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私と魔王  作者: ふるか162号
1章 私と魔王
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1-2

 田所の爺さんは、騒音、奇行など、色々と問題は起こすし、多少、変なところはあるけど、ボケてはいないし、妄想癖があるとも思えない。むしろ、大企業の社長をやっていたこともあって、どちらかといえば、現実主義だったはずだ。

 そおう考えれば、本物の魔王なのか?

 いやいやいやいや、そんなわけはない。

 しかし、爺さんは、今も目を輝かせている。

 考えれば考えるほど混乱してくる。いや、そもそも、別世界の魔王ってなんなんだ? 仮に、この世界の魔王と言われた方が、まだ信用ができる。なんで、わざわざ別世界なんだ?

 も、もしかして!?


「じ、爺さん……。やっぱり、さっきのガラスの割れる音って、誰かに、何かで殴られたんじゃないの? そのせいで、頭がおかしくなったとか?」

「らなちゃん。相も変わらず口が悪いし、失礼じゃなー。そもそも、頭を殴られているのなら、ワシは怪我をしているだろうし、打ちどころによっては死んでいるかもしれんじゃろ? しかし、ワシは、こうして普通に会話をしておるじゃろ?」


 確かにそうなんだけど、ちょっと驚きすぎて、私もテンパっているみたいだ。

 混乱する私を見て、爺さんはため息を吐く。

 おかしい……。ため息を吐きたいのは、私の方なのに……。


「さっきのガラスの割れた音は、召喚の儀式に使っていた水晶が割れてしまったせいであって、卵が原因ではないんじゃよ。気づかんかったじゃろ?」

「あぁ、卵でないのは、最初から分かっていたけど」

「な、なんじゃと!?」


 爺さんの顔が驚愕に染まる。

 いや、常識的に考えて、卵を焼いただけで、ガラスが割れる音はしないよ。

 

「で? 結局のところ、魔王ってなに? 漫画やゲームみたいな魔王であるんなら、そんな危ないものを呼び出して、爺さんはどうしたいの? この世界でも、滅ぼしたいの?」


 仮に、爺さんが呼び出した魔王とやらが本物だった場合、爺さんの目的が、わからない。そもそも、魔王の召喚なんて、漫画やゲームの話でしか、聞いたこともないし、爺さんからも聞いたことがない。

 それどころか、爺さんって、漫画とかゲームってやらないんじゃないの?


「うん? らなちゃん。別世界の魔王じゃぞ? いろいろとツッコむところはないのかい?」

「あー、うん。正直な話、適当にあしらいたいというのが本音かな。そんな意味不明な物の存在より、お惣菜の値引きのほうが興味がある」


 そもそも、信じる要素が何もないし、こんな無駄な会話をさっさと打ち切って、晩御飯のおかずを買いに行かなきゃいけないからね。あ、もう面倒くさいし、どっかで外食もいいかもしれないね。


「らなちゃんは、かわいらしい顔とは裏腹に、本当に性格が冷めきっておるなー」

「あはは。凶暴とか、悪魔のネコミミとはよく言われるけど、性格が冷めきってるとは、初めて言われたなー」


 まぁ、こんなことを自分で言っておいてなんだが、自分でも、興味がないことには、冷めた態度になるのを、よくわかっている。

 ふと思ったんだけど、現実主義の爺さんが、こんな嘘を吐くか?

 そんな疑問が頭によぎる。

 私は、爺さんを不思議そうな目で見る。


 何のためにこんな嘘を? あぁ、最近、田所の爺さんの家族も寄り付いていなかったから、寂しかったのかもしれない。

 そんなことを考えていると、爺さんの部屋の扉が開く。


「うん? 爺さん、お客さんでも来てた……の?」


 私は、爺さんの部屋から出てきた人物に目が釘付けになってしまった。

 その人物は、困った顔をして爺さんに声をかける。


「あ、あの……。お爺さん?」


 真紅の長い髪の毛、スタイル抜群の目が覚めるような美人さん。

 どう考えても、爺さんの親族じゃない。というより、日本人とは思えない。

 私は爺さんの肩に手を置く。


「爺さん、あんた、どこからこの人を連れてきた? 連れ去りは犯罪だって、バカでもわかるよね?」

「らなちゃんは、普段からワシをどういう目でみとるんじゃ?」

「普段は、普通だね。決して、偏見の目で見ていないよ。でも、今は、イカレた犯罪者の爺として見ててる」


 そうじゃないと、この爺さんと、この美人さんとの接点なんて思いつかない。

 私が爺さんを睨んでいると、爺さんがため息を吐く。


「とりあえず部屋に入るかの……。今後のことを含めて、きちんと話し合う必要がある」


 爺さんは、そう言うと、自分の部屋の扉を開かず、私の部屋の扉を開けようとする。まぁ、鍵が締まってるから開けられないんだけど……と思っていたら、爺さんはポケットから鍵を取り出し、開け始める。


「ちょっと待てーーー!? なんで、あんたが私の部屋の鍵を持ってるんだ!?」

「もちろん、合い鍵を作っておったに決まっておるじゃろうが」


 爺さんの言葉に一瞬硬直したが、すぐに自分の携帯電話を取り出し、警察に電話しようとする。

 そんな私の姿を見て、爺さんは焦り始め、赤い髪の毛の女性は、不思議そうに声をかけてくる。


「あ、あの……。その、板は、何なのですか?」

「板?」


 板って、もしかしてスマホのことか?

 彼女の言葉に、私は困惑した。


 今の時代に、スマホの存在を知らないなんて、そんなことがあり得るのか!?


 私は、目を見開き爺さんの顔を見た。


「だから言ったじゃろ。彼女が別世界の魔王じゃよ」

「あ、自己紹介がまだでしたね。私は、シェリル=シンクレア。レヴァンテインという世界の次期魔王候補です」


 そう言い、彼女は軽く微笑んだ。

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