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第88話 異世界こそこそ噂話。実は俺、転生前コンタクトをつけてたんだけど…って、え?どうでもいい?

 あー…。

 この部屋、けっこう天井高いんだなー…。


 恥ずかしながらパトリシア先生に絞め落とされて後、程なくして意識を取り戻した俺は、大の字で床に寝っ転がっていた。


 その横では、止むことなく先生の必死な声が響いている。


「でっ!でっ!?どうやったら魔道具科(私の家)を潰さなくて済むのです!?はっ…早く教えてほしいのです!!」


(私の家…ね。よっぽどここが好きなんだろうか…)


 そんな風に、ぼんやりと考えていた俺の方をチラリと見たクロウ。

 クスッと笑って先生の方へ視線を向ける。

 ちっ…笑うなよ。


「では俺から説明しましょう。封書に書かれていた内容は実に単純でした。要は“いい魔道具を作れば、魔道具科を存続する”というものです」


「…いい魔道具…なのです?な…なら私の自信作、“雨の日も安心!心も晴れ晴れくん”はどうですかね!?」


 パトリシア先生はそう言うと、またぞろ奥の部屋をドンガラガッシャンした後、先っぽに何やら四角い物体が取り付けられた、傘くらいの長さの金属の棒を持ってきた。


「そ…それは、どのような魔道具なんですか?名前からして嫌な予感が…」


 それな。

 先生ったら俺のネーミングセンスを見習ってほしいもんだぜ、なあシロ!


「これはね、雨の日にと~っても便利な魔道具なのですよ!使い方は簡単、仮に出先からの帰り道、突然ザバッと雨が降ってきたとするですよ?うわぁ!濡れるのは嫌だぁ!と誰でも思うですよね!?そんな時はあら便利、手元のこのボタンを押せば…ぽちっとなのです!」


 ポチッ!

 ヴゥン…!!


 パトリシア先生が、金属棒の手元部分に取り付けられた小さなボタンを押下した瞬間、なんと棒の先っぽに、直径1メートル程度の円形の薄い1枚岩が姿を顕したではないか。


(おぉ…これは!?傘の代わり…か…?)


「むぐぐ…。ほ…ほら、どうですか?ちょっ…ちょっとこれが重いのですが、こ…これさえあれば、…むぐぐ…ぐぬぬぬ…雨が降っても安心なのですぅぅぅ…!」


 額からダラダラと脂汗を流しながら必死に平静を装うパトリシア先生の姿は、かわいそうを通り越してもはや凄まじい。

 クロウも同じことを考えていたのか、肩で大きくため息をついた。


「…先生。…思いっ切りおでこに青筋を立てながら、今にも死にそうな声で、安心なのですぅぅ…!などと言われましても…。そんなに辛い思いをするぐらいなら、普通に傘を差した方がいいのでは…」


「…あ…」


 パキパキ…パキィン!

 バラバラバラ…。


 至極真っ当、かつ核心を突いたクロウの意見に、勢いよく広がっていた1枚岩は脆くも崩れ去り、岩の中に骨組みのように残存していた魔法陣もつられるように消えてしまった。


「えと…えっと…!じゃあやっぱり“突然の爆破も何のその!簡易結界ハレルヤくん”で一気に勝機を…」


「…先生。もしかしてそれって、ついさっき俺の目の前で火を吹いたやつじゃあないんですか…?」


 俺は大の字で寝そべった姿勢からスッと起き上がり、目をしぱしぱさせながら、地面に座ってあぐらをかいた。


「あっ…。そ…そうだったのです…」


 やっぱりそうなんかい!

 危ないわ!!


 …もはや万策尽きた…。

 まさにそんな心の内を体現するように、再びその場にペタンとへたり込んでしまったパトリシア先生。


「先生、傷心のところ大変申し上げにくいのですが…。ここに書かれている()()()()()という記述には続きがありまして、どうやらただ単に便利な魔道具というものではなく、世間がアッと驚くような、そんな魔導具でなければ、学科自体の取消し処分は覆らないようですね…」


 クロウは目を伏せながら、申し訳なさそうに小さくそう呟いた。

 情報は正確に伝えなくてはいけないとはいえ、しょんぼりと辛そうなクロウ。

 …優しいんだな、お前。


「そ…そうなのですか…。うぅ…ただでさえ上手くいっていない魔道具作りなのに、あろうことか世間様をなどと…。あはは…これはもう、本格的にダメダメですね…」


 重苦しい雰囲気の教場に、さらにずっしりと沈黙という名の怪物がのしかかる。

 クロウは視線を落としたまま、再び大きなため息をつく。

 パトリシア先生に至ってはもう涙も出ないのか、視線が定まらず、その場から動こうともしない。

 だが。


「ふ…ふふふっ…」


「…?レ…レイン…?」


「…?」


 突然の俺の笑い声に、クロウと先生がこちらを凝視した。


(目当てだった魔道具科が無くなる…?みんなをア————ッと驚かせる魔道具…?)


「…ふふふ…くくくくっ…あははは…あーはっはっはつはっはっ!!」


 だが断る!!

 この程度の危機、将来の怠惰な生活(輝かしい未来)のため、乗り越えられなくてどうする!

 ふふん!俺はこんな状況を知っているぞ?

 無論、前世においてもそうだった。

 こういう時こそ“ピンチをチャンスに…!”だぜ!!


