表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/150

第95話 廃止か、存続か

ついに魔道具科が廃止!?

その時レインが取った行動は…?

第95話、よろしくお願いいたします。

「何回でも言いますよ!?パトリシア先生、あなたねぇ、自分のしでかしたことの重大さを理解しているんですか!?王都魔法学校の学校長たる()()()()()()()()()んですよ!!?…あいたたたた…。こ…これサイモン君、包帯はもう少し優しく巻いてくれんかな?」


「はぁ。本当に申し訳ございませんなのです」


 高くせり上がったワールド・ドミネーションズの舞台横に座り込み、頭に包帯を巻いてもらいながら、目の前のパトリシア先生を怒鳴り散らす学校長。

 片や当事者のパトリシア先生も機械的に謝罪する。

 …さっきからもう何回…いや何十回、うんざりする程のこのやり取りを見せられただろうか。


(ちっ…何度も何度もおんなじことばっか言いやがって…。頭が無限ループのダンジョンかなんかにつながってんのか、あの学校長は…?)


 …現在、俺たち魔道具科のお披露目会は頓挫してしまっている。

 というのも、先程盤面で覇を競い合っていたゴーレムたちが()()()()()()()暴走し、誤って学校長のいた場所付近を攻撃してしまったからだ。

 

 身体の後でガッツポーズを取っていた者や、心の中で大笑いしていた先生も少なからずいたような気もしないでもないが、そんなこんなでMAX怒り心頭の学校長。

 今に至るまで、パトリシア先生を延々と責め立てているという有様だ。


「…サイモン教授、テティス先生やクララ先生、その他の先生方に関しましても、大変申し訳ございませんでしたなのです」


 学校長への謝罪の態度とは打って変わって、心から頭を下げるパトリシア先生。

 よっぽど学校長が嫌いなんですね、わかります。


「ほんとにもういいって、パト子ちゃん!☆アタシったら、ゴーレムなんてすっごいもの見せてもらって、超興奮しちゃったんだから!☆クララちゃんなんて、さっき手の平が汗で超ベトベトだったんだよ?☆ヒャッ☆あとぶ厚く塗ったお顔のお化粧だって完全に浮いちゃってたしね…って痛い!?☆うわーん!?クララちゃんがぶった!ひっどーい!!☆」


 そんな漫才のようなやり取りの最中だったが、ふいにパトリシア先生が身を乗り出した。


「テ…テティス先生、クララ先生も…、腕を怪我しているのです…!?も…もしかしてさっきのクリントン君の攻撃で…なのです?」


「わ…私が悪いように言うのはやめていただきたいのですが…」


 突然自分に矛先を向けられたクリントンは、驚いてその身をのけぞらせた。


「え、これ?☆ああ、さっき魔法使ってたとき、横からちょっと石が飛んできただけだよ☆こんなの全然平気☆」


「…ボソ…ボソボソ…(かすり傷、授業でもよくある話。気にする必要はない)」


「で…でも…でも…。うわ~ん、ごめんなさい、本当にごめんなさいなのですぅ…」


 学校長に怒鳴られていた時よりも、こっちの方がよほどショックだったらしく、しょんぼりしてうつむいてしまったパトリシア先生。

 同僚の女性職員に対し、小さいとはいえ、怪我を負わせてしまったことにかなり動揺しているらしい。


(…やっぱ普通の先生同士だと、そりゃ責任感じちゃうよなぁ。…よし!そういうことなら…)


 パアァァァ…!


 その時、突然テティス先生とクララ先生の身体が真っ白な光に包まれ、淡く輝き始めた。

 その場にいた全員の視線が、一気に2人に集まる。


「わわわっ☆な…何!?ア…アタシったら光っちゃってる!?☆」


「…ボソボソ…(これは…光属性の治癒魔法…!?まさか…)」


 スゥ……。


 淡い治癒の光は、しばらくすると、何事もなかったかのように消え去っていった。

 先生たちの腕にあった、小さな傷とともに。


「ふぅ、これで傷は大丈夫かと思います。すみませんでした、テティス先生、クララ先生」


 俺はそう言いながら、前方にかざしていた手をスッと降ろすと、ペコリと頭を下げる。

 だが今度はそんな俺に対し、サイモン教授が俺の方へと身を乗り出してきた。


「レ…レインフォード君…!?…き…君はやはり治癒の魔法…、いや、光属性の魔法も行使できるのかね…!?」


 キャッキャウフフと驚くテティス先生たちを意に介することもなく、サイモン教授が真剣な眼差しで言葉を発した。

 ギャルっぽいテティス先生と、いかにも劇画チックなサイモン教授のギャップに、少しだけ笑いそうになるのを堪える。


「はい。一応、先日サイモン教授の授業で習った、えっと、鉄板6枚属性は全て使うことができます」


「…天地6大属性だが…。ま…まさか本当に全ての属性を…?…いや…だがしかしそんなことが…」


 俺も、ことサイモン教授からの質問に対しては真剣に答える。

 …ちょっと内容が間違っていたのはご愛嬌だ。


 そんなサイモン教授は、額に汗を滲ませながら、俺を見据えたまま小刻みに震えていた。

 知らずしらず、手先にも思いっ切り力が入っているようで…。


「い…いだだだだだだ…!?サ…ササササイモン君!ちょ…ちょっとサイモン!!?いい痛い痛い痛い!!これ!包帯、包帯が!!変な風に巻かれているからぁ!!?何これ、何かの罰ゲームか!!?」


