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私と魔王  作者: ふるか162号
1章 私と魔王
1/8

1-1

新作始めます。

マイペースにやっていくつもりです。

 私の名前は、鬼子母神羅奈(きしぼしん らな)

 背が低く、小学生とよく見間違えられるけど、れっきとした16歳の高校一年生。


 一般的に高校生といえば、勉学にスポーツ、青春を謳歌していると思うんだけど、私にそんな気持ちを共有できる友達はいない。

 理由として、私自身のコミュニティ能力が低いことと、ちょっと短気な性格だからだろうね。


「おい、悪魔のネコミミだぜ」

「バカ! 目をつけられたら、ボコボコにされるぞ」


 すれ違い様に、同級生の二人組に陰口をたたかれた。

 別にいつものことだから、気にはしていないんだけどさ……。


「せめて、聞こえないようにしろよ……」


 私は呆れ半分にため息を吐く。


 ちなみに『悪魔のネコミミ』とは、私のあだ名である。

 私は、頭に大きなリボンをつけているのだが、このリボンがネコミミに見えるらしい。

 高校生にもなって、大きなリボンというのも、私自身も、どうかと思うんだけど、お母さんから「らなはちょっと凶暴だから、せめてリボンでも付けて女の子らしくしなさい」と言われたのを、律儀に守っているのだ。


 しかし、お母さん……。

 小さい女の子に向かって、凶暴というのもどうかと思うんだけど……。


 そんなお母さんも、私が12歳の時に病気で死んだ。

 だから、今の私は、親父が所有するマンションの一室に、一人で暮らしている。

 最低限の家事はできるから、何も問題はない。

 それに、生活費の方は、今現在、どこにいるかわからない親父から、毎月振り込まれてくる。しかも、毎日贅沢をしたとしても、とてもじゃないが使い切ることの出来なほどの金額だ。


「毎月、こんな金額を振り込んでくるなんて、親父は、どこで何をやってるんだか……」


 私は、たまり続けていく通帳を見ながら、そう呟いた。


 親父の職業は格闘家で、世界中を飛び回っている。

 私もそこまで詳しくはないが、相当強い格闘家らしく、世界中の格闘家から挑戦を受けているのだとか……。

 他に私の家族には、姉がいるのだが、こちらも別の県で教師をやっていると、聞いた気がする。

 私は昔から、家族に対する執着というものがない。だから、家族がどこで何をしているかは、正直な話、そこまで興味もない。


「まぁ、生活費が振り込まれてくる限り、生きてはいるんだろうけど……」


 そう思って、自分の家の扉を開けようとした時、ガシャーーーーン! と大きな音が、隣の部屋から聞こえてきた。


「なんだ?」


 音の発生源である隣の部屋には、田所正三っていう爺さんが一人で暮らしている。

 この爺さん、騒音や、変な言動など、色々と問題を起こしているので、マンションの住人からは、変人と呼ばれ、厄介者として扱われている。

 しかし、実際に話をしてみると、なかなかに話が分かる爺さんなんだよね。私も、暇な時に話し相手になっていて、為になる話を聞いたりする。


 まぁ、爺さんのことはともかく、今のは、ガラスを叩きつけたような音だったよね。

 隣の部屋で、見知った爺さんが孤独死してるってのも、気分が悪いし、声掛けでもしておくか……。


 私は田所のじいさんの家の扉を叩く。


「爺さん、生きてるかー? 大きい音がしたけど、なんかあったかー?」


 扉を結構強くたたいているのだが、反応はない。

 これは、本格的にヤバいかもしれない?


「爺さん! 田所の爺さん!」


 私はさっきよりも強く扉をたたく。

 しばらく扉を叩いていると、私の部屋の隣の部屋の佐藤さんが顔を出す。


「らなちゃん。何かあったのかい?」

「あ、佐藤さん、こんにちは。実は、田所のじいさんの部屋から、ガラスの割れるような音がしたんだよ。うっかり事故で死なれてても困るから、生存確認をしておこうと思ってね」

「あはは。らなちゃんは、口は悪いけど、田所さんを心配してるんだね。反応がないんなら、管理人さんに連絡して、開けてもらおう」


 管理人さんか。管理人さんなら、マスターキーを持っているから、部屋に入ることができる。

 私は佐藤さんに、連絡をお願いしようとしたら、扉がゆっくりと開いた。


「なんじゃ? 人の家の前でうるさいのー」


 出てきたのは、頭はつるつるだが、口ひげが立派な爺さんだ。この爺さんが、田所正三。若い頃は、どこかの会社の社長だったと聞いたことがある。

 だけど、今は威厳も何もない、ただのうるさい爺さんだけどね。

 とりあえず、生きていてよかった。

 ……ん? ちょっと顔がすすで黒いぞ?


「なんじゃ、らなちゃんか。何かあったのか?」

「いや、あんたの部屋から、ガラスの割れる大きな音がしたから、生存確認だよ。なんかしてたの?」

「あぁ、料理をしてたんじゃ」

「はぁ? どんな料理をしてたら、ガラスをたたき割ったような音がするんだよ。それに顔の煤!」


 そう言われた爺さんは、顔を長袖のすそで拭う。


「あぁ、卵焼きを失敗したのじゃ!」

「卵焼きで、なんでガラスが割れた音がするんだよ!! そんな音は、普通はしねーよ!!」


 この爺さん、何か隠してるな?

 問いただそうとしたけど、爺さんは結構口が堅い。というより、都合の悪いことは一切言わない。

 まぁ、何をしていたかは、気にはなるけど、無事だったからいいか……。


「とりあえず、卵焼きなら、もう少し静かに作ってよ」

「わかったわい。らなちゃんはうるさいのー」

「いや、静かに作るとか、そんな問題じゃないような……」


 佐藤さんは、私たちの会話に呆れているが、私たちはいつもこんな感じだ。

「さて、さっきは失敗じゃったか……」とぶつぶつ言いながら、爺さんは部屋に戻る。


 私も佐藤さんに挨拶をして、部屋に戻る。そして、なんとなくテレビをつける。


『次のニュースです。また、お墓が荒らされるという事件がありました』

「また、墓荒らしのニュースか。最近多いな……」


 ここ最近、こういうニュースが多い。

 ネットで悪ノリ動画を作る人が、面白半分でやっているのだろうと思っているが、どちらにしても墓を荒された方は、たまったものじゃないだろう。


 まぁ、こういうニュースは、対岸の火事というもので、私と関わりがない以上、関係がないし、あくまで他人事だ。

 私はニュースに興味をなくし、着替えてから、冷蔵庫の中を見る。


「何もないじゃん……。あぁ、今日は家に引きこもっていようと思ったのに、晩御飯の材料を買いに行かないと……」


 そう思い、部屋を出ようとした時、爺さんが奇声を上げる。


「できたぞーーーーー!!」


 卵焼きでも完成したのか? いや、卵焼きくらいで、そんなに喜ぶことだろうか……?

 私はため息を吐き、部屋を出る。そして、爺さんの部屋の前を通り過ぎようとした時、爺さんの足音が近づいてきた。そして、勢い良く扉が開く。

 そんなに卵焼きができたのが、嬉しかったのか……? そして、走って出てくるくらい、それを見て欲しかったのか?

 そう思っていたのだが、爺さんの口からは、まったく別の言葉が発せられた。


「ついに、別世界の魔王の召喚に成功したぞーーーーー!!」


 はぁ?

 別世界の魔王?

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