「「ひ…ひぇ、レイン(君)がおかしくなった!?」」


 クロウとパトリシア先生は、突然大声で笑い出した俺に恐れ慄き、抱き合うように立ちすくんだ。

 

 おっと、ついテンション爆上がりでビビらせちまったかな?

 スーハースーハー…。

 落ち着け、落ち着くんだレインフォード…。


「ふふっ…驚かせてすみませんね、先生、クロウ。俺はいたって正常ですとも。…それよりも、魔道具科の存続問題、これでも俺はバッチリ解決できると確信しているんですよ?」 


「えっ…」


 俺はいたずらっ子のように笑いながら、目を丸くするパトリシア先生を見た。


「えーっと、まず先生が作った心のつっぱり棒くんと絶対結界コロスマンでしたっけ…?一見失敗しているようにも見えるあの魔道具たちですが、僕は先生の作り出したそれぞれの物に、未来への大きな一歩を見出しているんですよ?」


「…心も晴れ晴れくんと、簡易結界ハレルヤくんなのですけど」


「ふっ。俺にそんな無限の可能性を感じさせてくれたのは、先生が描いた()()です」


 俺は名前の間違いに若干ムスッとしたパトリシア先生を華麗にスルーする。

 そしてこの教場で一番最初に目にした大きなもの、

それは美しい円の中に緻密な紋様が施された図形。

 つまり、先生が描いていた魔法陣を指し示した。


 俺が最初にこの教場にやってきた時、魔法陣は金色に輝き、不安定ながらも魔力は循環していた。

 今は暗い紫色に変色し、魔力も完全に消えてしまっているが…。


「魔法陣?でもこれは…さっき実験に失敗して、ぽこっ!と弾けて…」


 パトリシア先生は、目をキョロキョロさせながら戸惑っている。

 

 ぽこっ!なんていう可愛い効果音じゃあなかった気もするが、いずれにせよ、つい先刻爆裂した魔法陣を引き合いに出されても、おいそれと納得はできないよね?


 でもまあとりあえず、その前に…。


「詳しい話をする前に、先生。…ちょっと失礼しますね?」


 俺はパチン!っと指を鳴らした。

 すると。


 ズズズズズ…!

 ぽよぽよんっ。


「きゃっ!?」


 その瞬間、地面に座り込んでいたパトリシア先生の下から、土魔法で作った椅子が勢いよく隆起した。

 もちろん硬さが気になるお尻の部分には、風魔法で作ったふんわりエアークッションのサービス付きだ。


「こ…この椅子は土の魔法なのです…?…わわ!?お尻の下…お尻の下に、何かぷにぷにの柔らかいものが敷き詰められているのです!!」


 ちょっと大きめに作られた椅子の上で、足をぷらぷらさせつつ、不可視のエアークッションを不思議そうにつんつんするパトリシア先生。


「こ…これは!?…レイン、き…君という奴は、いとも簡単にこれだけの魔法を…。ただの一文の詠唱も無く行使するのか…」


 頬に一筋の汗をたらしながら、先生が座る椅子やエアークッションを興味深そうに確かめるクロウ。

 

 お…おいおいクロウ君?

 先生のお尻の下のクッションをあんまりベタベタ触るのは、さすがにセクハラにならないか?


「ところで先生、そんな椅子の話なんかより、ちょっと試してみてほしい物があるんですけど。えーっと、確かこの中に…」


 ガサゴソ、ガサゴソ…。


 俺はこんなこともあろうかと、頑張って持ってきた重い鞄の中を探る。


(魔道具とはいかないが、ワッツと一緒に色々作ったやつの中で…おっ!あったあった)


「見え~る、メ~ガ~ネ~」


 俺は、言わずと知れた青いネコ型ロボットの如く、鞄から取り出したメガネを掲げ、独特の声色の真似をした。

 2人の頭の上には?マーク。

 ま、そりゃそうか、と俺は苦笑いを1つ。


「な…何なのです、これは…。ガラスが2つひっついているのです…?」


「先生。それは“眼鏡”というんです。こんな風に目を覆うように掛けてみてください」


 俺は人差し指と親指でまん丸マークを2つ作り、手渡した眼鏡を掛けるよう、パトリシア先生に促した。

 俺の予想では恐らく…。


「目を覆うようにと言われても…えっと、こうなのですか…って…えっ?…ええ!?…こっ…これは!?」


「どっ…どうしました先生…、大丈夫ですか…?おいレイン、先生が固まってしまっているようだが、これは一体…」


「み…見える…。見えるのです…」


「…見える…?…見えるとは何ですか?」


「クロウ君…言葉どおりなのです…。私は…私は今、世界を見ているのです…」


 見る見るうちに、目一杯に涙を溜めたパトリシア先生。

 だがこの涙は、さっきまでのような悲しみに暮れる涙ではない。

 先生は笑っていた。

 その小さな身体を喜びに打ち震わせながら、まるで天から降り注ぐ希望の光を目にしているかのように。



 いつも応援ありがとうございます!

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 ☆が1つでも多く★になれば、作者は嬉しくて、明日も頑張ることができます。

 今後ともよろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
ここまで読み進めてきたけど面白さが分からなかった。 どたばたのギャグ物を書きたいのだろうと思うけど話を聞かないやつらと学習しないアホばかりで同じようなことを繰り返してるからなんだこれ?となるわけで、作…
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