 ふと見ると、厳しい表情のサイモン教授の傍らに、全身を包帯で亀甲型に縛り上げられ、さらに両手両足を身体の後ろの一点で固定された学校長の姿が。

 …うおえぇ…、そ…そっとしておこう…。


「コッ…コラ、レインフォード君!気が付かないフリをするんじゃあない!それになんだ君!治癒系統の魔法が使えるなら、まずはこの学校長である私から治療するのがスジというものではないのかね!?さっさと私の火傷を治したまえ!!さぁ!さあぁ!!?」


「いやー、もう魔力切れっスわー。アーツカレター」


 俺は棒読みでそう言うと、頭の後ろに両手を組み、踵を返して後方へと戻った。

 ベーだ、誰がお前なんか治してやるかってんだよ。


「ぐぬ…!?き…貴様…!!?おのれぇ…、パトリシアといい貴様といい、どいつもこいつも忌々しい奴らめ…」


 怒りに震える様子の学校長。

 禿げ上がっていることで人より広範囲となった額に、ありありと汗と青筋が浮かび上がってくる。

 その後サイモン教授を怒鳴りつけて包帯を巻き直させたが、それでも執拗に俺を睨みつけている。


 はははっ、全然怖かねえっつーの。

 笑わせんな。


「あ…あの、校長先生。お怪我の方は、私が後程レイン君を説得しますのです。ところでそんなどうでもいい話よりも、その…、魔道具科の審査結果の方はどうでしたのでしょうか…?ま…まだまだ調整不足が露呈してしまった不甲斐ない結果でしたが、それなりの成果を出すことはできたのではなかろうかと考えている次第なのですが…」


 ぷっ!

 学校長の怪我がどうでもいいとか、さすがパトリシア先生、空気読まねー!

 だがそれがいい!!


 パトリシア先生の発言に、一瞬凍りついたように静まり返った大闘技場。

 あっ、学校長の青筋が増えたのみーっけ。


「…ふっ…」


「ふ?」


「不合格に決まっとるだろうが!!?見ればわかるだろう!!最初にも言ったが、こんなもの多数決を採るまでもなかろう!!不合格だ不合格!!誰が考えても不合格!!魔道具科は絶対廃止!廃止廃止、廃止だぁ!!!」


「そ…そんなぁ…。…あ…あんまりなのです…」


 学校長の怒号と剣幕に、がっくりと膝を落とすパトリシア先生。

 だがそれよりも俺は、この後続けざまに飛び出した学校長の言葉に、この耳を疑った。


「まぁ、廃止自体は決定ですがねぇ、パトリシア先生。そう気落ちすることはありませんよ。あなたの研究の成果であるゴーレム…、その研究だけは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からね…?」


 効果音が出るなら、きっと“にちゃあ…”という汚らしい音が相応しいであろう、下品な学校長の笑み。

 パトリシア先生は目を見開いて顔を上げた。

 顔色が真っ青だ。


「おやぁ?何です、その不服そうな顔は。欠陥だらけの君の危険な研究を我々学校側が引継ぎ、適切に運用していこうという至極妥当かつ前向きな提案ですよ?むしろ感謝してほしいぐらいですな。ということで、パトリシア先生はここから退去するまでの間、本研究の細部に至るまでの詳細な報告書及び、ゴーレムの起動に関する業務マニュアルを作成しておきなさい。それがあなたの最後の仕事です。そして…」


「…そして…?」


「今後は学校として研究を継続していきますので、退職するあなたを含め、魔道具科の面々に関しても、金輪際当該研究に関わることを禁則とします。また、本件に関して知り得た一切の秘密・事情を他人に口外することも禁じます。これは決定事項です、よろしいですね!?」


「「「…———————!」」」


 下卑た笑みを貼り付け、俺たちに向けてそう言い放った学校長。

 もはや放心状態で言い返すことすらできないパトリシア先生と、あまりに身勝手な発言に、怒りに打ち震える俺たち。


 ふっ…、俺ももう我慢の限界だぜ…。

 こうなりゃ力づくで何もかもをぶっ飛ばして…。


 そんなことを考えつつ、俺が身体の中に魔力を練り込もうとしたその時だった。


「…お待ちください、学校長」


 その時、スッと前に歩み出てきたのはサイモン教授だった。

 うなだれたパトリシア先生の横に立つと、ゆっくりと振り返り、学校長と相対した。


「…何の真似だね、サイモン君…。まさか君までが、この私に逆らうと…?」


 低くドスを効かせた声でそう言うと、上背のあるサイモン教授をじっと下から睨みつける学校長。

 だがサイモン教授は、そんな学校長に怯むことなく両目を閉じると、ただ大きくため息をついた。


「…いえ学校長、そうではありません。だがこのままでは、パトリシア先生や魔道具科の生徒たちも納得がいかないことでしょう…。またこの場に関しては、審査員たる我々も含め、王都魔法学校学科規則第17条(学科の廃止または存続に関する項目)に基づいたものである以上、同項の規定どおり、挙手等による多数決を実施した上で、同科の存続または廃止を決定するべきではないかと考える次第です…」


