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Eternal  作者: たくひあい
1章  適当が肝心
3/12

結晶

「なに、これ……」


息が苦しくない。

びっくり。

なんかね、きれいな、ガラスの世界?


『あなたなら! わかってくれる!』


誰かの、高い声。

悲痛な声がどこかでしていた。



握ってたスプーンさんが、ぐにゃ、と曲がる。


「おおっと、こりゃあ……」



『あなたが私の声を聞いてくれた!』


「確かに、聞いた」



『寂しいよ』






透明な世界から、アリンとエチルが見える。なにか言ってる。わかんないよ。

ふっと意識が薄れそうになる。


『ここにいましょう。あなたなら、私を見届けてくれる』


なぜだろう。

なぜだか、また、泣きたくなった。


感情が、自分にも流れ込んでくるみたいだ。

きっと、とても理不尽なことがあったんだね。

あなたは。


でもね、此処にいたって変わらないよ。



「一緒に、外に出よう?」

『いや! 消えてしまう』

「ううん。大丈夫」




すっと息を吸い込んで、握っていたスプーンさんにお願いした。


どうか、ちゃんと、聞いていてください。

届けてください。



「大丈夫よ」



そして、私はにこっと笑う。



彼女の声が、わっと泣き出す。


『無防備、な、心が、閉じ込められて、』


スプーンさんに頼るか迷ったけど、やめた。


「私が以前のあなたに戻るための、魔法をあげます。だから、寄生されていたという記憶がしばってしまった心は、ちゃんと解放されますよ」


『ほんとう?』


「本当です」


静かに目を閉じて、覚えている言葉を唱える。


「ルオニュ……ブレシェ、ディシ、セリエト」


これは遠い昔に、誰かがおまじないに聞かせてくれたのだ。


大丈夫って意味を込めて……


スプーンさんは、聞いてくれてるかな。



彼女が、実体を持ち始める。バスの中にいたのと、同じ姿で、私の前に現れた。

モノクルを回すと、ゆっくりと、結晶が剥がれ落ち始めた。

あっ。もしかしてこれが用途だったかな……




『ありがとう』




最後に、そんな声がして、ガラスが弾ける。


世界に光がふり注いだ。










目が覚めると、二人が心配そうに私を覗き込んでいた。


「リセ、大丈夫?」


「心配したんだぞ」


「平気」


私は、結晶を握ったままいきなり倒れて動かなくなっていたらしい。

何があったのか聞かれたので、ぼんやりと考えながら答える。


「なんかね。取り込まれていたまま苦しんでいた心が、結晶化していたみたいなの。

あんな形で混ざっちゃったら、そりゃあ、苦しいよね」


『予期しないままわんちゃんに捕まった』ってところで、私に共鳴してしまったから、結晶になってしまうところだったみたい。



思い出すとなんだか胸が苦しくなって、ぶわっと涙が溢れてくる。

きれいな、純粋な想いの形だった。



 夕暮れ時、アリンとエチルに支えられながら、帰り道を歩く。


滑り台は、元に戻ってたし、あの力は変な生き物が出てくるときしか解放されないんだって。

つまり、徒歩だ。


「相手にしないってことが、出来たらいいのになぁ」



二人のことは、わからない。

私のことも、まだ。歩きながら、二人の『普段』の格好をみていた。私と同じ学校の制服だ!

先輩かな……となんとなく思う。


「確かに、そうよね」


エチルがため息を吐く。アリンが、そういえばなぜあそこに居たんだ?

と聞く。

私は、ただしばらく出掛けたかったんだと言った。


「相手にしないことも、また戦いのひとつではあるよな」


誰彼構わず構っていたら、身体がもたない。

何かあったとしても、救えるのは、自分に救える範囲だけだから。


「うー、でも、目の前に居たら気になっちゃう!」


アリンが苦笑いする。

外は、夜になりはじめている。戦ってなければ、もう少し明るいうちに、旅行できたのに。

線引きは難しいなと思いながら、三人で歩く。


ああ、おなかがすいた。

「なんか食ってく?」


「そうね」


「うん……」


アリンに聞かれてエチルと私はうなずいた。




みんな思っていたらしい。

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