダーを引き受けてもらえると助かります」


 何事もなかったように話を続けるエイミに「もしかしてあの甘い雰囲気がわからなかったのかしら?」とプリエールが内心で呟き、首を傾げる。


「それじゃあわしはジャーマを連れて一旦家に戻る。ちゃんと休ませないといかんからな。フォンド、お前も今日はうちで休んでいけ」

「へ? おう」


 旅の途中でグリングランに滞在した時も、フォンドは仲間たちに合わせて宿屋に泊まっていた。

 誰もいない家に帰っても、虚しくなるだけだから……そう思って、町はずれにある家に近づくことはなかったのだ。


「フォンド兄ちゃんの家、行きたーい!」

「おいおい、なんにもねえボロ家だぞ。ベッドも足りねえし、男三人で暮らしてるからむさ苦しいし」

「あら、見に行くくらい良いじゃない。何か見せられないモノでもあるのかしら?」

「べっ別に……というか、だからなんにもねえんだってば!」


 フォンドを囲み、賑やかに騒ぎ出す仲間たち。そんな光景を、ラファーガとジャーマがじっと見つめる。


「あいつの周りはいつもあんな感じだな」

「そうだな。成長もしただろうが、根っこは変わってない」

「俺は……フォンドのようにはなれない。だが、俺も……」


 以前なら受け入れられないものに反発し、あたかも劣るもののように見下していた。

 今思えば、異なる性質のものが手にした“強さ”に苛立っていたのだろう。ジャーマは今までずっと目をそらしてきた己の感情を改めて分析する。


「俺も、俺なりの“強さ”を身につけることはできるだろうか?」

「ジャーマ……」


 琥珀色の眼が驚きに見開かれ、直後、優しく微笑む。

 そんなラファーガの顔を、ジャーマは真っ直ぐに見上げた。


「ああ、できるだろうよ。わしも手伝ってやる」

「……フン」


 わしゃわしゃと乱雑に撫でる大きな手を振り払うと、ジャーマはまたそっぽを向いた。

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