(…どういうことだ…?この期に及んで決を採ったところで、何にも変わりゃしないだろう。クソ校長以下3名はダメだとして、仮にサイモン教授たちが存続に賛成してくれたところで3対3…。同数の場合の最終的な決定権は“この場における最上位者”って規則に書かれているんだから、クソ校長が決定権者になっちまうし…)


 その時サイモン教授は、ふとこちらを見るや、俺にしか聞こえないような小さな声でつぶやいた。


「…魔法使いはな、1つの物事に囚われて熱くなってはいかん。視野は常に広く、そして心は常に冷静でなくてはならぬ」


「え…?」


 サイモン教授は何事もなかったかのように、小さな所作で前に向き直った。

 だが確かに俺に対して忠告してくれた。

 それだけは間違いない。


 …冷静…?

 …そりゃ一体どういう…?


「ぬっはっはっはっは!確かにサイモン君の言うとおりだな!学校長たるこの私が規則をないがしろにするわけにはいかなかったね!では手続きだけでも踏んでおこうか。まあ、形だけの手続きだがね!形だけのね!ぬわっはっはっはっは!!」


 学校長から嫌みったらしい笑い声が上がった。

 もはや反射的にむかついてしまう状態の俺。


 ク…クール…クールね…!!

 わ…わかってます、わかってますよ、このレイン君は…!

 むきぃ~~~~っっ!!!


「…では私が代表して決を採らせていただきます。サイモン・ド・スペルマスターが審査員の面々に問おう。まず第一に、魔道具科の存続に賛成の者は挙手を」


 サイモン教授は静かに言った。


 スッ…。


 テティス先生とクララ先生、そして決を採っているサイモン教授自身が挙手した。

 

 ハッとして顔を上げたパトリシア先生。

 座り込んだままのパトリシア先生の顔色が、ほんの幾分かだけよくなった気がする。


「ふん…。まあ部下や同僚に対する最後のよしみということで、今回の挙手に関しては不問にしてあげましょう…」


 3人の賛成に関し、学校長はそう吐き捨てた。

 公正な多数決の場で不問云々という発言が飛び出すこと自体、俺は異常だと感じるがな。


「…ふむ。では続いて、魔道具科の存続に反対の者は挙手を」


「ぬはははは!この私以下3名は反対だ!」


 ピカピカの1年生ばりに無駄に元気よく挙手する学校長。

 同時に取り巻き2名の先生も、若干申し訳なさそうに、肘から先だけを上げて小さく挙手した。

 もしかすると、好きで学校長と一緒にいるのではないのかもしれない。


「ぬふふふふ!魔道具科の存続に賛成が3、そして反対が3。このように同数の場合は、ぷっくっくっく…。サイモン君、どうするのだったかね…?」


「はい、規定上は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()こととなります」


「ぷっ!うくくくくっ…。そうだろうとも、そうだろうとも。この場の最上位者と言えば、当然ながら学校長たるこの私ということになってしまうのだねぇ」


 学校長が右手で自分の胸を押さえて頭を下げ、大袈裟に貴族の礼式を取る。

 そして心底嬉しそうにほくそ笑むと、パトリシア先生は再びうつむいてしまった。

 魔道具科の面々も拳を強く握りしめ、怒りを抑えるのに必死だが、もはや我慢の限界。

 エドガーなどは、学校長に向かって飛びかかるのを必死で我慢している。

 最初悪態ついていたあのクリントンですら、かなり頭にきている様子。


 しっかしコイツ、まじで性格悪ぃ奴だな…。

 魔力を最大限に練り込んで、みんなにバレないように、一瞬で消し炭にでもしちまうか…?


「ゴホン!では、高らかに宣言させてもらうとしようか。パトリシア先生…いや、魔道具科学科長パトリシア・シャーウッド殿。学校長の名の下に申し伝える。本日をもって王都魔法学校魔道具科は廃…」


「はいは~い、存続でいいんじゃな~い?」


 その時だった。

 大闘技場内の観覧席の方から突然響いた透き通った女性の声。

 見れば観覧席の最上段に1人の女性が座っていた。


 えっと…誰…?


 突然耳に届いたその声。

 その声の主が誰なのかも全くわからないが、学校長の野太い声とは対照的に、大変心地いい声だったことは確かだ。


 ふと耳を澄ませば、鳥たちのさえずりも聞こえる。

 魔道具科のことで頭が一杯だったが、何気なく空を見上げれば、日はまだまだ高く外はポカポカ陽気。

 そして崖っぷちの俺たちを優しく包み込んでくれるような、心地よい風も吹いていた。


 いつも応援ありがとうございます!

 よろしければ、下部の

  ☆☆☆☆☆

の所に評価をいただけませんでしょうか。

 ☆が1つでも多く★になれば、作者は嬉しくて、明日も頑張ることができます。

 今後ともよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